【魔王の心配事】
【魔王の心配事】
「……ここの野菜が売れてくれぬと、ワシの食事や弁当が野菜だらけになってしまうからのぅ」
昼飯のサラダと梅おにぎりをつまみ、そうめんをすすりながら、魔王は1人居間でそうつぶやくのだった。
【暇人共め】
タカシが昼飯を食べ終えた頃、ミツルとアンナが2人揃って店の方に顔を出した。暇を持て余していた魔王は絶好のカモが来たことに喜んだ。
「おぬしらはデートか」
「そうだぞぉおぉおぉぉおおっ!」
「タカシと魔王さんの様子を見にいくかって誘った」
アンナはこの上なく嬉しそうにミツルと腕を組み、はしゃぎまくっていた。
「おれ達はパンダじゃねーぞ」
「お、タカシ、経済用語なんて知ってたんだ」
ミツルが微笑むが、タカシには皮肉やいやみにしか聞こえない。そもそも客寄せパンダという言葉も、経済用語ではなかった。
「でもさ、客寄せにはなってみるたいだよ」
「何を」とタカシがミツルの指差す方を見ると、そこにはまた見覚えのある顔ぶれが歩いていた。
「あー、あれだあれだ」
「いたなぁ」
同級生でサッカー部の丹下と迫だ。丹下はタカシと魔王達、迫はアンナのクラスメイトでもあった。
「日曜日なのに暇な奴らだ」
「まー、そういうなって」
「とりあえず客だから」
丹下と迫は値段を見てはいちいち驚いたり、ガムやチョコいくつ分だの、高いの安いのを連発した。普段は自分達でこういった買い物をしたことがないのがすぐにわかった。
「にしても、驚いたよなぁ」
「あー、マジで魔王さんと同棲してる」
休日でも制服にエプロン姿をしている魔王をじろじろと見てから、2人同時に「これって麻島の趣味か?」と聞いてきた。魔王はさも「そうじゃったのか」と驚きの表情を作って見せ、非難と興味の対象に仕立てあげられたタカシはげんなりとした。
「間違った噂は広まるのが早ぇーのに正しい話はどうしてこうも伝わりにくいんだ?」
「さぁ」
ミツルは肩をすくめた。タカシは同棲についての弁明が面倒になってきたようだが、今後の身の安全の為にも欠かすことは出来ない。それと制服に関しては単に魔王の偏ったこだわりとしておいた。魔王から何か言いたいことがあったようだが、「どれだけ着ても魔王の力で絶対に汚れない」という説明が出来るわけもないのでタカシはそれを黙殺した。




