【偶然なのか狙っているのか】
【偶然なのか狙っているのか】
「……そこを通るはカオルか」
あれからタカシの家に帰り、店番を任された魔王の前を横切ろうとしていたのは豊泉院生徒会長だった。魔王の声に気づき、カオルはゆっくりと振り向いた。
「あなたですか」
「おぬしは何をしておるんじゃ」
カオルはあの制服姿のまま、その腕に編みカゴをぶら下げている。魔王のエプロン姿を見て、微笑んだ。
「見ての通り、夕食の買い物です」
「意外じゃな。勇者くせに」
「それは関係無いですよ。母に頼まれたので」
「ふーむ。何ゆえ、制服姿のままなのじゃ?」
「放課後といえど、学生らしい振る舞いと装いを忘れてはならない。勿論、帰宅してから出向いていますけれど」
そう丁寧に説明すると、カオルは魔王自身も制服のままなのに気がついた。訊けば「着替えるのが面倒じゃから、放課後はいつもこれじゃ」と単純明快な答えが返ってきた。
「魔王の力で滅多に汚れぬしのぅ」
「便利だね」
常に微弱ながら魔王の力を放出し、魔王を汚す埃や泥などを寄せつけないそうだ。バリアーとはまた違うぞ、と得意げな魔王にカオルは応え、それから麻島青果店の看板を見上げた。
「そうか。ここは麻島タカシの家だったな」
「丁度いい。何か買うていけ。しからば早々に去れ」
しっしっと追い払う手振りをする魔王が適当に店頭に並んでいる商品をカオルに勧めてみた。
「そうか」
すっと店に一歩二歩と近づき、魔王と対峙したかと思うとおもむろに商品であるピーマンに手を伸ばした。




