【チャイムが鳴り終わってから】
【チャイムが鳴り終わってから】
タカシと魔王は屋上を出て、教室より先に保健室へ向かった。もしかしたらミツルがいるかもしれない、と踏んでのことだった。
「ちゃんと謝れよ」
「無論じゃ」
1階まで降りて、保健室の前に立ち、タカシががらりと扉を開けた。医薬品の匂いがツンと鼻につく。
「げ」
「う」
なかにいた人物を見て、タカシと魔王の嫌そうな声が重なった。思わず扉を閉めようとしたが、なかから伸びた手がそれを押さえつけた。
「閉めるな。麻島タカシ」
「ぐっ……」
保健室にいたのはミツルでもアンナでもない、生徒会長だった。予想外かつ今一番会いたくない人物だった。
「いつ来たんだ」
「授業中だ。連絡を受けたのでな」
「ミ、ミツルはどこじゃ。まさか捕って食ったか」
「……甲藤ミツルは大事を取らせ、病院で精密検査を受けさせている」
カオルはじろりとタカシと魔王をにらみつけた。
「またやらかしてくれたようだな。今朝の一件に続いて、これか」
「弁明はしねーよ。出来るもんじゃねぇ」
「そうか」
保健室へ行くことを勧めたが、無敵の生徒会長の見立てもあって病院へ精密検査へ行った。そこまでとは思いもよらず、魔王も連れ戻さず、ただのうのうと授業をサボっていた。そんなタカシが申し開きをせずに開き直ると、カオルは静かににらみ続けた。
「待て。タカシはどうでもいい。ワシをどうにかしろ」
魔王がすっとタカシの前に立ち、カオルと向かい合った。互いのその眼をのぞきこみ、腹の底まで見透かそうとしているようだった。
「もし、甲藤ミツルの検査結果に何か異常が見られたら……停学処分を受けてもおかしくはない」
「病院はどこじゃ」
「行ってどうする」
「助ける」
「……魔王の力か?」
「うむ」
そう力強くうなずく魔王に、カオルは冷徹に判断をくだした。
「駄目だ」
「ならば、おぬしを倒して力ずくで聞き出そうぞ」
ミシミシと保健室の内部がきしむような音がし、同時にタカシには何かがのしかかってくるような重圧感がした。カオルと魔王の厳しいにらみ合いが、今までにない緊迫した空気の下で火花を散らしている。両者の散らす火花がいつ爆発してもおかしくない。
―――勘弁してくれっ。
巻き込まれた平民のタカシは息を詰まらせながら、そううめいた。こんな状況は初めてだ。




