【9月12日】
【9月12日】
「そろそろお昼にしたいけど」
「うむ。そうじゃのぅ」
魔王とミカコが互いに首をかしげ、ねーっとうなずきあった。そこにすかさずタカシが怒号をあげた。
「っつーか、仕事しろっ」
日曜日の昼過ぎという時間帯で、麻島青果店は大勢の客でにぎわっていた。この時分では珍しく、タカシとミカコではその客達をさばききれなかったので呼び込みの魔王にも勘定に回ってもらうほどだ。
「これもワシの呼び込みのおかげかのぅ」
「そうだね。きっと。魔王ちゃんのおかげで福も呼び込んでくれたのさ」
ミカコはカラカラと笑って褒めると、魔王は照れもせず得意げにふふんと笑った。
「タカシもそう思うじゃろ?」
「調子に乗んな」
つれなくそう言いながら、タカシは客につり銭と商品を手渡した。
―――ま、それは大きいだろうが。
魔王の存在が色々な噂となってこの繁盛につながったのだろうことは、タカシでも見ればわかった。客の半分が魔王の前に行き、買い物をしようとしているからだ。しかし、野菜の名前と値段を把握しようとしない魔王では対処しきれなかった。
「いい加減、商品を覚えろよな。頭いいんだろ」
「嫌じゃ。そりゃタカシより数百段上の頭脳は持っとるが、野菜はおぼえる気にならんっ」
「そーかい。じゃ、今晩は肉抜き野菜炒めでじっくりお勉強だ」
その反撃に「イーヤーじゃー」と魔王が絶叫するが、タカシは聞く耳を持たなかった。客がなまぬるくも微笑ましい視線と慰めの言葉をかけ、魔王の背筋にぞっと悪寒のようなものがはしった。
「……むぅ」
「どうした?
「いや……いい。しかし、腹が減ったのぅ」
「ったく、少し我慢しろ」
ぶぅぶぅと文句を言う魔王にタカシはため息を吐き、ミカコと目配せした。時計を見れば1時半過ぎだが、この客はしばらく引きそうになかった。
「……しゃーねーな。冷蔵庫から適当になんか食ってこい」
「そうさせてもらう」
悠々と魔王が店の奥に引っ込むと、客側から何か不満のような声が聞こえてきた。タカシは頭をかき、首をひねった。
「どうなってんだ、こりゃ」
「モテモテだねぇ、魔王ちゃんも」




