【今夜はゴーヤチャンプルーでした】
【今夜はゴーヤチャンプルーでした】
「ごちそうさまでしたぁあっ!」
アンナが満面の笑みを浮かべ、手を合わせてそう言った。その明るさと元気のよさには笑うしかなかった。
「魔王、また野菜残してんな」
「うっ、今食べるとこじゃ」
「食べきれなかったら甘いもの抜きだぞ」
「卑怯じゃ!」
ゴーヤに悪戦苦闘する魔王がタカシをにらむが、当然のごとく無視された。脇からアンナに励まされ、ちびちびと食べる姿に威厳というものがなかった。
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
ミツルも手を合わせ、ミカコへ丁寧に礼をした。そういう応対を繰り返されると、逆に困ってしまうとミカコが苦笑した。
「……ッ、食べた! 食べたぞ!」
ばちんと箸をちゃぶ台に勢いよく押しつけ、涙目の魔王がそう言った。野菜のなかでも特に苦いゴーヤは野菜嫌いでなくても敬遠されがちだが、栄養価は非常に高い。夏バテ気味な人にはぜひ、と青果店でも勧めているものだ。
「口直しにアイスッ!」
「冷凍庫」
力強く声を出す魔王にタカシがつとめて平静に返した。いつもならば駆け足で台所へ向かう魔王だが、ぐっとこらえていた。
「その前に風呂じゃ! 苦いものの後、それに風呂上がりとくれば最高じゃろう」
「好きにしろ」
同じ屋根の下、年頃の男女の前でも何の恥じらいも見せず、互いにその相手にもしていない。ミツルは改めて、タカシと魔王の間に本当に何もないことに驚いた。
「甲藤とアンナもついでに、一緒に入っていかぬか?」
確かに恥じらいのない魔王の突然の提案に驚くものの、動揺して何も答えられなくなるわけでもない。アンナが何か言う前に、ミツルは魔王に丁重に断ることを述べた。
「ま、そこまで厄介になるわけにもいかないからね」
「なんじゃ。泊まってけばいいじゃろ」
「勝手に話進めんな」
タカシが会話の流れをさえぎり、ツッコんだ。明日から週末で学校もないのだが、そこまでする準備はお互いに整っていなかった。
「今日のところはおいとまさせてもらいます」
「うむ。そうか」
ミツルが立ち上がれば、アンナも立ち上がる。当然のようにアンナは嬉しそうにミツルの腕を絡め取り、タカシや魔王達に見せつけた。
「お邪魔しました」
「今度は私の家に遊びに来いよぉおっ!」
アンナのお誘いに魔王は一瞬だけうっ、とたじろいだ。勇者の住む家には上がりがたいのだろう。それでも「機会あればな」と何とか返した。




