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【動いた金は5900円也】

 【動いた金は5900円也】

 うまい具合にすり替えて逃げる敬い隊を見てミツルが苦笑した。取り残されたウノとアンナが話の輪に入れなくなっていることをミツルに嘆き、うまいこと抱きついていた。

 「にぎやかでいいよなー」

 「そうだなぁあぁぁぁぁぁあぁっ!」

 「てめぇらはなに部外者ヅラしてんだ」

 いつの間にか魔王とタカシが取っ組み合いを始めており、敬い隊が2人を囲んで闘技場を作っていた。この騒ぎにクラスメイトが集まり、楽しそうに野次を飛ばしている。

 「はーい、はったはったぁ。8:2でタカシは不利だけど八百屋で培ったパゥワーはあなどれないよー」 

 「賭けてんじゃねぇっ」

 「隙だらけじゃぞ」

 本当にお金を集めているミツルにタカシが怒鳴っているところに、魔王が抜き手で大きく開いていたわき腹を刺した。これは凶悪なまでに強烈な一撃だ。

 「日頃の恨み、思い知ったか」

 「どっちかっていうとおれだ……」

 ろ、と言葉が続かないままタカシの身体が崩れる。しかし、そこは男の意地と根性があった。

 「おらっ」

 「うぐっ」

 崩れ落ちる勢いのまま、タカシ渾身のげんこが魔王の頭にヒットする。相当効いたらしく、魔王は「うぅ〜っ」と涙目でうずくまってしまう。

 「魔王様っ! ご無事ですか」

 「濡れタオルを、濡れタオルをっ」

 わき腹を押さえぐったりとしているタカシとうずくまって動かない魔王。闘技場だった敬い隊が慌てて廊下へ走り出す。

 「これは……」

 「引き分けだなぁあっ!」

 賭けた方は納得いかないとぶぅぶぅと文句を言うが、両者共に戦闘不能なのだから仕方ない。

 「ワ」

 「ま、ま、ここは親の総取りてことでひとつ」

 魔王が何か言うのを無理矢理さえぎり、HAHAHAHAと笑うミツルが動いた金を懐に入れたところで、昼休み終了のチャイムが鳴り響いたのだった。

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