【高校生には見えない】
【高校生には見えない】
「……そうみたいだね。で、何買う?」
「あー、っとシュークリームひとつ。それとあんま甘くねーの」
こういう洋菓子を頼む時、ミカコはいつもシュークリームを選んだ。なにか思い出深いものがあるのか、それとも安くすませようとしているのかはわからないのだが、タカシはそれをおぼえていた。甘くないケーキは間違いなくタカシ用だろう。
「ウチのケーキはどれもしっかり甘いよ。こーいうシフォンケーキも生クリームをたっぷり塗ってるし」
「そうか」
生クリームと聞いて、タカシは少し胸焼けを感じた。魔王の甘味暴食っぷりを生々しく思い出してしまったからだろう。
「ま、無難にチーズケーキがいいかも」
「それにしてくれ。それと、そうだな。そこのクラシックショコラつーのもひとつ」
「毎度っ」
好みがわからないキミヤにタカシは適当にチョコ系のケーキを選んだ。
「オイ、魔王決めたか?」
残るは魔王のケーキだけだが、当の本人はまだショーケースにはりついたままだった。
「まだ……みたいだね」
「早くしろよ。つーか、恥ずかしいっつーの」
「うぅっ、迷うのぅ」
猪熊という暑苦しそうで似つかわしくない店名の割にケーキは見事なもので、本気で選ぼうとすればあれかこれかと目移りしてしまう。魔王は真剣な表情、声調でタカシに言った。
「タカシ。財布にいくら残っておる?」
「ケーキは1個だけだ」
あっさりと返され、思い切り落胆した顔で魔王はケーキから目を離してタカシを見た。そして、力強く訊いた。
「全財産でこの店ごと買い占めることはっ」
「最初から無理だろ」
「っう、1個は1個でもホールで」
「ピースで1個な」
「ぐぅ……っ」
ことごとく打ち返され、魔王は歯を食いしばる。タカシからすれば、何故ケーキごときでここまで真剣に燃え上がれるのかがわからないだろう。




