【2人が客引きに離れた時に】
【2人が客引きに離れた時に】
「単純だなぁ」
「聞こえるぞ」
「っと、こりゃ失礼」
うまく魔王とアンナをのせたことを小声で褒め、くすくすと笑うミツルをタカシは無視した。プライドの高い魔王が機嫌を損ねるおそれがあるので、これはミツルが迂闊だった。小声だったのと、客引きに熱中していたおかげで2人に聞こえることはまぬがれたようだ。
「でもさ、なんだかんだ言っても仲良くやってるよね」
「あ?」
「魔王さん。あの性格とかプライドとか何でも出来ちゃうとことか勇者への対抗意識とか、他人と孤立しがちなものをたくさん持ってる。なのに……どうしても周りは嫌いになれない」
それどころかこちらの次元で生きるための味方をつくり、少しずつその数を増やしていっている。魔王様効果かな、とミツルがおどけた。
「その周りにいんのが単に変人なだけだ」
「くだらん」と一蹴するタカシだが、「自分も含めて?」と反論してきたミツルの言葉に詰まった。
「うるせーよ。無駄口たたく暇があんなら電卓たたけ」
「あっは、了解」
その後に続けて「ま、ま、この程度なら暗算で充分だけどね」とそれが出来ないタカシをからかうように、軽口をたたいた。
「にーさん、これいくらにまかる?」
新顔のミツルにおばさんが値引き前提で声をかけてきた。魔王とアンナの呼び込みのおかげで客足が増え、また忙しくなってきた。




