【マジで魔王さんがいるし】
【マジで魔王さんがいるし】
「ていうか甲藤と日向まで働いてんの?」
だるそうに人だかりをかきわけてくるその聞き覚えのある声に、魔王が「む」と声をかけた。
「おぉ、乾か」
「あ、名前おぼえてくれてんだ」
「もちろんじゃ」
タカシもミツルもクラスメイトである乾に気づいたものの、接客と作業で手が離せないようだ。その盛況っぷりに乾は棒付きキャンディをなめながら感心している。
「へー、繁盛してんじゃん」
「今日は珍しいぐらいじゃな」
「そーなの?」
「うむ。閑古鳥が例年巣を作っておる」
「勝手なこと言ってんじゃねーよ」
どげしっと魔王に蹴りツッコミをいれ、タカシが乾の前に立った。その行動にぽかんとしている。
「いーの?」
「まーな」
「ならいいや」
「おいっ」
クラスメイトによる同性暴行と取れる行為をどうでもよさそうに、クールに流す乾に魔王が思わずツッコんだ。
「んで、何か買うもんでも」
「ないね。ただほんとに一緒に住んでんのかなーって見に来ただけ」
魔王を無視して乾はちゅぽんと棒付きキャンディを口から出し、指でくるくると回した。
「学校公認?」
「ホームステイだからな」
「へー」
自分から聞いてきた割に大した興味は無さそうだったが、深くツッコまれると困るのでそれにこしたことはなかった。
「麻島の家ってこんなとこにあったのか。知らなかった」
「高校のクラスメイトつったらそんなもんだろ」
「まーね。つか、どうでもいいんだけどさ」
だるそうに乾は前髪をかきあげつつ、タカシから顔をそらした。
「甲藤達以外で誰か来た?」
「一応、生徒会長様が視察にな」
「ふーん。あ、そう。他の連中は来てないの」
乾はクラスメイト達が魔王が本当にタカシの家にいるのか、その店で働いているのか見に行こうと騒いでいたそうだ。今朝の騒動も含めた話題性に、思春期真っ盛りで野次馬根性に溢れた者達が放っておくわけがない。
「あー……ま、来たって別に構いやしねーけどな」
「そ」
タカシの反応に何の興味の色を示さず、乾は棒付きキャンディをくわえたまま立って店の看板や盛況ぶりを見ていた。タカシも話すことは話したといったところで、さっさと店の方に戻るとその入れ替わりでミツルが乾に挨拶してきた。




