【家計は大丈夫なのか】
【家計は大丈夫なのか】
冷やかしの月本達が帰った頃、ちょうど閉店の時間となった。ミツルがエプロンを脱ぎ、汗をぬぐった。
「やー、忙しかったね」
「そうだな。助かった」
タカシがシャッターを下ろしながら、つぶやくように礼を言った。ミツルが意地悪く「聞こえな〜い」と言うと、それきり黙ってしまった。アンナが両手をわきわきさせながら「ミツルゥゥウゥゥウッ! 疲れたかぁあぁぁぁぁっ、肩揉んであげるぅううぅぅうぅうっ!」と言うのをミツルは華麗に避けた。
「ご苦労さん。悪かったね。いきなり手伝ってもらっちゃって」
「いえいえ、なかなか楽しかったです」
表の片づけを終えたミカコが笑顔でねぎらうとミツルも丁寧に返答した。その隙をつかれ、アンナがミツルの肩を揉むつもりで握り潰した。ぐかっ、と声にならない悲鳴をあげてミツルが転がった。
「うぉおぉぉぉおぉおぉおっ! ミィイツゥウルゥウゥゥウゥウゥウウウッ!」
「やかましいっ」
「まぁ元気があっていいよ」
騒々しいと怒りを見せるタカシだが、大らかなミカコは笑ってすませた。魔王は軽くうなずき、「タカシは器が小さいのぅ」と小さくつぶやいた。それでタカシと魔王が口喧嘩するのをスルーして、ミカコがミツルに提案した。
「手伝っとくれた礼だ。ウチで夕飯食ってきな」
「いいんですか?」
「構わないよぉ。ウチは」
アンナは元気よく「家に電話してくるぅうっ!」と携帯片手に表へ飛び出し、ミツルはミカコに深々と頭を下げて再度礼を言った。一応タカシと魔王にミカコは同意を求めるが、特に断る理由もなく満場一致と相成った。
「じゃ、すぐ出来るからね」
「すみません」
ミカコが台所へ向かうと、タカシは2階へ上がった。それを目で追った後、魔王は許可を貰ったアンナとミツルを居間へ誘導した。
「ところで、甲藤はアンナのように家に電話しなくていいのか?」
「あぁ。必要ない」
「そうか」
魔王は深く追求せず、からりと居間の障子戸を開けた。それから魔王が自らとミカコが上座になるよう、ミツルとアンナの座布団を引いた。その意図が読め、ミツルは苦笑した。
「……おいおい、先に座布団引くなよ」
座布団だけ敷いてくつろいでいる魔王にタカシが注意した。その脇には今にあるのと同じ折りたたみ式のちゃぶ台があった。居間のものだけでは足りないかもしれないと思い、2階からもうひとつ持ってきたのだ。
「うむ。くるしゅうない」
「ミツル、ちょっとそこどいてくれ」
「あいよ」
その場からあくまで退く気のない魔王の態度にあきらめたようだ。客人に手伝ってもらい、ちゃぶ台を2つ居間に並べた。それからタカシはまた出て行くと、アンナがその後に続いた。
「座ってろよ」
「手伝うぞぉおっ!」
「……じゃ、ここで待っててくれ」
「了解したぁあっ!」
タカシに言われ、アンナは素直にちょこんと座った。それから、あれ、と首をかしげてミツルを見つめる。そのアホの子の所業を見て、こらえきれずに笑っていた。




