【というわけで2人並んで陸上部の練習に顔を出したわけだが】
【というわけで2人並んで陸上部の練習に顔を出したわけだが】
結局、カオルを無視して先に帰ってしまった。いや、元々そうするつもりだったのだが、生徒会長としての処置を聞きそびれてしまった。
―――それにあの騒ぎで判断出来たものかね。
タカシは湯船につかり、陸上部員を巻き込んでの魔王の乱心を思いにはせた。やけに首筋の傷やカオルに対して反応していたが、どちらも勇者関連なのでカンに障ったのだろう。
「ま、もうなるようにしかならねーだろ」
ざぱっと水音をたて、タカシが立ち上がる。これからどう話が転んでいくかは、魔王とカオルに委ねられたに等しい。もうただの平民であるタカシが出来ることなど無いに等しい。
―――……今日のこと、魔王にゃ話さなくていいか。
今更知っても遅いということもあるし、話したら話したでまた騒がれると困る。更にその勢いでカオルの家に殴り込みをかけるという暴君に出ないとも限らない。実際、ありえそうで怖い。
「いつまで続くんだろうな」
そうつぶやくと、何やらどたばたと風呂場の外が騒がしい。何事かと思えば、魔王が何かを叫んでいる。
「ええい、ミカコよ離してくれ。今日こそタカシにワシの背を流させることから始まり、あやつの手の握力がなくなるまで隅々までマッサージをさせ、とことん尽くし倒させるんじゃあ!」
「やかましいわっ!」
タカシは外に大声で怒鳴りつけると、それが風呂場内に反響する。その怒声に外はまたどたばたと騒がしくなる。
―――マジでいつまで続くんだ、この生活は……。
魔王が斗葉高校を卒業するまでとして1年と半年。気が遠くなりそうな道のりに、タカシはぶくぶくと湯船に沈んでいった。




