【9月10日】
【9月10日】
登校してきたミツルは珍しく自分よりも早く来ているタカシと魔王に声をかけた。
「おはよう。魔王さん、タカシ」
「ああ、おはよう」
「おお、甲藤か」
魔王の傍でまだ来ていないクラスメイトの椅子を引き、ミツルがよいしょと座った。それとほぼ同時に鞄だけ置いてきたアンナが飛び込んできた。
「おはよぉおっ!」
「朝から元気なやつだな」
「耳に響くのぅ……」
朝から勇者に分類される元気な声に圧され、魔王がうめいた。ミツルは飛び込んできたアンナを突っ張り、抱きつかれるのを阻止した。
「つれないぞぉぉおぉおぉぉぉっ! ミツルゥゥウゥゥウウゥウゥッ!」
「はいはい」
じたばたと抱きつこうとするアンナを片手で制し、魔王を感心させた。もう1年以上の付き合いになるアンナの扱いはプロ級だ。
「今日はやけに早いな」
「魔王に起こされた」
「うむ。魔王様を敬い隊と一緒にしつけてやろうと思うてな」
「いらねーんだよ」
【魔王様を敬い隊鉄則】
昨日よりも早い朝6時に魔王に学校へ連れて行かれ、敬い隊のしつけというものに付き合わされた。タカシにはいい迷惑だが、敬い隊は何かに目覚めたようでやけに張り切っていた。
「もう一度ふくしょーうっ!」
「ひとぉつ、魔王様を敬え。ひとぉつ、魔王様に従え。ひとぉつ、魔王様に迷惑をかけるな。ひとぉつ、魔王様に甘いものを差し出せ。ひとぉつ、魔王様の名を汚す真似は誰でも許さないっ!」
「おぬしら声が小さいぞ!」
「てか、いつまで続ける気だよ……」
機嫌の良い魔王のあとに続いてグラウンドを走りながら、何百回も鉄則を叫びハァハァ言う敬い隊。強制的にタカシも走らされ、散々な目に遭った。
敬い隊を先導する魔王がそう叫んだ。その声に負けじと、敬い隊は力いっぱい復唱を繰り返す。そして、絶妙のタイミングで魔王は満足げにこう宣言するのだ。
「それらをすれば、ワシはおぬしらを守ろう。相応に応えようではないか」
「ぅおぉ〜っ!」
魔王の言葉に敬い隊の疲労も理性も吹き飛び、歓声が巻き起こる。そうして一致団結する敬い隊と魔王の関係は、限りなく新興宗教に近いものがあったとタカシは語る。
「んで、朝から生徒会長様にまとめて注意された」
朝から怪しげな集団及びその行動を見過ごすわけがなかった。首謀者の魔王といつの間にかその責任者にされたタカシが連行され、魔王様を敬い隊は実質的な活動は殆どしないまま解散となった。




