【うーむ】
【うーむ】
「忙しくなってきたのは良いが、ワシらは呼び込むだけか」
魔王が両手を腰に当て、タカシ達の方を振り返り見る。呼び込みとは違って、客との接触があって熱気がある。
「それだけでも大変だぞぉおっ!」
アンナが「のどがかれそうだぁあっ!」と言うが、魔王にはそれが冗談の類にしか聞こえなかった。
「ミツルへの愛の叫びは別のどなんだぁあああぁぁああぁっ!」
別腹に対抗してのものと言いたいのだろうが、そんなことは魔王にはどうでもいいことだった。「もう少し労働の喜びを感じたいのぅ」と、ぽつりともらした。
「……そうじゃ。対抗戦でもしようではないか」
「なにぃいっ?」
「安いよ安いよぉおっ! だが、私のミツルへの愛は安くないぞぉおおぉおおぉおおっ!」という呼び込みをアンナは中断し、魔王の方を向いた。
「ルールは簡単。ワシとおぬしのどちらが多くの客を呼び込めるかじゃ」
魔王が口の端をつり上げ、ニィッと笑ってみせた。
「ワシはタカシの方へ客を流す。おぬしは甲藤へ回せ。より忙しく接客させた方が勝ち。どうじゃ」
いきなりの提案にアンナは戸惑っているが、魔王は一向に気にしていないようだ。
「ごく小規模とはいえ、これは魔王と勇者の戦いでもある。避けられんぞ」
「そ、そうなのかぁあっ」
ぐっと握りこぶしを固め、その気になってきたアンナだが今ひとつ意気込みが足りないらしく、承諾しきっていない。どうしても巻き込みたい魔王は更なる挑発を試みた。
「それともアレか。ワシはタカシをどうとも思っておらぬが、実はおぬしも口だけでそれと同様なのか。おぬしは愛する男のために戦えぬと申すのか」
「違うぞぉおっ! 私はミツルの為なら何だってするぞぉおぉおぉおお!」
「決まりじゃな」
売り言葉に買い言葉という結果により、勝負が決まってしまった。




