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【核心】

 【核心】

 魔王が元いた次元から、わざわざこちらに来た理由について、まだ話してもらっていない。次元とやらを超えた侵略だろうか、とSF染みた思考がタカシの脳裏をよぎる。

 「……勇者がいなくなったからじゃ」

 「いなく、なった?」

 タカシは魔王をじろっと睨みつける。さっきまで言っていたことと違うのではないか。

 「正確に言えば、平民が滅亡し、勇者が現れることがなくなった。それに伴って、糧を失ったワシの眷族も魔王であるワシを除いて……すべてが滅んだのじゃ」

 魔王は自嘲気味に言う。タカシの目を真っ直ぐに見据えながらも、ぎゅぅっと自らの服を握り締めていた。かすかに震えているのもわかる。

 「先代の魔王は祖父じゃった。賢魔王と平民から呼ばれるほど、良き支配者じゃった。それでも……寿命が訪れる前に、慕い慕われてきた平民が勇者共にその胸を突き刺され、心臓を抉り出されて、握り潰されて息絶えた。ワシの目の前で……のぅ」

 目下のタカシよりも遠くを見るような魔王の目、震えた口調、悲痛のような魔王の叫びが聞こえた気がした。

 「……頭の中では理解しておった。それでも、ワシは受け入れたくなかった」

 魔王継承の儀式・儀礼。目の前で血の繋がりのある者が殺される現実。受け入れがたいのは当然だろう。

 「じゃが、そんなことは言っていられなかった。勇者を通して祖父の魂がワシを次の器に選んだ」

 ためらうことなく、そのすべてを受け入れた。先代魔王の魂と膨大なエネルギーを以って魔王の名を捨てさせ、次なる器が魔王にした。

 「ワシがすべてを受け入れ、魔王を継ぐまでのわずかな時間」

 たったそれだけのことを言っただけで、魔王の表情が一変した。哀しみから憎しみへ、その表情を一変させた。

 「その間に、平民共に強力な疫病が流行った。ありえんっ。ワシが魔王の力を振るおうとした時には既に遅く、すべての平民に発症し……どうすることもなく絶滅させてしまった」

 その声を途中で荒げるほどァルデピマジュムィダ史においても、ありえるはずがない。前代未聞の事象だった。

 魔王にとって力を振るえなかったことよりも何よりも悔しかったのは、祖父から託されたすべてを無為にしてしまったことだった。

 「平民という糧を失い、徐々に弱体化していく眷属もまた……魔王であるワシ以外を残して全滅した。必然的に、強制的にァルデピマジュムィダ史の幕は下りた」

 ……初めてかもしれない。魔王はタカシの目を見据えた。

 「ワシ以外、誰1人として、生き残らなかった。……魔王は他の眷属とは違う。平民のエネルギー以外の糧でも生きていける」

 魔王はざぶとんの山からふわりと降りて、タカシを見上げた。

 「じゃが、すぐに飽きた。何もおらんのでは、支配も何もあったものじゃない」

 誰も、何も存在しない支配下の次元・国。それは支配とも何とも言わない。―――孤独。そして、「1人はいやじゃ」という魔王の悲鳴が今にも聞こえてきそうだった。

 「お前は……」

 力無き平民と魔王の眷属に選択権も無く、力得た勇者は魔王を葬る義務を課せられ、力ある魔王は支配民ある限り放棄すること許されず―――。 

 「ワシはあの次元から脱け出した。祖父から託されたエネルギーを使って、魔王の力で次元の壁を超えた」

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