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【誰か助けてくれ】

 【誰か助けてくれ】

 「おぉーっ、リアル三角関係っ」

 タカシの声にならない叫びが届いたのか、緊迫した保健室へ空気の読めないナエ女医がひょっこり顔を出した。ぷつんと糸が切れたかのように、保健室の空気が一変して元に戻る。

 「やー、やー、やー、やっぱりぃ〜何かあるとしか思えないわよぉ。生徒会長さん」

 「生方ナエ先生。やめてください」

 「どういう勘違いをしとるんじゃ」

 きっぱりと言い捨てられるタカシも哀れだが、強烈な2人の矛先をいきなり向けられたナエ女医も同じぐらい哀れなものだった。

 「大体、生徒である私を校内放送で呼ばないでください」

 「や、ま、だってぇ〜」

 ぶつぶつと何か愚痴るが、そもそも授業中に呼び出すナエ女医の神経が信じられなかった。頼られすぎるのも考えものだ。

 「あ、そうそう、甲藤くんから連絡あったよ〜。特に大事はなさそうだって」

 「そうですか」

 ナエ女医の知らせを聞き、安堵したカオルは同じようにほっとしている魔王とタカシの方を向いた。

 「……停学処分は免れたかもしれないけれど、以後気をつけるように」

 「ぬ」

 「あっらぁ〜もう、ヤキモチしてるからってそんな当たり方はまずいんじゃない?」

 「生方ナエ女医」

 カオルの静かで圧倒的な眼力がナエ女医を抑え込み、黙らせた。魔王はそれを聞いてにやにやしている。

 「では、また」

 床を滑るように水平移動し、カオルが保健室の扉に手をかけ、そのまま退室した。

 「逃げたか」

 ほうほうと魔王とナエ女医がうなずきあい、タカシの方をにやにやと見る。その気色悪い視線に悪寒を感じるのと同時に、逃げ出すのにも都合よくチャイムが鳴った。

 「って、おい!」

 「しまった。カオルめ、謀りおったなっ」

 「あ〜あ、先生は知りませんよ〜?」

 ナエ女医は余裕ある悪戯っぽい笑みでタカシと魔王を見た。チャイムが校内に響き渡り、その余韻が保険室内に残った。

 「言っておくけど、どうもしてあげないからねぇ〜? ズル休みの片棒なんて」

 「期待してねぇっ」

 「期待しとらんわっ」

 タカシも魔王も振り向きもせず、慌しく保健室を飛び出して行った。その後に残され、冷たく突き放され、「そう……」とナエ女医が小さくつぶやく。

 「いいもん。……別に」

 ひらりと白衣のすそをたなびかせ、扉に向けたその背には哀愁が漂っていた。

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