【昼休みの終わりに】
【昼休みの終わりに】
「よっ」
ミツルが包帯を全身に巻いたミイラ状態で病院から戻ってきた。タカシと魔王に手を振るその横でアンナが腕を絡め取って離さないでいる。
「……連絡も帰還も早すぎねぇか?」
「あ、そっちなんだ。ツッコむの」
苦笑しながらミツルがよっこらしょと言いながら、自分の席に座った。タカシと魔王が自らの席から立ち上がり、その傍まで寄る。
「病院で検査って言ってもすぐそこ、歩いて15分ぐらいのとこだしさ。ま、学生としましては午後の授業をサボるわけにはいきませんし」
「う、すまぬ。甲藤」
魔王が素直に頭を下げると、ミツルは気にしない気にしないと手を振った。
「ミイラ姿なのはアンナの所為だから」
「心配だったんだぁああぁぁぁああっ!」
「はいはい。でもこれはやりすぎだから」
すり傷や切り傷、打ち身があちこちに見られたので、アンナが良かれと思ってシップや包帯をありったけさせたのだという。確かに傍にミツルの近くにいるだけで鼻の通りが良くなるどころか、目にしみる。
「流石に病院は大げさだと思ったんだけど、生方先生は頼りないし、アンナは保健室じゃなくて病院行こうって騒ぎだすし」
「しまいにゃ生徒会長様を呼び出して?」
「そー。流石の生徒会長もあきれてたと思うよ」
タカシと魔王は屋上にいたのでその放送が聞こえなかった。もし聞こえていたら、たとえミツルがいても保健室には行かなかったかもしれない。
「面倒なことになりそうだったんで、診察室入る前に電話しときました」
にやりと不敵に笑うミツルの、その要領の良さにタカシは閉口した。検査を受ける前から嘘の報告を学校にするとは、大した度胸だ。
「ま、一応検査も受けてきたから。頭痛もしないし、吐き気もしない。だいじょぶだいじょぶ」
「なら、いーけどな」
ほれ、とタカシがぐいっと魔王の頭を押してミツルの前に無理やり立たせた。
「な、なんじゃ」
「もう一度謝っとけ」
「いーよー、別に」
ひらひらと手を振るミツルだが、タカシは頑として聞かない。アンナが非難するわけでもなくじーっと魔王を見つめているので、当の本人は非常に居心地が悪そうだった。
「……すまなかった」
「よし」
ふんと押さえつけていたタカシの手を振り払い、魔王は憮然としている。一度謝ったのに二度したのがシャクに障ったか、もう一度謝るつもりだったのに他人に強要されてやったように見えたのが嫌なのか、その表情では判断出来なかった。
「タ〜カ〜シィ、あんまりいじめるなよ」
「うるせーよ。いじめられてんのはむしろおれだろーが」
「いや、あれはみんなタカシへの愛だから」
爽やかな笑顔で両手を広げるミツルだが、タカシの「うるせーよ」とアンナの「浮気はしないでくれぇええぇぇぇえぇえっ!」との懇願で一蹴された。愛と信用があれば何をやっても許されるというわけではないのは確かだ。
「モテる男はツラいねぇ」
「誰がだ」
つきあってられるか、とタカシは自分の席に戻った。ミツルがおどけて引きとめようとすると、昼休み終了のチャイムが鳴った。




