【武島イヅシ教師の授業風景のなかで】
【武島イヅシ教師の授業風景のなかで】
魔王様を敬い隊が全員出て行くのを見届けてから、その中心にいた魔王とタカシを一瞥する。それから何事も無かったかのように、出席簿を開いて出欠をその目で確認する。
「遅刻ゼロ。欠席ゼロ。授業を始めよう。前回、課題を出された者、前へ出なさい」
がたがたっと何人かがぴしっと立ち上がり、ぎくしゃくと歩いて黒板の前に立つ。イズシ教師ににらまれながら、おそるおそる課題の答えを慎重に書いていく。
「……知久瀬」
びくっとチョークを持つ手が震え、前に出た1人である知久瀬の表情がこわばる。イズシ教師は手元の閻魔帳を開いた。
「手が止まっているな。わからないのか?」
「す、すみません……」
「何故、私のところへ聞きに来なかった」
「すみません」
「あやまるな。意味が無い」
「はい、すみませんでした」
イズシ教師が閻魔帳にまた何か書き込むのを見て、知久瀬がうなだれる。そして黒板前で同じことをしていた生徒達まで萎縮し、それどころか教室全体が縮こまっていた。その空気を魔王は面白そうに見ている。
「これはなかなか」
「で、あの敬い隊は結局何だったんだ?」
タカシが小声で後ろにいる魔王に声をかけた。ふふんと笑って見せ、同じように小声で返してくる。
「うむ」
【魔王様を敬い隊のことか】
「あれはワシを慕い、敬い、そして集いし見る目のある平民共じゃ。―――様つけてくれるしのぅ」
「……お前、あんなのに好かれたいのか。―――根に持つな」
「まぁ、今は質より量じゃな。何をするにも手駒が足りん。―――悪いか」
魔王がぐっと握りこぶしを作る。豊泉院生徒会長を始めとする超・生徒会メンバーのファンクラブに対抗する気だろうか。だが、魔王曰くあの魔王様敬い隊はそういったところから流れて来た者だという。
「来る者は拒まん。魔王たるもの、その器のでかさを率先して示さねばな」
「そういう問題か?」
タカシはいぶかしんだ。魔王のことを尊敬し集ったと言うにしては、タカシのことを異様な敵対心で見ていなかったか。
―――あれがオタクとかいうやつかね。ていうか、器でかいんなら根に持つなっつーの。
敬い隊などと口では言っているが、どちらかといえば魔王の容姿や何かに萌えを感じて惹かれてきたのだろう。タカシにはその感情や関心がよくわからなかったが、わからないままの方がいい時もある。魔王も恐らく承知の上だろう。
「しっかし、なんであいつらあんなに息切れしてたんだ? よけいウゼーんだが」
「うむ。ワシがエネルギーを貰っといたせいじゃろう」
「オイ待て。それ、あいつら知ってんのか」
「知るか」
魔王はきっぱりと言い捨てた。タカシが思わず立ち上がろうとするのを、魔王が制した。
「……じゃが、場を支配していないにも関わらずそのエネルギーを貰えるということは向こうがそれを許しているということじゃ」
「許してるわけねーだろ。向こうが知らないだけだ。あんなに息切れするほど吸いやがって」
「じゃから、タカシの言うほど貰ってはおらん」
その言葉が本当なら、魔王様を敬い隊はエネルギーを吸われているのと同時に興奮していただけなのか。それはそれでぞっとするな、とタカシはあきれるほかなかった。
「そこ。うるさいぞ」
イズシ教師の厳しい目が光り、タカシと魔王が同時に舌打ちした。
「反省の色無し。よくわかった」
さらさらとペンをはしらせ、閻魔帳に書き込んでいる。
「気をつけるように」
それだけ言うと、イズシは前回出された課題について、その問題点の解説と指摘を始めた。




