【珍しくてめでたい時は】
【珍しくてめでたい時は】
「ま、今日はごちそうだね。たっぷり作るよ」
嬉しそうに腕をぐるぐると回し、ミカコは奮起した。
「そこでタカシ、魔王ちゃんは買い物行ってきとくれよ」
「む。店の方はいいのか?」
「まぁ、大丈夫だよ。だいぶひけてきたしね」
先程まで押し寄せていた客の大波が干潮のようにひき、これから夕方のピークまでは忙しくはならないと踏んだようだった。
「なら、おれが代わりに店番すっから、魔王と行ってくりゃいーだろ」
「まだあんた1人に店は任せられないよ」
厳しい一言だった。今までもミカコはタカシ1人に店番を頼んだことはなかった。
「そうそう魔王ちゃん、お祝いだからケーキ買ってきてく」
「ケーキとなっ」
ミカコが言い終わらない内から魔王はタカシの襟首をつかみ、店を飛び出していった。
【とっとと買い物を終わらせてケーキ屋に向かうぞ】
「さっきは失敗したのぅ。ついはしゃぎすぎた」
「ったく、何を買うのかぐらい聞けよ」
タカシはぶつぶつと言いながら、自らの首元をさすった。そこには魔王が襟首をつかんだ時に首が絞まり、出来たあざのようなあとが残っていた。
「しかし、つくづくおぬしは頑丈じゃのぅ」
「うるせーよ」
襟首をつかまれ、魔王に飛び出された時にはタカシの足は地面についていなかった。意識の方も一瞬か数秒はとんでいたかもしれない。
「ところで買い物はもう終わりじゃな?」
「あぁ、とりあえずな」
「ではケーキ屋に行くぞ」
「おい、コラ待てっ」




