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【はかられた重み】

 【はかられた重み】

 「信用しているぞ。麻島タカシ」

 カオルが微笑むと、「またそれか」と、タカシはため息をついた。無敵の生徒会長に言われると、その重みが違う。


 【心中知らず】

 「誰が、んな気を起こすかよ」

 「そうか」

 そもそもタカシが魔王に、周りが言うような恋愛感情を持つなどありえないことだった。

 「朝来野カナか?」

 「……ぉぃ」

 「案ずるな。ただの勘だった」

 タカシは本当に小さくうなるが、カオルは動揺や心情を表情にも声調にも表さず淡々と語った。

 「それだけはっきりと明言出来るということは、恋愛対象外か他に恋愛対象がいるということだろう」

 ここまではただの憶測、根拠も薄い邪推(じゃすい)だった。

 「昨日、麻島タカシが朝来野カナに向けた視線は攻撃的なものではなかった。例えるなら、お前が野球をやっていた時や野菜を見ている時の目だ」

 「さっすが生徒会長様。なんでもお見通しってわけだ。尊敬も人望も、人を見る目も確かにあるな」

 ぱちぱちと拍手し、タカシはカオルのことを見下ろしている。その目は尊敬ではなく、軽蔑の目だ。

 「おれは生徒会長様のそういうところが嫌いなんだがな」

 「―――すまない。深く立ち入りすぎた」

 カオルが立ち上がり、すっと頭を下げた。タカシはその謝罪をどう捉えたのかはわからないが、それ以上何も言わなかった。その代わり、タカシはまたため息を吐いた。

 ―――あぁっ、クソっ。どーしても嫌いになりきれねぇっ! 

 それがカオルの魅力ともいうべきものなのか。周りに翻弄されてばかりのタカシはうめいた。

 「腹立つな、やっぱ」

 「そうか」

 タカシがひとにらみすると、カオルは頭を上げてすとんと席に座りなおした。それから再び書類に目を通し始めると、変わらぬ声調でタカシに訊いた。

 「……それで、本当にもう野球はしないのか?」

 「いちいちおれに構うなよ。他に仕事や構わなきゃならねー生徒はいるだろ」

 「そうか」

 少しだけカオルの声調が変化したようだが、タカシにはよくわからなかったようだ。もし気づいていたとしても、タカシは何も言わないだろう。

 「話は終わりか?」

 「そうだな。終わりで良いだろう」

 とんとんと書類の上下端を整え、カオルが話を締めた。くるっと回れ右をし、タカシは部屋の出口の方へ向かう。

 「くれぐれも魔王のことを頼む。それと―――」

 カオルはふっと息を漏らし、力強くはっきりと言った。

 「科目資料室の整理を早めに終わらせること」

 「……りょーかい」

 聞こえるか聞こえないか程度の声でタカシは「うるせーよ」とも返事をして、生徒会室を出て行った。

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