【ふぅっ】
【ふぅっ】
「なんじゃ……タカシ、おぬしまたサボりか」
「そりゃねーだろ」
魔王の姿を散々歩き回って探し、タカシはようやく屋上で見つけ出した。じろっと魔王をにらみつけると、ふいっと顔をそらされる。
「すまなかった」
「おれよかミツルの方に言っとけ」
「うむ。そうさせてもらう」
沈黙。しかし、耐え切れないほど重い空気でもなかった。
「……聞かぬのか」
「正直どーでもいい」
屋上へ来ると眠くなんな、とタカシはくぁっと大あくびをした。もう既に条件反射の域に達しているのかもしれない。
「おぬしらしいのぅ」
「うるせーよ」
ミツルとぶつかった背中がじんじんと痛むのをタカシは感じた。魔王の華奢な身体のどこにあんな怪力が秘められているのか。
―――どれだけへこんでるかと思ったら、もう立ち直ってやがる。
先程の騒動は恐らく魔王のトラウマか何かだろうと、大方の察しがついている。触れてはいけない過去や黒歴史は誰にでも存在するものだ。
「……」
話して楽になるものでもないし、話して楽になりたいなら魔王の方から切り出してくる。話すきっかけは既に与えているから、あとはいるだけでいい。
―――いてほしくねーんなら、言ってくんだろ。
魔王の性格上、そう言うことには躊躇わないはずだ。タカシはごろりと寝転んだ。
「ワシに気遣いは無用じゃ。すべて乗り越えてきた」
「そーかい」
「先程は不覚を取ってしまった。過去にとらわれるなぞ情けない限りじゃ」
「そーかよ」
「魔王として、もっと高くあらねばいかんというのにのぅ」
「そーだな」
寝転んでいるタカシは適当に相槌をうっているのだが、魔王はそれを気にしていない。元々タカシに同意を得ようとも思っていないのだろう。
「……とりあえず次の授業には戻るか」
「そうじゃのぅ」
それからタカシと魔王は次のチャイムが鳴り響くまで、何も喋らなかった。重く息苦しかったからではなく、ただ2人共これ以上話すことがなかった。




