【子は親を見て育ち学ぶ】
【子は親を見て育ち学ぶ】
それからまたつぶやく。
「俺の目標なんだ。親父の味は」
「もちろん、超えることが前提だけどサ」というゲンタの言葉に、タカシは表情を変えることはなかった。
「麻島だって、なんかあるだろ? やっぱ親父の背中とか追ってるのか?」
「……。ケーキ、ありがとな」
魔王に代わって礼を言うと、ゲンタは口の両端をつり上げた。
「それと会計」
「あっ、いけね。シュークリームとクラシックショコラとチーズケーキで690円になります」
慌てたゲンタがレジにつき、タカシは商品と引き換えに1000円札1枚を渡した。
「おつりは」
「いらねーよ。ホールケーキのぶんだ。取っとけ」
「いや、でも」
「取っとけつってんだよ」
言葉をさえぎるようにタカシがにらみつけると、ゲンタの顔が引きつり、それをおとなしく受け取った。
「毎度ありがとうございました。魔王さんに俺のケーキの感想をサ、明日にでも店に来て教えてくれるようい、言っておいてください」
「またケーキをせがまれるぞ。いーのか?」
先程までタカシとため口だったゲンタだが、ここにきていきなり敬語になっていた。ひとにらみがきいて、萎縮してしまっているようだ。
「そしたら俺も感想をせがみますっ」
いつか親父の味を越えるために、とゲンタが宣言をした。タカシは何も言わず、はしゃぎまわっていた魔王を回収して店を出た。




