【いつもの調子で】
【いつもの調子で】
だだをこねる魔王に手を焼き、蹴りを入れられながらもタカシは店へと引きずっていった。それに敬意でも表したか次第に魔王も暴れることをやめた。それでも、身体のあちこちにあざが出来ていた。
「……コノヤロウ、手加減しろよな」
「充分しとるわ。ワシが本気を出したら、タカシの身体なぞ微塵に引きちぎれるぞ」
「そうかい」
タカシは痛みとあきれでまゆをひそめ、魔王を引きずった。そういえば似たような会話を以前にもしたかもしれない、とタカシはふと思った。
―――そんだけやられてるってことかよ。
魔王の手の早さもそうだが、いいようにやられている自身にタカシはため息を吐いた。見た目は小学生なのに、力は大人以上だから困りものだ。
【まだ聞いてなかった】
「そういえばタカシの父親の名は何じゃ?」
「あぁ。キミヤ。麻島キミヤ」
「そうか。キミヤ。キミヤというのか」
感慨深そうに魔王がそう繰り返し、つぶやいた。
「?」
「タカシには関係ない」
ぼそりと「今はな」とタカシには聞こえないよう、魔王は小さくつぶやいた。そして含み笑いをする魔王だが、体勢的に間抜けなままタカシに引きずられていくのだった。
【店先に】
麻島キミヤの姿はなく、代わりに上機嫌なミカコが張り切っていた。
「あぁ、夕食前には帰るって」
「おいおい」
「首に縄でもくくりつけとかんと、またどこかへ消えるぞ」
物騒なことを言うものだが、実際そうでもしておかないとまずいような気がす魔王は真面目な顔でそう言うが、ミカコはそれでも笑っていた。
「大丈夫さね。むしろ、何も言わない時の方が怖くて仕方ないよ」
「もっとガツンと言うてやれ。ミカコは有無を言わさず、その権利がある」
「権利かい」
魔王の言葉にミカコは苦笑した。
「私はあの人が生きて、帰ってきてくれるだけでいいさねぇ。それ以上は望まないよ」
「慎ましすぎやせぬか? 身勝手を許せば男は駄目になるぞ」
知ったような口を偉そうにきく魔王にミカコは困ったように、照れを隠すように眉をひそめた。
「1組きりの夫婦じゃないか。他に誰があの人を信じて、待ってやるっていうのさ」
ミカコはそうはかなげに微笑んでみせると、つくづくキミヤは罪作りな男だと魔王はなげいた。
「フン。やつが浮気などしていたら神の罰が当たらなくても魔王の裁きをくらわせてやるわ」
「物騒だねぇ」
からからと笑うミカコの様子から魔王の言うことを本気にしていないのがわかった。




