【9月9日】
【9月9日の早朝】
「思ったより殊勝で何よりだ」
「うるせーよ」
タカシは昨日の整理を終わらせるために朝早くから超・生徒会室に赴いた。魔王はまだ家で寝ている。
「ていうか、ここは何時から仕事してんだ」
現在は朝の7時過ぎ。早すぎたかと思ったタカシがここに顔を出した時から既に超・生徒会のメンバーは全員揃って、書類作成と会議をしていた。仕事熱心なのは良いが、こんなに朝早くからやらなければならないほど、それが溜まっているのだろうか。
「さて、科目資料室を開けてやろう」
「無視かよ」
「わたくしが行きますわ」
書類の束をまとめたセイがかたんと立ち上がり、そうカオルに申し出た。
「いいのか」
「はい。こちらは終わりましたので、お確かめください」
カオルが書類の束を受け取ると、速読でばららっとめくって見て、物凄い速さで会長印を押していく。
「……わかった。では、お願いしよう」
了承を得て、セイは生徒会長の机の上に出してある鍵を拾う。
「では、行きましょう」
「ああ」
セイがタカシを促し、率先して前に出で部屋を出て行く。それにタカシも続こうとすると、カオルが声をかけた。
「昨日の件、放課後には決定が下りるだろう。それまで待て」
一種の死刑宣告だろうか。タカシは「へいへい」とつぶやき、後ろ手で扉を閉めて生徒会室をあとにした。
【なかなか面白いことになっているようですね】
「豊泉院生徒会長狙いですか」
「いーや。どういう勘違いだ?」
科目資料室へ向かう途中、セイがタカシに話しかけてきた。早朝の校内には誰もいなく、内緒話には都合が良かった。
「しかし、昨日は一緒に下校した」
「……たまたまだっつーの」
「そうですね。科目資料室の整理は一筋縄にはいきませんから。遅くまでかかるでしょう」
セイが何が言いたいのか、タカシにはよくわからなかった。
「あの人のは幅広い年齢層から支持されています。夜道には充分気をつけなさい」
「……そういや誰かに刺されかけたな」
びっくりしてセイが立ち止まり振り返るとタカシは真顔でいる。それで嘘だとわかり、セイはあきれた顔でそっぽを向いた。
―――マジで取れるぐらいやばいってことかよ。
それは魔王とタカシの同棲疑惑以上に問題なのではないのか。しかし、セイはさらりとそれを流すようつとめる。
「あの人とあなた達は違います。くだらない望みは捨てることです」
セイはそう言い捨てるのと同時に、2人は目的の科目資料室前に到着した。くるりとセイは180度回転し、タカシと向き合う。
「では鍵を渡します。始業の5分前までに超・生徒会室に届けに来ること。良いですね?」
「……わかった」
ちゃりと鍵を手渡され、タカシがそれを握り締めた。
「時間は厳守でお願いします」
「へいへい」
タカシは生返事をして、鍵を頭上へ放り投げて、また受け止める。セイはもう一度だけ振り返るが、その後はそのまま生徒会室へ戻っていったようだった。
―――わっかんねぇな……。
果たして、セイの言葉は誰に向けられたものだったのか。タカシか、それとも自分自身に向けて言ったのか。
「まァ……どうでもいいけど」
くぁっと大あくびをしながら、タカシはそうつぶやいた。確かに豊泉院会長と八鍬副会長の間柄は複雑だということはわかったが、タカシにはどうでもいいことだった。




