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【百聞は一見に如かずという】

 【百聞は一見に如かずという】

 「でも、まずは商品の状態と値段をしっかり吟味してからだ」

 「けちけちしとるのぅ。この生徒会長は。同級のよしみ、同校の生徒の家計を助ける気でどーんと買わんか」

 「それを言ったらこの町に点在する斗葉高生の店すべてで買い物をしなくてはならなくなるな」

 カオルが苦笑しながら、野菜をひとつひとつ手にとって見ている。その眼差しは赤子を見る母親のように穏やかで優しいものだった。

 「……どれを選んでも変わらんと思うが」

 「そうでもない。見た目は良くても中身が駄目ってこともある。その逆もしかりだ」

 「わかったような口をききおるのぅ」

 「だから、こうして自分の目で確かめているんだ。野菜も人も、何事も同じです」

 「おやおや、ずいぶん厳しいお客様だね」

 その魔王とカオルのやりとりが聞こえたのか、奥からミカコが笑いながら顔を見せた。タカシの母とわかったのか、カオルはぺこりと頭を下げた。

 「斗葉高校の生徒会長を務めさせてもらっています、豊泉院カオルと言います」

 「これはご丁寧に。こちらこそ、愚息がお世話になってます。というか、あんたの無敵な噂は商店街の連中から色々聞いてるよ」

 「そうですか」

 和やかな会話に魔王は眉をひそめ、心なしかイライラしていた。カオルとの今日一日の接触(こと)を考えればわからなくもないことだ。薬品の臭いが充満する保健室とは違って、勇者のなかの勇者においで多少は弱るものかと思ったが、そうでもないようだった。

 「で、生徒会長様は何かお買い上げになるのかのぅ!」

 「こら、魔王ちゃん、接客態度がなってないよ」

 「ああ、私は一向に構いません」

 やんわりとカオルが制し、更に続けて言った。

 「魔王と勇者は対立するものだそうですから」

 口には笑みを浮かべながらもその眼差しは凛々しいカオルと対抗意識丸出しの魔王の言葉にミカコは肩をすくめ、やれやれとひと息を吐いた。

 「それで、何をお買い上げになってくれるのかのぅ?」

 「そうだな……このじゃがいもを2kg貰おうかな」

 「あいよ。重くないかい」

 ミカコがそう気遣うが、カオルは大丈夫ですと返す。魔王は何故かにたりと笑う。

 「どうじゃ? ついでに今この家におる男も貰っていかんか?」

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