アリソンとケイ
ほぼはじめて初めから最後まで書いた作品です、まだまだ色々勉強がいるし、読みづらい部分もあるとおもいますが評価や意見をお願いします
プロローグ
宇宙の傍ら惑星モース、かつて魔女が裏世界に徹し、人間が表世界を支配する契り(ちぎり)をかわした。
モース歴1422年
<魔女追放運動>発展しつつある世界への不満が、魔女へ向けられた。
各国の“魔女区”に対する暴動が爆発的に広る、魔女区とは魔女やその関係者を閉じ込めた地区の事だ。
そしてその時期、その過ちが生じたのは必然だったのだろうか。
テレビで有名な司会者“オズワルド・ジョン”が小さな躍進をとげる、没落しつつあったの彼が、ここぞとばかりに悪しき思想をふりまいた。
やがて人々は彼をあがめ、その思想を鵜呑みにしていく、
そのさなかである草原、ある重大な約束事が交わされた。
輪を組む男女、その中で年上女の子リーゼ・ピリカ。
男子、サニー・ジョン。オズワルドの息子だ、
年齢のよくわからない少女、アリソン・オールドリッチ若くももっと幼い少女のようにもみえる。
リーゼはリュックから何かをとりだすしぐさをした、茶髪のショートカット、前髪は左右にわけてあり、中央に遊びとばかりにのびている、背は高いほうだ、めじりは下がりやさしそうでもあるが、眼光はするどい、薄い唇。リーゼは花柄のブレスレッドを目のまえにつきだす、するとサニーも同じくそれを取り出しつきだした、
「みんなもってきたわよねっ、魔女の願いをかなえる“魔女のジンクス守り”今日これに新しい意味合いをつくるわ」
だが、もう一人の少女、髪は後頭部の下のほうでたばねたポニーテール、自信ののなさげなさがっためじり、高いわしばなの口元は下がっている、ぼろぼろの下着に上着、みすぼらしい格好の少女は、何かもじもじとしている。
「どうしたの、アリソン?」
心配した様子のリーゼ、
「……あの……その私、ブレス、忘れて……」
リーゼはつめよって問いかけた、
「まさか忘れたの?」
サニーはアリソンをみつめ、数秒後思いついたようにいう、
「ま……まあ、今度もってくればね……」
リーゼは声を少しあらげた、顔だけおおきく下にさげうなだれる、
「あなたの為の儀式よ!?」
「……ボソボソ」
眼光が光る、アリソンの声は小さくききとれない、少し声がかれている、思えばめにもクマがみえた、
「問題ないよ、僕のだし」
サニーは自分のつくったブレスをアリソンにさしだした、するとアリソンは遠慮がちにそれをうけとり少し笑った。
「あ……ありがとう」
サニーはふと気づいた
(久しぶりだな、アリソンが人前で笑ったのは)
しばらく後、静寂を破りサニーが告げる、
「呪文をきめよう、アリソンを守らなければ」
リーゼはいった、
「想いは魔法使い、魔女の力、アリソンの魔法トランスをとめよう」
ケイランバートはその事、柔道に熱中し始めていた。
―プロローグおわり
―リーン連邦国 連邦魔女組織保護局、通称“魔女局”
魔女局は、魔女追放運動から魔女を守る名目で暴動後に設立されたものだ。
その支部であるグリーズ州グリーズ支部
単発にもみあげ、多少あるあごひげ、目つきはつぶらでどこか優しそう、アンバランスな男らしい眉毛、モヒカンとまではいかないが、前髪の上のほうが少しとがっている、茶髪の男、
彼は朝からコーヒーだ、やがて軽快に準備をする、時計、花柄のブレス、ネクタイをしめる、
彼の名はサニージョン、魔女局のエージェント見習だ。
サニーは、パートナーのアリソンを探している最中だった、
肩のぴしっとしたスーツにみをつつみ、傍らの部屋のドアを見やりながら進む、
「アリソン、アリソンっと」
<コツコツコツッ>
靴音、廊下を歩いていると、第3エージェント室室長リーゼ・ピリカだすれ違う。
スーツに身を固め、資料を見ながらもいった
「アリソンなら、まだ寝てる」
ショートカットにふさっとした髪型、茶色の髪、ある程度ラフな感じ、くわえた棒とそのさきの飴玉が鋭い目つきとコントラストを生んでいる、
サニーは口にしないまでも思った、
(この甘党……)
彼女とは昔からの中、実の姉のようにしたってきた、しかし、この状況でいつも通りに接するのはかなわない、
彼女はいつもこうしてぶっきらぼうに必要な事だけはなす。
「へぇ……あ、はい」
たじろぎながらも軽く会釈する、サニー・ジョンが向かった場所、そこはリーゼ・ピリカの部屋だった。
「アリソン!アリソン」
アリソンは、リーゼの部屋で寝起きしている、どうでもいいが自身の部屋は汚い。
「“魔女”アリソン」
オレンジ色のぼさぼさの髪をとかしている、鏡の前の女性はポニーテールで、だらんと外れた長い耳の横の髪はウェーブがかかっている、前髪のくせっけはなおらずピンと跳ねている。
AM8時、ようやく二人はエージェントみならいの責務である魔法、魔道具の訓練を始める。
サニーは拳銃で射撃の訓練をしている、
ただの拳銃ではない、魔力が込められている魔道具、彼は魔法使いと人間のクォーター。
エージェントは魔法は扱える、だが条件がある、人間が魔法を扱う場合は“魔道具”を介す必要がある、
サニーは心地よく練習をしていた、
「おっ」
彼は神経室なので、服についたほこりがきになったようだ、弾丸はその拍子に少しづれる、
「おうサニーじゃないか!!……お前、ひどいな、いつにもましてな」
気が付くとよこに誰かがいる、サニーは舌打ちをした、
“ジョー・プリケット”だ、白い髪の短髪、無神経、眉は太く、目はするどく半開きだ、
かつては親友だったのだが、いまではサニーとジョーは犬猿の仲だ。
「お前に魔女の相手ができるのか」
とは、ジョーの談。
アリソンは丸いテーブルの上に並べられたろうそくをまじまじと見る。
カーテンで閉め切った部屋の中、そもそもろうそくの認識すら危うい、だが人の目はくらやみになれていくものだ……、するとアリソンはごそごそと動作を始める。
「ぱちっ」
指をならす、やがてその一本にだけ火がともる
何をしているのか、そもそも、魔法はどうして生まれるのか、
魔法の呪文、その簡略的なものが、“音”音がカギとなり魔法は発生する……。
左から右へと順々に……、なにもないのに、火が付く、アリソンが指をならすと、それは起こる。
「……ひーふーみーよっ」
そうして二人は時間をつかっていたが、1時間9分もすぎるころ、
「……安定しないな」
アリソンがつぶやく。
すると、いつからそこにいたのか、アリソンの背後からリーゼが歩いてきた。
「仕方ない、人間界では魔力は安定しない、私たちも承知している事よ、この辺でおしまいね」
きりあげるのは少し心おしいが、アリソンはリーゼのいう事は逆らえない、立場上の事もあるがこの女性の言葉、
なにやら迫力がある、簡潔でありながら、適切、彼女が無駄な事をいわなくなったのはいつからの事だろう、
アリソンは左手のブレスを見ながら、少しさすっている。
「アリソン、焦らないで、そろそろ終わろう?」
リーゼはいった、アリソン、リーゼ、サニーの腕には、あの丘のブレスが確かに身に着けられていた。
階段を降り、移動すると話声がきこてえくるきた……、
「あの人が、アリソン?」
黒いパーカーの小さな少女達、よくみると布きれで、ひとつにつながる黒いマントをきているだけだ、
「そうね」
“黒い子供たち”、彼らは研修生だ、エージェントの補佐をする、つづけて耳につぶやきが入ってくる、
「アリソンオールドリッチ、恐ろしい魔女」
「機嫌をそこねると大変だ、危険な存在だ……」
アリソンは蚊帳の外、
「また文句……」
むすっとしていう
サニーはアイコンタクトでアリソンの機嫌をうかがう、
「陰口をいわれた」
「そうか……」
リーゼがこちらに目配せをする、
アリソン以外には陰口などではなく、むしろアリソンをほめるような意図の会話が聞こえていたのだった、憧れや、期待をしているような、そんな。
―(お兄ちゃん?イサ?……)
少女の先、二人の少年が向かい合っていた、
「何をしているの」
記憶の中の少年らは沈黙のまま、こちらに目もくれず、お互いだけで睨み合っていた……
グリーズ州ファイハ市、9月の12日、土曜、このエラ高校にてマナ・ランバートはぼーっとしていた。
F校舎の一番上の角部屋吹奏楽部の音楽室。
「マナ、マナ?」
呼びかけられ現実に戻る、友人のラタだ、つづけてラタの指先をみる、窓枠の外を指さしていた、グラウンドを横切る集団だ。
「彼よ―」
「イサ」
グラウンドを横切る集団の中、柔道部たちだ、その中に彼はいた“イサ・キースリ”中性的な顔立ち、ととのったアゴ、ほりの深い目、そして無口で無骨な性格で、体格がいい、3年、柔道部の主将。
女子たちから人気がある。イサは、マナとケイの幼馴染だ、小学校の頃転校してきたのだが、
ケイとイサはすぐに親友になった、
ラタンはしらないが、彼はすでにマナと恋人関係にある。
「ケイさん?ケイさん」
グラウンド―
ケイ・ランバートは、呼びかけを無視しながらも、荷物を背負いつつふっと吹奏楽部のほうをふりむいた、
「マナのやつ、ちゃんと練習してるのか?」
吹奏楽部の音楽はいまいまやんだ所、
マナ・ランバートはケイの妹なのだ、
「……ケイさん、いきますよ」
呼びかけの声の主は幼馴染のコニーだった、みるからにひよわそう、だが優しそうな小柄な男子、同じ3年。
その先にあるいている集団とイサの姿が目に入った、ケイは仲間の元へ走っていった。
ケイ、コニー、イサ、彼らは部活帰りの喫茶ピープーで食事をしていた、
客足も多くなく、にぎやかな所が苦手な彼らには格好のたまり場だった。
「いやー、今日もイサつよかったなー“守りのイサ”遠距離の達人」
試合はイサが圧倒的につよかった。
「右手から参りましたのはイサ選手左手から参りましたのはコタロウ選手」
唐突にケイが小芝居をはじめる
そこでコニーがさっし、便乗する。
「初め!」
「さあ、敵の選手がせまってくる、ん?なんだこの高速の手さばきは、相手が、相手が困惑している」
便乗のコニー
「守りのイサですねー、襟元に近づけない、近づかせない」
イサは笑いながら、困惑しつつも
「やめろよっ」
やがて5分も立つ頃、イサはあきだして宿題をとりだす、二人はまだはしゃいでいる
「コーヒーこぼすぞ」
はきすてるようにに呟く
「俺はぜったい、どんなときも、真剣勝負だから」
ケイはその反応に何か、諭すように反応した、
「明日もここで」
そうして三人は別れる。
ケイとコニーが談笑して家路をあるいていると、コニーが突然立ちどまえる。
「やばい……」
他校の生徒、この付近をうろつくので有名なやつら、
「おうおう、コニーちゃん」
昔からひ弱で、若干まわりから遅れていたコニーは、こういうのに目を付けられる事があった
「あーあ、主将さまと勝負したかったな」
いたらいたで、逃げていくくせに、
「ケイがいる面倒だ、早めにかえりましょ」
別の男が促すとやつらは帰っていった。
ケイは家への向かう道で信号にさしかかる。
信号は青にかわる、
前から慌てた様子の老婆が、買い物袋いっぱいの食品らしきものを抱えて走ってくる、回りをきょろきょろ見渡し、こちらをみていない。
ケイはよける準備をし始める、妙にそわそわする
回りの人間も老婆を見ている、
あまりにふらふらとくるので、ケイはおばあさんをよけそこね、
「あっ」
その拍子に食品が道路にひろがった、
「わっ、ごめんなさい」
すかさず相手がどなっていた、
「触るな!!」
どうして?ケイはそのお婆さんの肩の紋章に気付く
(―魔女区の人々)
魔女区の人々に配られる保護対象の紋章それは時に、逆の意味ももつ、
「わたしは、魔女区の人間だ……」
ケイは少し迷いつつも……
「同じ人間ですよ」
ケイはかまわず落ちたものを拾いはじめた、
まわりの人間は迷惑そうに避けてあるいていく、
こういう時のケイ、まわりをかえりみず、妙に維持をはっている、だがそれが、彼のやさしさだった。
―それから1週間後、ケイとその周辺は大きく違っていた。
柔道部はに練習をしている、
ひときわ大きな声をだしていたのはイサだった。、
「おらーそこ!気合はいってないぞ」
ふと別の場所をみて、
「おい!!!こら!!」
後輩たちはおびえていた、
「おい!!いい加減にしろ、八つ当たりをするな!!」
声をかけたのは3年のデイル、濃い眉毛にがっちりとした体格、見た目からよく敬遠されるが、予想に反して内面はとても温厚だ。
いつものイサでは想像もつかないような様子。
「ケイさんいないと、イサさんの厳しさが際立つな……」
後輩たちは疲れ果て、反論もできない、
ケイランバートのいない柔道部だった。
―時刻は夕方―
ケイはとある屋内にいた。
<トゥルルル>
しばらく電話の音がなっていると、耐えかねて、
「あの、、すみません」
奥の店員から声がかかった。
はっとケイは携帯の電源をいれていたことを思い出した
「ごめんなさい」
奥には一人、名札にアリソンと書かれた店員、軽いポニーテールと、耳あたりの“もみあげ”に少しウェーブのかかった髪型、おしとやかそう、それでいて裏もありそうな美人
彼女以外に店の人間はみない、
彼が書店に到着したのは、それから間もなく。
小気味よくドアのベルがなる、
入口から縦に長く、古い本や、いま流行の本が所せましとならんでいる、彼はケイをすぐみつけるも、正面からというわけにもいかなかった、
逆側からまわりこみ、驚かす寸法だ。すーっと近づく
「わっ」
ケイは驚かなかった、それどころか一笑していう、
「気づいていたよ」
「……」
コニーは黙り込む、
「ケイさん、あの事、おちこんでるんですか」
返答はなかった、だがケイは下をみて、少し元気なさそうにみえた
「ケイさん、何か、声をかけたらどうです?」
会計の時、コニーがまたちゃかしていた、というのも、ケイはこの女性の事が気に入っている
「あの、アリソン書店って、あなたの名前ですか?」
「そうだけど?」
見るとまだ若い、ケイは指摘しようとする
「あなたが、店長さんですか」
無表情で店員が答える
「そうよ」
「クス、、、」
コニーは笑った。
夕方ごろマナは家にいた。
「気に入ってくれたかな、お兄ちゃんにも作ろうと思って」
「そうねえ」
叔母が返事をする、叔母は売れない絵本作家だ、ほとんど自室にいる
マナとケイは叔母に育ててもらった、実の母と父彼らの近くにはいない、行方不明らしい。
マナハブレスレットを熱心につくっている、
それは、魔女が約束事や願いをするときにする「魔女のジンクス守り」だ
今日の午前マナは学校でイサにこのブレスをプレゼントしたのだった。
となりには人がいた、叔母だ、
「喜んだ?」
「……まあね」
少し困ったようにわらった。
つぎの日、コニーは部活を終えてケイと合流しゲームセンターにいた。
(ケイさん、色々なやんでるのかなあ、イサさんの事には触れないほうがいいのかな)
二人だけであそんでいたが、目的もなくマンネリになってきたころ
「ケイさん、あの人と約束したらどうです、私が勝ったら、彼女をデートにさそいなさい」
「ばかばかしい」
カタカタとゆれる筐体、向かい合うコニーとケイ、今日は客は彼らだけだった、やがて数分後、ケイは筐体の前でうなだれていた、
(oh……)
ケイは一人でアリソン書店に向かう、ケイの住むファイハ市の隣、ベイ市、ケイは知ったような道をいく、それだけで、なぜかたどり着けてしまう。
「よくいつも迷わないよなあ」
無意識に歩むケイ、裏路地、商店街、その内突然煙が立ち込めてくる、
(霧?)
独特のにおいがしてくる、妙にかぐわしい。
「あっ」
ケイはふと思い出す、
「この濃い霧と何かの花の匂い、以前にも……どこだっけ」
ケイは歩きながらも薄い記憶の糸をたどる、
「……そういえば、ここに来るときにいつもこの香りが」
やがて店につく、
キィっと音をなりドアベルがなる
挨拶をかわしそのまままっすぐいって、右へ左へとたどたどしい感じで、何かを探すようにうろうろとする、、体がこわばっているが本をてにとる、
やがてアリソンと目があうと、
「いい天気ですね」
無理やりに声をだしたので裏返った。
「……今日は雨ですよ」
「ですよね」
アリソンは口数が多い方ではない、ケイもそれはしっていた、だからこそ今やろうとしている挑戦が、とても無謀にみえた。
「あ……あの、今度の日曜遊びませんか?」
「……はい、はい?」
ケイはゲームに負けていた。
一人になったはずの書店でボソボソ話し声がきこえる。
見知らぬ声だった
「どうするの?被害者と遊ぶ、なんて聞いたことないよ」
アリソンが答える
「うるさい魔道書ね……ババはいったわ、問題ないと」
椅子に座るアリソン、腕はレジ券机の上にひろげられる、傍らに厚い本、謎のの言語が表紙に書かれている本に向かい合っていた、
よくみれば、倒れた本から、何かがその真上にとびでている、白いもや……、
それは少女だった、髪を左右に丁寧にわけ、ピンでとめている、どこかよわよわしく、おしとやかそう、
アリソンは本からとびだす、まるでホログラムのような透明な人間と話あっていたのだった。
午後2時、
「アリソンさん、きたきた、こっちですよ……」
ケイは待ち合わせのニース公園の入り口の木のわきでまっていた、、ケイ達がいつもつかうおきまりの公園。
「コニーのやつ、なんか用事でこれないって」
公園の時計の針がかちかちとかすかな音をあげていた
二人はブランコに乗りながら今日の相談をしようとしていた
アリソンが語り掛ける、
「ねえ、気になっていたんだけど……ケイくん、どうして、学校にいかないの?」
ケイは応答をせず前をみたまま動かない
「実は、謹慎中で」
アリソンは決意する、
「…………あなたには話しておくわ、私、魔女区の出なの」
これは嘘だ、もともと裏の世界にいたのだから……
「私、魔女区で優しくされて、魔女のために何かできないかって、それでケイくんの事件もしっていたのよ」
そのあと、ゲームセンターに入り、二人だけで遊んだ
プリクラもとった、写真をみてアリソンはいう。
「私はこんな顔してないわよ」
「ハハハ」
ケイは、失礼だと思い、笑うのをやめる、
その顔をみてアリソンがわらった。
「こんなの初めてだわ」
そのあとに何もしらないアリソンにホラーを見せて、アリソンが半泣きになっていたのもケイには意外だった、
夜もふけてくるころ、
「もうすぐ帰らなきゃ……」
とアリソン
けれどケイは無理やりアリソンを誘う、アリソンも少しなら、という事でついてくる事になった。
小高いおかを上るとき、ケイはアリソンの眼に目隠しをして、アリソンの手をひいてその丘をのぼった、傍らに、五色山という名前の看板がある
「眼をあけてください」
すると、ケイとアリソンの前に、この町の夜景がとびこんできた、
「昔、コニーと一緒にここにきたんです、あいつ泣き虫でね……」
「綺麗……」
ケイは語り掛ける
「あなたが魔女区の人だとして、どうしてそんな事を僕に??それに、紋章がない」
「あなたは特別だから」、
アリソンは見た感じは貴婦人の格好でカモフラージュして、
自室に向かう……、カモフラージュ、魔女局は、表向きは博物館なのだ
<コツコツコツ>
怪しむものは誰もいない、やがて奥、人影のいないばしょで、つき当りの絵画のはしをつかみひいた、これはドアになっている、地下の魔女局へと続く階段をいく、
(以外とたのしかったな)
「アリソン、スキップ?」
「うるさいな」
ふと自分の部屋のポストに何かが入っている、魔女局は住んでいる人間もいるので郵便物は独自に部屋に振り分けられる仕組み。
「手紙」
アリソンはごそごそとそれを開けるが、身に覚えはない、
(誰かしら)
―裏切り者が、お前のそばにいる、おびえるがいい―
手紙はこれだけ書かれていた
その日の夜……アリソンとサニーはケイの高校に潜入していた、
「仕事だ」
サニーがいうと堂々と校門からはいり、アリソンがあとを追う、
柔道部の部室へと続く廊下についた、
待ち伏せをしていた、ある有力情報をもつ青年がそこを通るのを……。
柔道部三年、デイル・レイヒーはその日の帰り支度をすませ、挨拶をして帰る、
「お疲れ」
後輩がいう、
「明日からもお願いします、イサ先輩とケイ先輩があんな状態で、頼れるの、先輩くらいしか……」
「わかっているよ」
デイルは、廊下で人影を目をした、アリソンとサニーだ、
「デイル、あなた、デイルね」
すれ違いあざま声をかけられる、
「そうですが、あなたは?」
パチッと、アリソンがデイルの前でてをたたくと
嘘のようにデイルは静かになった。
「ああ、アリソン、せっかくアポをとってあるのに……」
サニーの忠告に、アリソンはいう
「大丈夫」
アリソンはつぶやく。
サニーはあきれたため息をつく、
「デイル、“ケイが目撃したもの”その場所に案内して―」
移動しながらデイルは一人でに話しかけてきた
「アイツ、イサのやつ……おかしいんですよ最近、ケイに絡んで、いつも喧嘩で、」
デイルは声をおちつかせていう、
「ここです、ここでケイは数日前“怪物をみた”といっていたんです」
「広いな」
ちょっとした運動ができそうな駐車場だ、
(“怪物ねえ”)
みるとそこには足跡もある、たしかに怪物のようなでかい、恐竜の足跡のようなものがくっきりと
「ここで数日前、突然大きな物音がしたんです、かけつけると、ケイがいてそれで彼が第一発見者に、」
アリソンとサニーまじまじと物色している、
「事件というのはそれだけ?」
「いいえ、それだけじゃないんです、数日前から奇妙な事が、事件というのちょっとずつ断続しておきていました女子の物が盗まれたとか、机に落書きされたとか、部室が荒らされていたとか全てが同じ犯人とかそういう噂も流れたりして」
しばらく三人はそこにいた、アリソンがそこいらをさぐっている。
「何か証拠は?」
アリソンは指でペンを遊ばせている、
「それが、さっぱりわからないんですよ、警察も細かい事はいわずに、ケイが犯人だと」
「魔女ね―」
アリソンは確信した、こういう強引なやり口ですんでしまうのは、魔女の仕業に違いない。
2日後、ケイはアリソンと二回めの遊ぶ約束をしていた。
柔道部はなにやらにぎやかにやっている
裏口からケイとアリソンが入っていった、すると誰かが木陰で手を振って待っている
コニーがいた、手を振る二人、
柔道部の道場の中ケイやアリソンの回りに後輩や友人が集まってきていた。
「おまちしていましたよ」
文化交流、そう、ケイはアリソンに伝えていた、
アリソンは、おとなしくコニーの指導をうけている、
「ここをこうやって」
「ふーん楽しいわね」
柔道は武道の基礎ですから、心と体を落ち着かせてくれる、コニーがそういった。
部活の人間は、疑いもせずアリソンを受け入れてくれた、
傍らでケイは談笑をしていた。
ケイは後輩と談笑に夢中に無いっていたが、ケイの視線の先にこてん、アリソンがころがされてきた、その様子はまるでダンゴムシ、受け身はとれているが必要以上にくるくると回る。
「ご、、ごめんなさい、格闘術は初めてで」
「あはは!!アリソンさん面白い!」
コニーが大爆笑をしていた
二人の訪問は、ここ数日の柔道部の雰囲気を一気に明るくしたようだ
だがそれもつかのまの事だった、すぐあとにどすどすと鈍い足音が近づいてきた、
「先生か?」
ケイが尋ねると、
「いや……今日は先生は」
後輩がいう、
キィイイーっとドアがひらく、そこにいたのはイサだった。
立ち上がりにらみ合うケイとイサ、しばらく睨み合っていたがケイがふいに口をひらいた
「空気が悪くなる、外にいこう」
二人は柔道場のある体育館の外にでて二人で話をはじめた
「えらい剣幕だな、イサ、お前のそんな顔、今まで見たことがなかった」
イサは微動だにしない、
「ケイ、お前、あの時、本気をださなかっただろう」
ケイには覚えがあった
「あの日、マナを奪い合うといってマナと付き合う許可をもらうためにに決闘をしたとき、本気じゃなかったのは、お前だけだ!!」
イサは構えをして向かってくる、ケイは不意打ちに体制をくずし、逃げる形になってしまった、
シュッと胴着のこすれる音、つかみかかるかとおもいきや、その手はこぶしを形づくった、イサがこぶしでつきをする、いわゆるぐーのパンチ。
「ケィィ!!コニーも不満を持っているぞ!!」
ケイは、ふとたちどまり、攻撃をせいいっぱいいなしつつ話を続ける、
「何がきにくわない、どういう事だ」
「お前、どうして最近本気をださないんだ」
ケイは軽く肩を手のひらでついて反撃をする
「関係ないだろ!!」
だがイサはすごい勢いで両手をつきだしてくる、
圧力でケイはつかみ合う事すらできず、バランスが崩れ、後ろへ、後ろへとおされていく、
やがて体育館の倉庫の壁際が近づいてきたころ、
「ぐおおお!!」
気付くとイサはあたりもしないでたらめなつきを繰り返している、よけるのも簡単だがイサはケイの足を踏みつけた!!
「いって……」
どすどすとイサはケイの腹を殴りはじめる、だが、ケイには全くそのパンチは弱々しいものに思えた、
「もうやめよう!!何がしたいんだよイサ、何がいいたいんだ、お前だって戦い方を変えた、接近して戦うのが好きだったのに、変わったじゃないか、
それと同じ事だ」
ケイは友人の行動に違和感しかない。
イサはケイをにらみつけている、
「なぜ、お前抵抗しないんだ……」
気付くとイサは泣いている、ずるずると脚の力を失い、イサはそのばで気をうしなっていた。
保健室にはマナ・ランバートがいた
イサは目を覚ましたようだった。
「もう、どうして喧嘩なんて……」
イサの面倒をみていたようだ、どうやら目に涙をうかべている、
「おう、マナ」
「お兄ちゃんとイサが喧嘩しているって委員長にきいてお」
そのまま沈黙が続いたがイサが口をひらいた、
「お前、ケイに、このブレス、わたすって、先に渡したのか?」
「しっとしてるの?」
ふと、マナは、イサの寝ているフトンがが異常に厚みが事に気が付いた
「どうしたの?なんかお腹のあたりが」
「な……なんでもない」
無意識右手を隠すイサ
(……あれ、俺なんで)
すっと、マナがさわろうとすると、イサが右手を隠そうとする。
「見せて!!」
「触るな!!」
マナが無理やりさわろうとすると
「やめろっ!!!」
イサの突然振り上げた左手の勢いで、フトンがはだけけた
「え!!!??」
マナの目の前にとびこんできた、掛布団のした、イサの手、それが、異常だった、
紫いろに膨れあがり、けむくじゃらになり、鋭利な爪が生えている、
まるでハリウッドの特殊メイクやcgのような、化け物、化け物の手になっている……。
「わっ、わっ」
のけぞり、ベットからころがりへたり込むマナ、重心をベットにかたむけて軽く腰をおとしていたので、バランスが崩れた、
「イサ……何よそれ、おどろかさないで」
丁度その頃、とある訪問者が校門から入り込んでいた
「おはよう」
まるで、そこにいるのが当然のようにふるまうもあきらかに異常な姿、
「怪物のにおい……こちらね」
こつこつと保健室に近づく人影、
廊下、マナからみて背後には、魔女の姿の謎の少女が近づいてきていた、
「お前は俺の味方だよなあ、ケイはなあ、ケイは、俺に、俺に何の相談もしないんだ」
こつこつと迫りくる、少女に気が付かない、少女はフードをかぶったまま、マナに近づいた、
イサは顔と腕をフトンで隠す、と同時に、パチンと音がした気がした。
「忘れなさい」
「マナ?……」
マナは隣のフトンで横たわっていた、
ケイとアリソンはやがて合流をした、
「いきましょうか」
「いこっか」
どうしても空気が悪い、二人は場所の移動を決意した。
だが二人背後には、怪しい影がせまってきていた……
校門をぬける女、
ぶつぶつとつぶやく深くフードをかぶり黒いコートのようなものをきた女
「アリソンオールドリッチ……アリソンオールドリッチ」
道場の外にいた一年が問いかける
「あのーここは柔道部ですが、失礼ですがなにか御用で?」
女は顔はよくみえないが、その骨格から20歳は超えてそうだった。
「ミリヘップバーンだよ!!」
「ミリ?誰」
<コトン、パチン>
「ああ、3年のミリさん、」
彼女がもっていた棒きれで音をたてると、さっきの対応がうそのように、一年は中へと案内をはじめた、目は虚ろで、まるで洗脳されたようだった。
ケイとアリソンが帰り支度をして後輩たちがそれを気まずそうにみていた、
そのちょうど最中だった、足音がする、コツ、コツ、コツ、道場のあるこの体育館に、まるでヒールのような足跡、どことなく違和感
違和感につられて皆が入口をみた、その瞬間ドアが何者かの手によって勢いよくひらかれる。
「ミリヘップバーンさんです!!」
突然に叫び声とともに勢いよく道場のドアがひらいた
杖をだし、道場のゆかにたたきつけ音をならした
その瞬間、そこにいた生徒すべてが催眠状態にかかる、
「ミリ・ヘップバーン……三年生」
アリソンが叫んだ
「危ない!!ケイ君」
その瞬間、ケイは背後から声をかけらた、ケイは、ちょうど入口の近くにいた
「ケイ君」
「パチン」
ふと気づくと、アリソンも体の力をうしない、その場に倒れこんでいた……。
「アリソン、あなただけ幸せなんて、許さない」
彼らはそうしてお互いの出会いと遊んだ記憶を失ったのだった。
数時間後、アリソンとサニーは仕事にでていた。その数分前、連絡がきたのだ、“怪物を見つけた”と、
ミュラーブーンから依頼があったのは5日前、ちょうど、彼女の依頼が試験の内容としてわりあてられたのは、偶然だろう。
初めて会ったとき、ミューラーは何度もいった、
「恨まれる覚えがない」
アリソンたちが急いで階段を駆け上がると、ちょうどミューラの職場、印刷会社のはいっている階、その室内に人影がみえた
人間は二人いた、人影が徐々にちかづいている、
異様な光景だ、怪物のようになった人間が一人、もう一人顔にお札のようなものをはった人間、
サニーはいう
「ミルモノ」
「ミューラ!!ミューラー!!」
どこにいるの!!
「はい……」
「サニー、敵をみていて、私は、ミューラーに説明する」
サニーが敵とにらめっこをしていた、じりじりと横にうごき、お互いの動向をうかがう、
相手の形、その姿は異様だった、ビデオテープの化け物、そう、なつかしい言葉、顔がビデオテープのようになって奇抜な怪物。
「ゆるきゃらか?」
その頃アリソンはミューラーに問いかけていた、
「ミューラー、ミルモノの正体がわかる?」
ミューラはおびえている、まるでアリソン言葉がきこえないようだった
「ミューラー、あなたが協力しないといけない、説明をしたでしょ、クリーチャーがどう作られているか、一人は恨む対象、一人はミルモノ、一人は怪物ミルモノは魔力の源“想い”を助長させる存在」
それでも彼女はだまっているが、やがて、
息をあらげ、涙をうかべ、せきをきったように語りだす、
「……二人の男と不倫をしました、札の男は夫です、ほんの遊び心のつもりでかまってくれないから、だから……不倫の二人にはただお付き合いしている人が他に一人いると、夫の事は内緒で、そして二人はいつしか怪物の姿に」
その瞬間勢いよく、何かビニールのようなものがサニーのほうに向かってくる、
ビデオテープの怪物が黒いテープをはきだしていた、
黒いテープはサニーにまきついた、サニーは渾身の力で声をだしていた、
「アアアアアアア!!!」
テープはその締め付ける力をつよめた、それと同時に、ごきごきと鈍い音、
アリソンは冷静にそれを見ながら、怪物のほうに近づく、その様子をみている札の男、
アリソンは怪物の肩をたたくと、また指をならした、
次の瞬間テープからだんだん煙が出て、やがて火がでる、ビデオテープのテープ部分をやきつくすとやがて火は消えた。
「ぎぃやああああ」
テープがちぎれ、怪物はまるで目的をうしなったようにあばれまわる、やがてビデオがぐにゃぐにゃと人の顔になる、怪物が人間に戻り、どさっと崩れさる
テープがまきついていたもの、それは人の形をかたどった木製の人形、20cmくらいの小さなものだった。
「魔道具だよ、身代わりの幻をみせる」
サニーは魔道具に自分の姿を投影させ、いつのまにかそこにおいて、自身はアリソンの影に隠れていた。
怪物はあわてふためく、そして、急激に自分の体をかきむしりながら、その姿を変容させていった、そして人間の姿にかわっていくと同時に、怪物の真上にホログラム映像のようなものが再生された、それは記憶、
「投影現象」
アリソンがつぶやいた、
アリソンたちの目の前に再生されたのは、言葉にならない、異様な場面、
二人の男女がいちゃいちゃとしている、まるでこれみよがしに、
「またあー」
女の方が男をつつく、おしゃれな店内、高そうな照明、おいしそうに食事をして向かい合っている、
アリソンつぶやく、
「探偵?」
だがしかしおかしな事にきづいた、二人はしきりにカメラをみている、カメラにきづいている、撮影している男の方をズームする、するとそれはビデオカメラの怪人だった、
「あれっ」
という声とともにカメラが撮影者をとった、アリソンには見覚えがない、
「彼は?」
ミューラ―に尋ねると彼女は答えた、
「別の彼氏です」
アリソンは困惑した、
「今僕らは、ふたまたゲームをしています」
アリソンはすべてを察した、聞くまでもなかった、
「ミューラー、あんたは主人をだまして、三人の男で遊んだのね……化け物になった男、そして、旦那、怪物になったのは、ゲームに耐えきれなくなった男、そういう事?」
「初めはただの不倫だったんです、でも魔女が、ゲームをさせてくれるって、報酬は、ずっとそのゲームを続かせる事だと」
あきれてため息をつくアリソン、
「魔法にはめられたのね、この魔法は、偏見や想いを増幅させるシステム、この三角関係は、ゲームの参加者か、あなたの夫を怪物にするための提案だった、
あなたは利用されたのよ」
アリソンはかなしげな顔をして、ため息交じりの言葉をはいた、
「他に魔女は何かいっていた?」
「なにも……」
ミューラーは全身の力をうしなってしゃがみこんでいたが、思い出したように弱々しい声でいう
「アリソンオールドリッチ、問題がおきたら、彼女をたよれと」
(私?なんで)
アリソンはつかつかとお札男がつったっていたお札をとり、やがて男も地面に崩れ去る、確かにそこには彼女の旦那の顔があった、
<パチン>
「全て忘れなさい」
そうしてすべてが終わったとき、サニーがぽつりという
「また記憶を勝手に消して、怒られるのは僕だぞ…」
そうしていると、また廃屋の音でごそごそと音がしている、こちらに近づいてくる足音、靴底の音だ、安心してみていると、人影の後ろに怪物の姿がみえた、おぶさっている、いや
かかえているようだった。
歩いてきたもの、そこにいたのはジョーだった、
「“怪物”を一匹捕獲した」
「うわっ」
サニーは思わずおどろいて、思い出す、(そういえば怪物はもういったいって、それがもう一人の不倫相手か)
「よお」
と自信ありげに挨拶したジョー、落胆して、かつめんどくさそうにサニーが応答をする、
「なぜここに」
「監視役、だからな」
数日前、アリソンは議長から命じられていた、
「正式なエージェンとの試験を始める」
どぎまぎする二人だったが、喜んでいた、その時はまだ……監視役の事をしらなかった、
そうして紹介された事件、それが今回のミューラーと、ケイの事件だった。
帰りの車の中、サニーが尋ねる
「デートどうだった?」
「デートって何よ」
運転しながらとぼけた様子に笑うサニー、助手席にアリソン
「だから、知らないってば」
「本当にいってるの?人間きらいの私が、そんな……」
アリソンは本当にめんどくさそうに、ポケットからだしたガムをつまんだ、
「どうしてあなたっていつもつっかかってくるの?」
吐き捨てた、だが少しすると神妙な顔をしていう、
「サニー、思い出せない事があるの」
前をむいていたが、横から見える景色に顔をうつした、
「はじめて笑った時の事よ」
サニーは何かをこらえるようにくちびるに力をいれた、
魔女局につき、いつもの確認をする
「クェーグは?何の映画の主人公?」
「魔女東西戦争」
魔法トランスの症状の確認、だがサニーは驚愕したようにいう、
「……アリソン間違っている、」
「はいはい」
サニーはいいづらそうにつづけた、
「アリソン、思い出してくれ、クェーグは、絵本の主人だよ」
「うそよ」
サニーはとたんに黙り込んでしまった、
車をでると小声でリリナも尋ねる
「あなた、被害者とデートした覚えがないの?」
「は?」
アリソンは一瞬、はめられている事をうたがった、
「あんたたち、何いってるのよ」
「アリソン、あなた記憶をうしなっているのでは?」
サニーがわりこんでいった、
「もういいよ、リリナ」
翌日、昼頃から、喫茶プリンで働く店員がいた。アルバイトのミリヘップバーンだ。
彼女はマジックが得意で店内で披露する事があり、今日もその最中だった
彼女はトランプを客にみせて、好きなものを選ぶようにいう、店内はわきたっている。
「マジック!マジック!」
「どれでもいいわよ、選んで」
観客はふいにその中から一枚を選ぶと、ミリはほかのトランプと一緒にすべてのトランプをテーブルの上にばらまいた、その途中でハンカチを広げるミリ、
テーブルにそれを広げると、ハンカチはもこもこと動き出す、ハンカチから一羽のハトが現れる、そのあとミリがハンカチをひろがり再びハンカチでつつむと消えた、
「おおおおお」
そして、さきほど客がえらんだものと他のトランプをシャッフルして、めをつぶってその中の一枚をひろい、客たちの前にさしだした。
客の反応はいまいち、
「これじゃないわよね」
ミリは何か考えたように、コーヒーカップを持ち出してその中にいまのトランプを入れる、ハンカチでコーヒーカップををつつむと、ハトがトランプくわえてでてきた、
「おおおお!!」
店内はふたたびどよめきだす、先ほど客が選んだトランプだ。、
するとどたどたとキッチンから怒鳴り声がひびいて近づいてくる
「ミリ!!ミリはどこなの!!」
どたどたとキッチンから音がする、
「ホールです、マジックを」
別の声の主が答えた、
「あの子また!!」
バイト長の幸子だった、
「またこんな所で遊んで!お客に迷惑じゃない」
軽くミリにげんこつをする、ミリはこの女が嫌いだった、
客たちもばらけてしまったが、
「まあ、まあ、いいじゃないか」
ちりぢりになる客、だがそこへミリをかばうただ一人の好青年がいた、彼はいつもミリをかばっていた、よく見かける顔、名前はしらない
営業がおわり、片づけも済んだ頃、ミリは帰り支度をしていた、時刻は午後8時をすぎている、帰り支度だ、勢いよくロッキーをあけるとクサイ、
ロッカーの中、荷物の上に雑巾がのっていた、誰もが知っている、幸子の仕業だ、
「こんなことを気にしている場合じゃないわ」
魔女局―
<リーゼ・ピリカの部屋>あの女室長からはうかがいしれないかわいらしい看板がかかっている、
彼女の部屋だ。
アリソンは目をつぶり、シャワーを髪から体に流していた、シャワーの最中だ、リリナが脱衣所から話しかけている、
「アリソン、それでね、妹がさ」
「うん」
アリソンは適当に話を受け流す
「人参の皮をね、延々と向くのよ、それで母さん、おこっちゃって、私がとめてもね……で、妹はなきわめくの、その姿がおかしくって」
「本当に妹の話しがすきよね」
リリナは突然驚いた顔をする
「当然じゃない、姉妹だもの」
「うっ!!!」
突然、アリソンが脱衣所にでてきた、背中を抑えている、
「アリソン、痛む?」
「心配しないで、」
リリナは慰めるようにいう、
「この世界にきたせいで、あなたは苦しんでしまった、元はといえば私が」
「やめてっていってるでしょ、あなたはそうして満足するのでしょうが耳障りなのよ」
覚えているわ、ナイフは、自分に突き立てた、あの日、アリソン何かを決意してその呪文を自分に課した。
「うっ」
倒れこむアリソン、
「大丈夫、ちょっと頭痛がしただけ」
アリソンは、脱衣所で服を着始めた。
「はあ……」
瞳の奥、記憶がよみがえる、リリナと人間の世界に逃げ出したときの記憶
「なんでこんな時に」
15年も前の事、
二人は魔女界を抜け出し、二人だけで人間界と接触を図ろうとしていた、
リリナが叫んだ
「もう、戻れないわ!」
そこにはわかかりしき日のリリナ、今もかわらぬ姿のリリナ、二人は走っていたが、
後ろには、追っての姿があった、2メートルはあろうかという大男、
「追いつめられたか」
必死な形相のアリソン、
その男が、胸についた太鼓をならした、数秒後、大男の目の前にふっと、野犬のようなでかい怪物が召喚された。洞窟の中、暗闇で表情がよく見えない、だが
<フゥフゥ>と、荒々しい息と、舌を垂らしたような生々しい音がひびく。
「逃げて!!」
とっさにアリソンはリリナをかばった、このころのリリナは、まだ生身の人間だったようだ、アリソンの後ろで自分の身をかばい、頭にフードをかけておびえている、
「あなた、魔法が安定しないのに」
「どちらかが!!」
アリソンは、背後のリリナに怖い表情をみせていった
「どちらかが、生き残れば、あなたの願いは達成される」
「……そんなの」
リリナは、下をむいてしまった
「私が、あなたを巻き込んだの」
「そんなの、関係ない、いまさら」
アリソンは、リリナをつきとばした、思わず、洞窟の外までほおりだされたリリナ、だが、リリナは振り返った、
リリナは何かを決意したようだった、フードを深くかぶり、アリソンをつきとばした、
「わたしが……やる……私の責任だから……」
「リリナ!!私が!!あなたには妹も、家族もいる…………帰る場所がある!!」
リリナは振り向かなかった
「そう、私には大事な人がいる、あなたも、その一人なのよ……」
アリソンは、彼女の想いをしって逃げたした、時代は暴動のさなか、そんな中で魔女界から逃げ、人間界へ来た彼らに味方などいなかった
―どちらかが逃げなければどちらともやられる―
そんな考えで自分を納得させ、アリソンは全力で洞窟をあとにする、
リリナのいた場所が遠くに見える頃、森林の中でアリソンは近くにとめてあったウマの背中にのっていた、ウマはなかなかいう事をきかない
きっと、追っての馬だ、やたらとどでかい。
「ぎゃあああああ」
アリソンは振り返るものかと思っていた、だがその大声、男の声だったが、それにつられてつい振り返ってしまった、
「……洞窟のほうだ」
ふとアリソンに記憶がよみがえる、リリナの言葉
<人間も、魔法使いも、きっともっとやり方があるはず>
暴動の中、疲弊する人間界、魔女界、そして魔女区、そんな中、何かの可能性を感じさせてくれた、リリナの言葉。
「このまま……にげてたまるか!!」
アリソンはウマを手なずけると逆に走り出した、リリナのもとへ、
ウマの歩みは早く、すぐ洞窟の前にたどり着く、
「ウォォッォ」
男の雄叫び、だがそれしか聞こえない、アリソンは恐る恐る中をのぞいてみる
「リリナ!!どこだ、リリナ!!」
そこには倒れる男とリリナの姿があった、男はまさに、虫の粋、
「助からないだろうな……」
奥にへたり込む人影が見えた、
「よかった、リリナ―」
そう言いかけた途端、すぐにアリソンの背筋に寒気が走った。
倒れたはずの男が起き上がる、だがそいつは白目をむきだしにして、まるで、意識がない、だがしかし、尋常ではない魔力をはらんでいるのを感じた、
「ウゴゴゴゴ」
“殺意”だ純粋な殺意、もはや目的や意思、魔女、魔法使いとしての、秩序を欠いている……
アリソンにいやな考えがよぎる
「この異常な魔力……魔法トランスか!!」
“魔法トランス”と呼ばれる現象、集団の想い、それを糧に魔力はうまれ、魔術となる、
魔法の使い手の意識、想いが、大魔導士を逸脱し、個人的な欲求に走ると暴走し、トランスが起こる、大魔導士はそう言っていた、
正常な魔術が代償にするのは、人の想い、共通の意思、だがトランスが代償として使うのは、自身の記憶、正常な意識、時に妄想や幻聴も聞こえる。
大男が叫んだ、大男はすでに人の形状をつくりかえ、異常な状態に変容しようとしていた、
「俺をばかにしたなあああああ!!」
「リリナ!!よけて!!」
アリソンの呼びかけは遅かった、男の腕は変容し、異様にでかい斧の形をとると、
リリナの首元にせまってきていた、
「ふう」
ふいに自分の息遣いで現実の世界に戻る、
そうして、アリソンは目を開け、シャワーを終えた。
リリナが魔道書である理由、それはアリソンの記憶の中―
ふいに脱衣所の脱ぎ捨てられた服の上、魔道書からホログラムのリリナがとびだす、
「長いよ」
アリソンは答えない
「アリソン?どうしたの」
「何…これ…いつから」
見覚えのない魔方陣、だがそれはアリソンの背中に深く、傷跡として刻まれていた、
アリソンはいまさっき見たことすら忘れている、
「アリソン、それは……」
リリナは何かを言いかけながらも、何か悲しげな顔をして言葉をのみこんだ。
ケイは部屋でめをさました、
「いつからねてたっけ」
みると時計は3時をまわっている、
(俺、昨日どこか別の場所にいたような、今日は昼寝でこんな時間までねてしまったのか)
「うっ」
頭痛がする、
(昨日、どこかへでかけて……)そのあとの記憶がない。
ケイがしばらくぼーっとして、意味もなく机で、ノートを広げ、
授業の予習をしていると、下の階から声がかかる、
「お兄ちゃん、お兄ちゃんにって誰か訪ねてきたよ」
マナの声だ、
「男の人スーツ」
「スーツの男?」
だっだっだっだっだ、階段を駆け下りるケイ、
ドアホンのモニターごしに男の姿をみる、
「あの、なんのご用件ですか?」
「魔女局の人間だ」
怪しい、面倒になったケイはドアをあけた、マナには何かあったら警察に電話するように告げて、
外に出た、<ガチャッ>ドアをあけて様子をうかがう、
「はい、なんのごようでしょうか」
そこにはスーツをきた見知らぬ男性がいた、
ケイは再び自宅に帰ると、机の左端に名刺をおくと、もう一度眠りにはいった、名刺には、魔女区と、男性の名前が書かれていた、
ジョー・プリケット、
やがて夢の中にはいっていく、
「アリソン書店」
そこは、書店の中、いつか訪れたような、重要な事のような気がする、
「デートしませんか?」
夢の中のケイが、もやがかかった書店の店員に尋ねた、
「アリソン?」
ケイはそういって自分の声で目をさましたが、そのままねてしまった、
その頃アリソンは自宅でくつろいでいた……、
しばらく無音だったが自室の部屋のポストに郵便が届く音がした、
「うー……」
めんどくさそうに立ち上がると、ポストに向かう、
「……ミリヘップバーンをしっているか」
送り主不明の手紙が入っていた、
アリソンはしばらくくつろいでいたが、午後4時を迎えると、上着をきて準備を始めた、
時期は秋、肌寒いときもあるようになってきた、今日は、ある人の元に尋ねる決意をしていた、
外に出る途中、黒い子供、研修生に話しかけられた、
「リーゼさんがおよびです」
アリソンは仕方がなくリーゼの部屋、室長室へいった
「何よ」
「試験だが、試験は中止の可能性もある」
アリソンはむくれた、情報がぶつぎりすぎる、
「なんで?どういう意味?」
「敵の魔女は、一人、それも、その時間が長すぎて、魔法トランスの可能性がでてきた」
リーン連邦国、グリーズ市、魔女区、
その一角、地区名3-2この地区をとりしきるオババとよばれている女性、
アリソンはその女性の部屋を訪ねた、小さなボロ屋だ、
ドアをたたくと老婆がでてきた、
「アリソンかい、おはえり」
笑顔でどうも感じがよさそうな女性だった、
「オババ、気になる事があるの、あなただから尋ねるのよ」
アリソンは少しもじもじとしてたずねる、
「水晶使える?」
「アリソン、お前は昔から水晶の占いにたよって、言いたいことがあれば、尋ねればいいのに」
オババは呆れたように答えた、やがてアリソンを、入れ、といって部屋の
中に案内する、
アリソンを残念そうな瞳でありそんを流し見して、
「何を訪ねたいんだ?」
といった、アリソンは答えた、
「絵本の主人公の事」
「またサニーと喧嘩したのかい」
おばばは水晶を見ながら話しかけてくる、その手はせわしなく動いている、
「アリソン、お前は確かに記憶をうしなっていたようだ、トランスの可能性もあるがケイ君の事も忘れている」
「ケイって依頼者の?」
オババは答えなかったがそれが答えだった、
「アリソン、お前の背中、呪文があるのを覚えているか?」
アリソンは静かに答えた、
「これ、何?」
「そうか、そのことも……」
オババはすっと立ち上がり部屋のドアの所をきえた、仕切りのカーテンが揺れる、
やがて数分するともどってきて、一冊の本をアリソンの座る机の上においた、
「児童書?絵本?」
「アリソン、その本はな、以前心を許していた人間にもらったもの、その主人公が、お前とサニーと間で合言葉になった、トランスをたしかめるための、心当たりはないか」
「うっ」
頭痛がした、
「水晶に頼らず、確かめなさい、お前自身でな」
アリソンは夕方、ある決意をしてケイの家を訪ねた、
(自分の記憶を探らなければ)
マナが出る、
「はい」
「パチン」
靴を脱ぎつかつかと上がり込む、マナはアリソンのあとをおっていったが、マナの名前が書かれた札のかかる自室に消えていく、
「ケイランバートはいない、か」
アリソンはリビングで叔母という女性とであう、
「あなた、だれ?」
驚愕の表情で頭をぼさぼさにした女性が何かしらののみものを飲んでいる、
「魔女局の人間、あなたがケイの叔母?」
「そうだけど」
沈黙が流れる、
やがてアリソンは叔母と対面にすわり、リビングのテーブルで話をした、
叔母は催眠にかかっているようだった
叔母が何やら重く厚い本、どうやらアルバムのようだ、それをテーブルにどっさりともってきた、
「ケイランバートは暴力がきらいだとありますが?」
アリソンが質問する、
「ケイはねえ、人も殴れない、自分の意見すらいうのも躊躇するような気の優しい子で」
アリソンはひっかかった、
「なぜ柔道を?」
「なんか、妹がね、マナランバーとがテレビをみてわらったって、それで、それから柔道に熱中してねえ」
アリソンは質問を重ねる
「実の両親は?」
叔母の瞳に涙が流れた、それにきづき驚くアリソン、
(なんで……)
アリソンは質問を重ねていくと意外な答えがあった
「ケイも一度暴力をふるった事があった」
「ケイの暴力?」
アリソンは意外だった、今までの会話からして、そんなそぶりはなかったのに、叔母はつづけた、
「近所に悪ガキが引っ越してきたのよ」
「悪ガキ」
アリソンに心当たりがあった、小さなカバンを開き、資料を探る、
「イサ・キースリー」
「そう」
叔母は、少しそのまましゃべるのをためらっていたので、アリソンは再び音をならせて魔法をつかう、叔母は涙をふいて話はじめた、
「イサキースリー、彼は、彼の家族は魔女局の関係者だった、かつて彼の祖父が戦争中に魔女局に派遣されていて、その関係で、彼はしばらく魔女局にいた、そして悪さばかりする
イサを、ケイが叱って、それから友人に」
「そんな経歴は……」
アリソンは驚いた、だが叔母の表情にさらに驚いた、こちらをみて目をみひらいている、
「あなたたちは一度ケイに会っているはず、そしてイサの経歴を、消した」
アリソンは、魔道書をとりだした、
<リリナ、知ってる?>
「…………」
リリナはだんまりだった、
「ケイが一度だけ落ち込んだ事があったわ、ケイの母親が、暴動の中で、暴動に反対する組織に所属していた、そこへ、オズワルドの支持組織の過激派が乗り込んできた」
いくつか心当たりはある。
「あの日ケイは、怪物をみた」
「怪物?」
資料を広げるも、そんな古いものは渡されていなかった、今回の“怪物”にかかわるものしかでてこなお、
「オズワルドの支援組織、ピーキーズ、彼らの子分が独断でケイの母を遅いにきて、母はそこで、暴行をうけた」
アリソンは言葉をうしなって、ひじをテーブルにおいて、しばらく思考が停止していた、
(ケイはそれをみていたのか?)
「ケイは暴動の中、クローゼットの中にかくれて様子をうかがっていた、音がやんで男たちがさると、ケイの目の前にあったのは、倒れる母親と、立ち尽くす怪物」
アリソンは言葉をかみ砕き、整理していた、
「ちょっとまって?数年前にケイが暴動に巻き込まれて、その現場をみた、そして、ケイはさらに人を傷つけることを恐れ始めた」
うなずく叔母、
「それで、ケイはしばらく落ち込んだと?ケイとイサの関係に変化は?」
「マナはあの頃よくみたといっていた、公園で落ち込む二人を、ケイを、イサは、ケイを慰めるすべをしらなかった、あの時、二人の距離が少しはなれた気がした」
アリソンは最後に聞きづらい事だと前置きをして尋ねる、
「なぜ、ケイはそんなにも人を傷つける事を恐れているの?」
「ケイは―ケイは母の、ユズ・ランバートの思想をうけついでいる、“人にはいい面も悪い面もある、だからこそ傷つけあうよりも先に知るべき”だと」
そして続けた、
「その言葉とあの日の怪物が、今もあの子の足枷になっている」
叔母はとても悲しい表情をした、
すでに時計は7時を回っている、ケイを鉢合わせるのもなぜか気まずい、
(ケイランバートは、魔女区の少年を殴り、それから仲良くなった)
深くしりもしないこの少年になぜか、ひどく同情している
魔女が、なぜこんなにも“人間”に感化されているのか、
そもそも、魔女が、大魔導士以外の事で心を奪われてはいけないのだ、
叔母の催眠をとき、眠らせて家をでた。
つぎの日のあさごろ、ケイは朝起きて携帯をみて歯磨きを始めた、
ケイは今日ある人物あうと決意して、約束をしていた。
家をでて向かう先、自分の家の近くで待ち合わせ場所を指定した、
「ここだ」
喫茶ピープー、
喫茶店で最近はまりはじめたコーヒーをたのむもつぶやく、
「まずい」
気付くと足元に革靴、視線が上にいくとスーツのジョーがそこにいた、
「こんちは、ジョーさん」
向いあう同じテーブルの席に座るジョー、
「君、書店に心当たりはないか」
唐突に話をはじめるも、ケイは動揺した、なぜこの人が夢の事を……
「やはりな、君はアリソンと接触している」
サニーは大きな黒い鞄を肩からおろし、中を探りながら話かけてくる、
「君は、怪物をみたと発言したらしいね、これに心当たりがあってね、まずは君に信用してらわなければならないだろう」
ケイは驚いたが、そういうとジョーは続けて説明を始める、
<太古の昔から、魔女は思いを力の源にしている>資料をさしだした、
「これはしっているね?」
(聞いたことがある、魔女は思いを魔法の元にすると―もっとも魔女について一般人は多くをしらないが)
コーヒーをおいて話をきき続ける、店員がきたが、ジョーはケイと同じものを、といった、ケイはパンケーキを食べ終わっていた、
「彼らにはいくつか魔法の手段はある、そのひとつに“クリーチャー”<人造怪物>という術がある、それは人間怪物の姿にかえる事ができるんだ」
ケイは熱心に話をきいていた、ばかばかしいが、今は、このもやもやした気持ちの出口がほしい。
「君は魔女による洗脳事件をしらないか?」
―魔女による洗脳、戦争の時から今まで、ニュースでよく話題に上ることがある。
「洗脳のひとつに、“クリーチャー”という魔法術があるんだ、これはある種の洗脳なんだ、君は、これに巻き込まれている可能性がある」
怖い顔をして手をくんで、ジョーがケイをみつめる、白い短髪がよく見えた、
「洗脳……、ちょっと待ってください、話が唐突すぎて」
みてくれ、といわんばかりに、ジョーは手元の鞄から資料を取り出し、ケイに渡した、
そこに乗っていたのは、3人、人物が三人まとまってクリップでくくりつけられている資料、その3人の経歴、写真と、実際の新聞記事、加害者二人と被害者一人、
「“クリーチャーという魔法”これには、役がいる、“ミルモノ“という役、第三者を装い、魔女の想いを高ぶらせる役割、“怪物”という役、これは不満をや鬱憤をかかえるものでなくてはならない、そして、想いをぶつける“相手”」
ため息まじりに言葉をきる、
「ケイ君、少なくとも君は“人間側”に二人の敵を持っている事になる」
ケイはつばを飲み込んだ、
ケイは話題をきって、自分の意思を思い切ってぶつける、
「……あの、最近知らない書店が、夢に出てくることがあるんです、まずはそのことについて……もやもやして」
「ああ、すまない」
ジョーは小声でケイに耳打ちをした、
「君が知りたいのはアリソンの事かい?アリソンオールドリッチは内のエージェントの見習いをしている、君が望めば、再びアリソンと会わせてやろう」
「アリソン、それが、夢に出てくる少女の正体ですか?」
ケイが最後に尋ねた、
「アリソンという人が僕に接触したのなら、なぜあとになってあなたが接触を?」
「初めは彼女に君の事案はまかされていた、だが、もっと大きな“敵”の正体が発覚しつつあるんだよ」
苦笑しながらジョーはいった、
そのあとケイはいつも通り公園に立ち寄り待ち合わせで、コニーをまった、今日あった人物、ジョーの言葉をすなおにうけとるべきか、そんな事を考えていた、
コニーはその様子を見ながらかける言葉を考えていたが、最後まで切り出せずにいた、二人だけの野球にも身が入らず、コニーも気を使って本気はださなかった、
「じゃあな、コニー」
寂しそうにみえたケイの後ろ姿に思わず口をついた言葉が、ケイをある種の決心に駆り立てた、
「アリソンさんとは、どうなんです」
夕闇の室長室、リーゼとサニーは向いあう、
「いつまでにげるの」
「アリソンは病気だから」
ため息まじりのリーゼ、
「それってあなたのいいわけじゃないの」
―深夜をすぎて、夜中のある場所に男がたちつくしている、サニー・ジョンだ。
ここは魔女区、かつて暴動の標的とされた場所そこにサニーはいた。
サニーにはアリソンの言葉がひっかかる、
<思い出せないことがあるの、初めて笑ったときのことよ>
アリソンの口元、見覚えのあるポニーテール、小さなころの記憶、
「アリソンは“最後にいつ、俺を思い出した?”」
とある墓石の前で立ち止まる、背後から声がかかった。
「またここか」
ジョーだ、ザザっと砂利をふむ音、すぐあとに立ち止まるこちらに目をやる、
ジョー・プリケット、前髪短髪でやや無造作にのばし、サイドや後頭部はベリーショート、あごひげが少しある、眉毛はこく、端整な顔と絶妙にバランスがととのっている、
「ジョー、お前は、いつだって、あの時だって、アリソンをまもってくれなかった」
勢いよく襟元をつかんだので、ジョーのアゴをなぐった形になってしまった。
「何がいいたい」
ジョーがサニーをにらめつける、
「お前、彼女の症状を遠回しになおそうとしているだろう」
いいかえしたのはジョーのほうだった
「なぜ彼女の“症状”を彼女に伝えない、俺を憎むのは構わない、だがあの日、お前は俺をなぐった、アリソンを受け渡すあの日……アリソンはお前が守るといった、それくらい守れ」
うなだれて地面に手をついた格好になるサニー。
「お前はいつだって」
うなだれたまま力ない言葉をはく、
ため息をつくジョー、
「こういう事はいいたくなかったが、俺はいつだって、シムに敵対していた」
「なに!?」
サニーははっと顔をあげる
「お前、10年前のあの日、アリソンを“向こう”に渡す決意をしたあの日、お前が、シムをつれてきたんじゃないか、いじめっ子の代表のシムを」
「俺は呼び出されたんだ、俺はあの日、シムと完全に縁を切る決意をしていた、親同士の関係で、いつもシムがやることをとめてきた、だがそれも、もう限界にきていた
丁度そう思っていたとき、あいつから呼び出しがかかり、場所を指定された」
サニーがいまにもつかみかからんとしていう、上体だけおこして、ひざをついて叫んだ、
「それが、アリソンを受け渡す公園だったってか?」
「その通りだ」
サニーは喉の奥で何かをこらえるようにうなる
「おまえええ……自分に都合のいいことを」
「お前がどう思おうとかかまわない、だがアリソンは、今でもあの時の記憶を失ってるんだぜ、アリソンがどう思うか、それだけだ」
そういうとジョーは立ち去って行った、
その日の週末、ジョーに案内され、ケイはアリソンの知り合いの元にいく事になった、じかんは昼過ぎ、1時ごろ、
ジョーのあとを案内されたのは、近隣の魔女区、ジョーが身分証明をだすと、簡単に奥に通された、
「オババはアリソンの一番の相談役なんだ」
そういってジョーはケイを小さな小屋のような家に案内した、
「ここだよ」
ドアをたたくと老婆がでてきた、
「やあ、いらっしゃい、ケイランバート」
「おじゃまします」
奥の居間に案内される、老婆は肩に羽織をかけ、部屋はこぎれいにしてある、老婆の羽織とにた模様のカーペットが敷いてある、真ん中には四角い机、これも似たような模様の、テーブルクロスが
かけられていて、机の上には様々なお茶の葉の缶がおいてある、壁にかけてある絵画は魔女のもの、こちらをみて寂しそうにしているが、その中に書かれている模様が目をひく、
魔女が魔方陣を欠いている様子だろうか?風通しもよい、火の光もあたる、広くはないが、居心地がよさそうだ。
ケイは何か、懐かしい雰囲気を覚えた、
肩に紋章のある老婆、見覚えのある気もする、そしてケイは驚くべき話をきいた、
「私はアリソンの……この世界での友人といった所だ、魔女区であってな、それで、君と仲良くなること、その、デートを進めたのは私だ、あの子が不憫でな」
「デート?」
ケイをまじまじとみていう、そして、手元にある水晶をみて、やはり、というような表情をみせた。
「君と一度会ったことがある、交差点でぶつかった」
ケイはしばらく考えたが、やがて水晶にうつる映像を見て悟った、交差点、荷物、急いだ様子で食品を道路にぶちまけてしまった老婆、
「私たちは魔女区から外に出るときは急いで紋章をかくさなければならない、つけていなければ罪に問われる事もあるしね」
ケイは少し間をおいて答えた、
「ああ、あの時の!」
「君は迷わず私を助けた、あの時、私は君の事を覚えていて、アリソンに話をきいて、仲良くなることを進めたのさ、だが、こんな事になるとはね」
ケイは喉につまったものにふれるような気分で尋ね返す
「こんな事、とは?」
「君ら、ああ、アリソンとケイ、君らは同じ魔女に魔法をかけられているはずだ、記憶を、もっていかれたね」
ジョーをみていう
「ジョーや魔女局も把握しているはずだよ」
ふとジョーを見ると何かをさとったようにこっちをみている
「……」
ケイもアイコンタクトで返した、
「記憶を取り戻したら、アリソンを頼むよ、アリソンは、ひさしぶりにわらったのさ」
「ひさしぶりに?」
そのあとも皆で談笑をしていたが、叔母が切り出した、
「今日ここにきてもらったのは、彼女の事だ、彼女と一緒に遊んで、記憶を取り戻す足がかりをつくってほしい、そのあとの事は魔女局が魔法をつかい、記憶を取り戻す手立てを
とる、もしかしたら今日中に何とかなるかもしれない」
ジョーがいう
「二人で遊んでこい」
といって映画館のチケットと少しの代金をケイとアリソンに渡した、
二人は映画にいくも言葉はなかった、だがアリソンが場面場面でリアクションを大きくとった、すると、
ケイはくすくすとわらってしまった、
「ごめんなさい、こんなz級映画で純粋な反応するのが面白くて……」
二人だけで喫茶店にはいる、
「何話しましょう、何はなす?」
「うっ」
突然頭を押さ苦しみ始めるケイ、
驚いたアリソンはジュースをこぼしてしまった、ケイはすぐに体勢をなおすと
「大丈夫です」
といいながらアリソにハンカチを渡した、
(……この子、やっぱりあったことが……)
時間は午後4時を回っていた、アリソンはつぶやく、
「時間だ」
アリソンは帰るしたくをするかと思いきや、ケイに語り掛けながら両手でケイの右手の手のひらに
何かを手渡す、
「これ、きっとあなたを助けるわ、多分私は記憶を消す前にあなたに助けられた、あなたにもきっと、
今回の事の解決の糸口があるはず、あなたの過去にね」
カフェのドアが開き、ジョーがかけつけた。
2日後の事だった、あさがたアリソンの元へ一通の手紙が届いたことから、事件は急変した、
「裏切りものをみつけた」
アリソンは急いでリーゼの元へ、ノックもしないで部屋に入った、第三エージェンと室長室、
「どうしたの」
「敵の居場所はわかっているんでしょう」
リーゼは忙しそうなふりをしている、
「こんな手紙が届くのよ」
見ると何やら待ち合わせ場所がかいてあるようだった、
「アリソン、これは」
「いくわ」
リーゼが慌てた様子で止めようとした、
「アリソン、やめなさい、今回の事件は、わからない事がおおすぎる」
「このあたりのはずだけど……」
待ち合わせ場所で、背中の住居にもたれかかる、アリソンがしばらくそうしていると、対面で建物に
寄りかかる人間をみつけた、フードをかぶった、
手紙に投函した人間の人影だ、間違いない、
「逃げた」
アリソンは急いでおいかけていった、
裏路地に入ると、その人影の姿がない、
どうやらおいてかれたようだった、
なんども姿を見失いながらも、人影の様子をあたりの住民にきいてまわる、その繰り返しだった
アリソンは、気づけば閑散とした住宅地に迷い込んでいた、
二人の人間が前を歩いている、
うしろから声かけたふたりの女の影、だがふたつの影はゆれてぼやけている、
「魔女か……」
住宅街の中に二人は消える、
「女は?……」
気付けば一人の影が消えている、
「あなたね、ケイランバートを苦しめているのは」
赤い帽子の女性、見るからに怪しい、直感的に、アリソンはそれが魔女だと認識した、
「……」
肩をたたくも、女性は何もいわずにうつむいている、
ふっと、後ろに気配を感じた、
女がたっている、
「魔女は二人いたのか」
ふりむくと前の女、は霧のようにきえる
「幻影魔法、にぶったわね、アリソン、」
そういって、後ろの女はアリソンの首をしめた、
「ミリなんていない、私の名前、思い出してよね 」
夕方ごろ、
サニーは自宅で魔道具の訓練をしていた、ナックル型の魔道具、かつて、得意としていて、ジョーとよく競い合った、ふとそんな思いでがよみがえる……、
右、左、と腕をつきだしてパンチをくりだす、間接と筋肉がなる、そのたびに魔道具は怪しい光を放つ、
<ブルルルル>
携帯の振動音、
<ティロリロリン>
机の上の携帯がなっていた、アリソンからメールだ、
そこには住所と、助けての文字。
「アリソン!」
<ドタタタッ>
想像しく準備をしてサニーは部屋をでた、
ケイは家で机にむかって腕をくんでそのうえに顔をおき、眠りについていた、夢の中、ケイはあの瞬間にいた、怪物を初めてみたあの頃、だが、
あの怪物、長い腕、短い胴体、ワニのような顔、そのうしろに、もう一匹怪物がいた、
「ひさしぶり」
怪物はたしかにそういった、
場面はとたんにうつりかわる、自分は懐かしい場所に向かおうとしている、それだけはわかった、
霧ともやがかかり、やがてその場所への道がひらく、きりともやがあいて、道ができる、その先に自分の向かうべき場所がある気がした、
「アリソン書店……」
ついに夢の中でそこにたどり着いた、ぼろい看板、綺麗に整頓された入口、さび付いた鉄骨、
「ん……」
目を覚ましたケイはその日ある決意をした、ブレスを返しに行く決意だ、今日は夢の中のあの場所にたどりつける気がする、その前の夢の記憶など、とうの昔にわすれていた。
<キイッ>
ケイは気まぐれに家をでた、そして隣町、すぐ近所の閑散とした商店街をたどる、どうやら夢の道を覚えていたようだ、やがてたどりついた、
「あった……」
ケイは書店にはいると、アリソンの姿はなかった、
「夢の中ではアリソンさんが店員で……」
ケイは当たりをみまわしてやがてレジの場所へといくと、その机にアリソンからうけとったブレスレットをおいた、
「やはり僕には信じられない、もう少したしかめないと」
そういってケイはその場所にブレスをおいて去ろうとした、
<まって>
虚空から声がかかったような気がした、
「そうだ、アリソンはいつも独り言を……」
ケイは、置いたブレスレットを見つめた、
外に出ると、人影がみえた、こつこつとこっちに近づいてくる、だがその姿が異様だった、
顔面に大きな札、ノートの切れ端のようなものをはりつけている、前がみえるとは思えない状態で、
こっちに歩いてくる。
「なんだ、お前」
ケイは思った、
(ただのコスプレか?それにしても、この格好は……)
お札の男、そう、お札を顔面につけた男が、せまってくる、
「……」
すると、なにかから上空からおりてくる、その陰がみえた、影はどんどん降りてくる、その速度は階段を駆け下りるとかいった、そんなレベルではない、いままさに落下してくる、
そんな感じ、
<ズッドオオオオ>
上空からとびおりて着地する“何か”
ケイは思わずつぶやいた、
「怪物……」
(俺はこの怪物を見たことがある、これは学校で……)
醜い顔、ワニの口にゴリラの顔面がついたような感じで、腕や足は人間の3倍はありそうなくらい太い
背は低く、馬の尻尾がついている、前傾姿勢で、肩と股間には人間の鎧がついていて、汚れ具合からみても、いままで戦場にいたような兵士のようだった、右腕の根本は、肩というよりその後ろ、肩甲骨のあたりにあった、そして胸のあたりからは、別の何かが生えている、人の腕のようだが、
アンバランスで小さい、
怪物の胸元が突如うにょうにょと変形して何かがでてきた、怪物の姿と、イサがかさなる、
<ゴニョギョニョ>
「イサ……」
出てきた何かに絶句した、顔、顔がそこに現れた、突如あいた胸元からイサの顔がでてきたのだ、
(どうすれば、どうしよう、本当に魔女の、魔女のせいで、魔女がかかわっていた)
足がうごかない、だが、怪物の異様さとだした音に我に返る、
「ぐるるるる」
ケイは次の瞬間には、そこから走り、にげだしていた、
動揺して震える手で、携帯を胸元からとりだし、ジョーに電話をかける準備をする、
(ジョー……かかってくれ)
何かの飲食店の裏手にかくれたケイ、足音がきこえてびくっとした、
「あいつらか!?」
だが通り過ぎたのはスーツ姿の男性だった、
<トゥルルッル>
電話がつながった、誰かがでたようだ
「はい、はい」
「……ジョーさん!?ジョーさん!!」
ジョーだ、
「あの、怪物って本当に!!イサが……」
慌てた様子で今あったことや、怪物の正体について聞くも、会話ができない、そのうちジョーは無口になり、それに気づいたケイがあやまる
「すみません、とりあえず落ち着きます」
いいか、と前置きして説明をはじめる、
「説明しただろう、怪物の事、その魔法の由来を、恨みを持つ存在“クリーチャー”と“ミルモノ”がいるはずだ」
ケイは言葉につまる、
「……」
「君は、怪物の本人やミルモノに心当たりはないか?」
ケイは、深呼吸をして考えた、
「ミルモノの魔法をとくためには、ミルモノの不満をよみとり、口にだし札をはがす、それで解決する場合がある」
「実は、ちょっと気付いた事が、怪物の方は……サニーだった」
ジョーは何かを悟った、
「ミルモノはコニーか?」
沈黙のケイ、
「怪物のほうは簡単じゃない、不満や不服をしったとしても魔方陣と魔術が必要だ、だから、もし
ミルモノだけを元に戻せるなら、それだけでもやってくれ、あとは俺が合流して解決する」
ジョーは最後につけくわえた、
「けして無理はするな」
<ドダダダダ>
走るケイ、段々と人気のないほうに移動している気がした、いつのまにか、ケイが振り返る先にお札の男が立っている、
「逃げるな、あの方の敵をするものよ……」
距離があるはずなのに、声が聞こえる、
(あの方?)
「怪物はどこだ?」
薄気味悪い笑いをして札の男はいう、
「何のことやら」
ケイはさっきから不自然なうごきをしている事に気付いた、男をふりかえると、男は何かの影からこっちをみている、だが直接近づいてはこない、
その時ケイはとっさに今までと違う動きをしてみた、ふりかえった瞬間、こちらも物陰に隠れて男に近づいた、
男につかみかかろうとした、その瞬間、
「無駄だ……」
微動だにせずたちつくし話す札の男、いつのまにかまた距離のある物陰にいた、
「くっ組手するか?コニー」
<びくっ>
おぼええがあった、このおびえ方、そして、いつも物陰にかくれて、何かをうかがう様子、
「その声、コニーだろ?」
そういうと、男は初めて後ろをむいて、突然走りはじめた、ケイがあとを追う、先ほどとは別だ、
「はあっはあ」
ケイも息をきらしているが、男の取り乱し方は尋常じゃなかった、
「なぜ」
開けた空き地にでた、男は立ち尽くしている、
「あなたが悪いんだ、僕の憧れでいてくれればよかったものの、失策をしたんだ」
そうして、ふっと口のはしをもちあげて笑うと、男の姿はきえた、
「きえた……」
「追われる側より、追う側へ、追われる側より、追う側へ」
いつのまにか、ケイは札の男数名に取り囲まれていた、ふと、そこから逃げようとした時、ケイはふと考えをあらためた、
「お前、怖いのか?」
「……何のことだ?」
コニーの声がそれとなくふるえている、
(ジョーがいっていた事を思い出した)
(札の男は“ミルモノ”想いを増幅させるだけの存在)
ケイはかこまれる真ん中で、目をつぶった、札の男たちは隣接する男とてをつなぎ、輪をつくっている、だが額にはあせがにじんだ、
「ミルモノの攻撃には特徴がある、札の男の“特徴”それがあらわれる、恐れるものがそのまま幻影として現れる、それをそのまま自身の攻撃“幻影、幻聴の魔法”にする、それを札の男は使うと……」
コニーは体が震えているようだった、小刻みにふるえる右手がこぶしを形作った、
「あんたが、あんたが悪いんだ、いつもいつも僕の前をはしって……」
「思い出せ!!コニー!!」
ケイはコニーにつかみかかった、ケイには心あたりがある、不満と観測の理由……、
だが、それにはコニーの心を知らなければならない、口にしなければならない、
「お前、俺にあこがれていたのか?」
「……」
うなづくことも、反論することもない、
「僕はよわいから、あなたの強さがほしかった」
「俺になりたかったんだろ!俺と戦え」
コニーはおもいきりケイをなぐった、するとケイは想いっきりなぐりかえし、
コニーの札をはがした。
廃屋の中、アリソンと魔女は向いあっていた、
「お前は、秘密を隠されている」
(何を……)
アリソンが魔女の挑発を受け流そうとしたとき、
サニーがちょうど、廃屋の入口にかけつけたときだった、衝撃の一言を魔女は発した、
「アリソン、君は魔法トランスだ」
「!?」
そんな、まさか……
「知っていたの?」
アリソンが目を向けた先、それはサニーだった、
「…………」
サニーは茫然と立ち尽くし、下をむいた、
魔女はにやりとわらって、右手で水を空気中からかき集めると、地面にたたきつけて爆発と砂煙をおこした、
「このブレス、私の魔力を邪魔してない?あなたが、裏切りものじゃないの?」
逃げながら、体勢をととのえ、物陰にかくれた、アリソンが尋ねるも、サニーは答えない、
(あの魔女、何かしっている)
サニーは嫌そうに口走る
「……いや、裏切りってなんの事だい」
「……証拠は?あなたが味方だという証拠がほしいの」
音がする、物陰の奥から魔女の姿、
「早くそっちいってよ!」
そこでリリナが口をはさんだ、アリソンの胸元から、顔というより、魔道書のはしをのぞかせている、
「喧嘩をしないで、真実をいうわ、アリソン、ケイにブレスを渡した覚えはない?」
“守護のブレス”
(守護のブレス、依頼主や魔法被害者を守る役目をもつ)
「私やサニーは確かに、あなたのトランスをうたがっていたけれど、でも最近記憶がけされたのは、明らかにあの魔女の仕業よ、あなたは、最近ケイにあった事すらわすれつつある」
アリソンは愕然とした、
(―自身が魔法トランスの可能性、魔女の世界でいう、病気のようなものだ、個人的な欲求に走り、それを魔力の源とすると
魔女はその記憶と正常な精神を引きかえにする、記憶は混濁し、時に完全にうしない、時に幻聴を催す)
「何をこそこそと話している、、大魔導士により共有されているだがお前は裏切った」
敵、だ、名前ももはやわからない、ミリではないと彼女はいった、なら誰なのか
「エリナ」
つぶやくアリソン、
「アリソン覚えているか?昔話をしよう大魔導士の事を覚えているか、お前は、だったよな、だが大魔導士は騎士に推薦した」
アリソンとサニーは、一緒になって隠れる、なぜかそんな状態になっていた、敵はたしかに自分たちをおっている。
「だがその恩も忘れて、刃向うものがいた、それがお前だ、お前は恩をわすれたのだ、そしてお前は、私をおもういださなければならない」
向かい合って目線をあわすアリソンとリリナ、
「彼女が誰かしっているの、さっき、エリナっていわなかった、」
「……」
だまりこむアリソン
「きづいていたのにいわなかったの?」
「この魔道書があればアリソンなど」
がさがさとおとがして、アリソンが現れる、続いてサニー
なによそれ、教科書レベルじゃない」
言葉につまる魔女
「そうか」
アリソンは立ち尽くしてしまった、魔道書というには、
「教科書通りかどうか!試してみるがいい」
そういって右手に何かをとりだした、水、だ彼女の手の中で、ジョジョに水が、
「どこで“音”を」
空中の水蒸気をあつめ、高い圧縮をかけている、その水彼女の両手で回転し、圧力をかけられていく、音は、どうやら砂のこすれる音、
アリソンに水流がおそいかかった、
アリソンは動揺しながらも地面をてでつかみ踏ん張りきった。
まるで消防車のホースの容量だ、
魔女は、自らの力に少し背後にのけぞた、アリソンはそれを見逃さなかった、
彼女に接近しようとする、
魔女もまけじと再び両手をつかい、水を圧縮する、すると、見えないホースがあばれるように、水流は糸をいくつかつくった
高圧縮された水の束をアリソンにあびせ続けた。
「ぐ、、、ぐ、、、」
「あっははっはっは!」
アリソンはそれにたえ、びしょ濡れになりながらも自分の立ち位置を横へ横へとずらしていく。
するとむき出しの鉄骨をばねに、アリソンは勢いをつけて
「とんだ」
「くっ……」
アリソンは相手が水魔法を使ったそのスキに反撃をした、右手で空をつかむうごきをして、やがて逆の手で音を立てると、水を手のひらで圧縮し、吐き出す
「何!!?」
だがつぎの瞬間アリソンは後悔する、
高水圧の水流どうしのぶつかりあい、やがてはじけて、相手の水流がアリソンの顔にぶちあたる、
「まけた!?」
なまったか。
アリソンの想いとは裏腹に、魔女はうろたえているようだった、
「アリソン・オールドリッチ!!あなたはほとんどの魔力をうしなったはずでは!!」
アリソンは彼女の去り際に服の裾がめくりあがり、ちらりとみえた、彼女の右手が気になった
あのブレス……星柄のブレスレッド、見覚えが、
「くっ」
魔女はにげた
ニース公園
ケイと正気に戻ったコニーは怪物からにげていた、
(ケイさん、なぜ、殴らないんだ、たちむかわないんだ)
走りながらケイはコニーにといかけた、
「コニー俺はまだ後悔しているのかもしれない」
「ケイさんなんで、彼には本気をださない」
(コニーもどってたのか?)さっきは返事をしてもまるで口をきかなかったのに、
本気をださないから、彼は怪物になった―
「コニー、お前はどうして、どうして普通にもどったんだ?」
「僕は……」
気配がしてケイがふりむくと、怪物の顔が真後ろにあり、両手を上空にかかげてふりかぶっていた、
「コニッ」
ケイはとっさにコニーをつきとばした
「コニー!!しっかりしろ!!逃げるぞ!!」
怪物の影は、自分たちより早く動いているようにみえる、だがおいつく気配はない、
だが、ビルとビルの間を駆け巡る間に、怪物が先回りしてケイ達の前に立ちふさがる
怪物はというと……ケイをおちょくっているのか、
指をくい、くいとやった、よく見ると腕はよっつあり、イサの物と思われるものが下にふたつ、
肩から生えるでかい長い腕が左右ふたつ、
おいかけてくる、腕が伸縮し、ベンチや木などを倒してかけぬけてくる、
ケイは唐突に震えがきた、足の力がぬけてきた
「コニー、先にいってくれ」
おびえている、
「どうして……」
怪物はケイにおいつくと、右腕を振りかざそうとしていた、だが一瞬、何かに気付いたような様子でひるむ。
「無駄だ!!ヤメロ!!ケイ……」
怪物は目をふさいで、つぶると大きなほうの腕をぶんぶんとふりまわし近づいてきた、
「おかしい……あなたはこんな姿におびえたりしない」
コニーは心配そうに見守っていた、
やつの腕、でかい腕はかってにうごいているようだった
(あいつのでかいうで、怪物部分は、ケイをつかもうとするが、まるで見えないかべがあるかのようにケイに触れる事ができていない)
「コニー!!」
次の瞬間、ケイが殴られるとおもったコニーがかばい、ふきとばされて地面にたたきつけられた、
やがて近くで銃声がしたかと思うと、怪物がひるんで、遠くに逃げていった、
「ジョー!!」
公園の近く、道路の奥に人影がみえる、ジョーがかけつけていた、いつもの姿ではなく、奇抜なスーツと鎧に身を包んでいる、紫のラインがはいった銀色の衣装、肩とひざだけを鎧が覆う、
「ケイランバート、またせたな」
三人は怪物が戻ってこないのを確認しながら、会議をはじめた、
ジョーはいう
「ケイランバート、ブレスは?」
ケイの手をみたら、アリソンが渡したブレスがないようにみえて尋ねた、
「ブレスは……」
<グオオオオ>
遠くで雄叫び、怪物のもののようだ、どう考えても犬猫のものではない、
「あのブレスは、君を守る事のできる魔術をもっているんだぞ!もっておけよ」
「はい……」
ケイは先ほどから気になっていた事を尋ねる、
「コニー、お前はなぜ元にもどれた?」
「自分の想いの間違いに気づいた、あなたへの嫉妬を持っていたと思った、けどあなたに殴られたとき、憧れだと気が付いた、はっきりとは覚えてはいないが、僕は思いを魔女にうえつけられた」
静かにきいていたジョーが一言、
「運がよかった」
ケイはすかさずジョーに話しかける、
「あの魔法、イサの魔法もとけるのでは?一緒に戦わせてくれないか?」
「だめだ」
ジョーの顔はこわばってケイをみない、
「なぜ?」
たずねても強情な顔になって答えないジョー、
「魔女のせいなんだろう?そうなんだろう、アイツは悪くない、ならアイツは、元に戻りたがってる」
「ちがう」
ジョーはケイの言葉を制した、
「30%……魔法意外の方法で、人間が元に戻る確率だ」
ケイは驚いて息をとめた、
(30%……それが魔法)
突然叫び声が鳴り響き、上空から怪物が三人の場所めがけて落ちてきた、
「くるなああ」
おどろきもせずに、タックルするひとかげ、
ジョーはイサの顔のついた怪物をふきとばした……その右手にはナックル、鋭いパンチを腰をさげ、全身でくりだしたのだ、。
ごろごろと転がり続け、道路のほうまでころがっていった、とても普通のパンチでそうなるとはおもえない、大げさな衝撃、
ジョーのもとにあわてて駆けつけたケイ、
「それは?」
「これは、昔よく喧嘩した相手と一緒に愛用してた、自分のお気に入りの武器だ、魔道具だよ」
(魔道具……)
“魔女を介さない道具”聞いたことがある、魔女の血筋はそれを扱える、
転がる怪物、砂の上を砂埃をまきちらしながらあばれる、まるでみたことのないおおきな犬が、がむしゃらにもがき苦しむように……。
かけめぐっているようにして、そうしながらも臨戦体勢と呼吸を整えていく、
<フゴッフゴッ>
ケイはその様子をみながら、恐れながらこぶしをにぎりしめた
「お願いだ、一緒に戦わせてくれ」
「くどい!!」
そうやって、裏返した手でケイを自分の後方においやるジョー、下がれ、の合図だろう。
「あいつ、おかしいんだ」
ジョーはケイの言葉に聞き耳をたてながらも相手の様子をうかがう、
「まるで怪物部分と人間部分が別々の意思をもつように……」
「!?」
はなしている間にジョーはそっちにきをとられ、瞬時にせまってきた怪物にきがつかなかった、
「しまった……」
<ドンッ>
ケイをかばってジョーは後方へとばされた、あれよあれよというまに、ケイ達の姿は遠ざかる、
ジョーはさとった、たとえ刺し違えてでも……、この好機を逃すすべはない、だが自分の体は、いまの攻撃で、痛みをうけ、勢いをうしなっている、
「ケイ……チャンスだ!!お前でも、これは扱える!!」
そういって、ジョーは自分のグローブをはずし、ケイになげつけた、
ケイは想いだしていた、
「あのでかい腕、やつの懐、懐は、最大の弱点でもあるはず、それにアイツは……懐に入られるのをきらっている」
怪物はケイに迫ってくる、だがケイはおそれなかった、
そしてケイは、本気のつきをする、だがその瞬間、ためらいがまじった、
「しまった」
<ブンッ>
大きく左にぶれる怪物の顔、ケイの突きは右の手だ、
怪物の顔わずか数センチをケイのパンチがかすめていく、怪物はすんでのところでつきを交わしたのだった。
ケイは体勢をたてなおして、再び攻撃の機会を探る、
怪物の動きを注視しながら、呼吸を戦いの勢いに引き戻す、イサとの本気の勝負を思い出していた、
「ホンキ……」
イサの口が微妙に動いて、人間の言葉を発した……
「本気の勝負??」
その瞬間、ケイはなぜか思い出す、イサとの本気の勝負、
だがケイにあたまをよぎるのは、いつも、自分がかつ場面ばかりだった
怪物はケイの攻撃をよけ、ひるみながらも、ケイにパンチを与える、だがそれは到底その巨躯から放たれたと思えない弱々しいものだった、
(なぜ、小さい、生身の腕をつからないのか?)
ちぐはぐにうごく両手、
「あいつ、ひょっとして、接近して戦わないのか?」
こんなチャンスはない、だがケイには殴れない理由がある、
(怪物……恐ろしい怪物)
呼吸が安定しない。
怪物は再び勢いをととのえ、右の両の腕で、ケイにとびかかってきた、
その瞬間ケイの前に人影が現れた、ジョーだ、ケイをかばうジョー、小さい右手とその手首をつかみ、ささえる左手で怪物の肩の突進をこらえている、
「これでわかったかよ、怪物に人間はかなわない、お前の友人は、すでに怪物だ」
ケイは茫然自失といった状態で立ち尽くす、
「逃げろケイ!!なるべく遠くに!あとは魔女局にまかせろ!!」
そういいながら、怪物と戦うジョー、
<ドスッドスッ>
なぐりあいの拮抗した勝負だ、ジョーもその細い体型からは想像もつかない音、
ジョーはまたバッグをさぐり、何かをとりだした、
短剣だった
ケイは立ち尽くしながらみていた、
ジョーはケイをかばうようにケイから離れていく、
ジョーの勢いのある怒声がふたたび響いた、
「二人で走って逃げろ!!」
コニーをみて考えるケイ、コニーは足の力をうしなったようにへたりこんでいる、
「状況が悪い……引くぞ、コニー」
ケイはそういうとコニーの手をひいて、その場から走りさった、
二人はがむしゃらに人の多い町中へとはいり、
やがて、カフェをみつけると、
「ここでいい」
とその店内にドスドスと入り、コニーと机に財布をおいてさろうとする、
「ケイさん!!」
振り返るケイ、
「僕は、勉強も運動もダメで、いつもヤンキーにからまれていました、
けど、ケイさんたちがいたから、もっと強くなろうと思った」
コニーは言葉をくぎった。
「ケイさんは僕にも想いをつたえられたんだ、イサさんにも、できるはず」
その時、ケイの右手に電撃がはしった、さっき、コニーを殴った時の衝撃がまだ残っていた、
「おう」
コニーは立ち上がる動作をするも、立ち上がれず尻もちをついた、
<ゴソゴソ>
ケイは店の裏手にまわり、そこ何かをさがしているよだった、
ケイは左手首に何か重い意違和感に気付いた
「ブレス……」
ブレスを書店においてきていなかった事にそこで初めてきがついた、
「そうだ、あの時、書店で話しかけられた気がして……あいつ、あの腕は無意識にこれを?アリソン・オールドリッチに渡されたお守り、効果はあるのだろうか」
そしてふと考える、
「あいつは、本気をだしていたんだろうか……」
(決闘の時、妹の事で決戦を申し込んだ時、あいつは、守りの体制のイサだった、遠距離で戦う、そう、よく思い返せばあの時から接近戦をやめたのだ)
「なぜ……マナの奪い合いで気を使った?まさか、それ以前から……」
ジョーはイサに話かけながら戦う、ときにとびかかり、ときに衝撃をうけて、背後をみてジャンプして、衝撃を緩和する、
「お前、あんないい人間に何の不満があるんだよ」
怪物は構う事はない、ジョーは長引く戦闘で守りの体制だ、
「俺も、昔友人を失ったたちでね、道は間違えないほうがいい」
「ぐるるるる!!ケイ!!!」
ジョーは攻撃をよけつつもひるんだ、
(驚いたな、喋れるのか)
イサはジョーの姿をさがすようにがむしゃらに“人間の”両手で空をつかむうごきをする、
さらに苛烈になる怪物の攻撃、
「お前、自分の言いたいことがいえないんじゃないのか、ケイじゃなくて、逃げたのはお前じゃないか?」
その瞬間、ふと、まるで我をとりもどしたかのように動きをとめる怪物、
「うううううううぅうぅぅ」
うなりをあげて、でかい腕のほうでイサの顔が両手で頭を抱える、
「ケィィィィ」
「このクリーチャーの魔法は大体、どっちかに非があるんだよ、それは、お前のほうじゃないのか?」
その瞬間、動きをぴたっと止めた怪物は、何かに今その瞬間きづいたように、ジョーをみた、
「ケイ……ジャナイ」
怪物は両の右手をふりかぶると思い切りジョーをなぐった、ジョーは反応して左の顔をかばった、だがその衝撃はいままでの非ではなかった。
<やばいな>
薄れゆく景色とちだまり、ジョーは身の危険を感じていた、ジョーは思い切りふきとばされていた、
<だれか>
「だれかああ」
<ドサッ>
重力でたたきつけられるジョー、怪物からうけた衝撃もでかい、もがき苦しみ、ああばらをおさえた。
ケイは男のうなり声をきいて、急いでさっきの場所へとむかう、
ジョーはケイの目線の下のほうで寝転んでいた、ケイは右わきに消火器をかかえていた。
消火器の発射口をさしだし、怪物にかざす、だが怪物はその瞬間、ケイのほうにむかい、あまりのスピードにケイはその姿を見失った、
「どこだ、どこだ」
木陰の中、怪物のものと思える木をなぎ倒す音、背後から息遣いがきこえて、
想いきりそちらに消火器を噴射した、
「ケイ!!なぜ戻ってくる、こいつはなあ!!怪物なんだ、魔女に騙され、ありとあらゆる悪さをしてこんな姿になったんだぞおお!!」
ジョーが叫んだ
「あんたこそ何をしってる、あいつは、魔女区の人間だからとあきらめた、ありとあらゆる悪さをして、自分をすてていきていた
だけど、一度だけ、俺がたった一度なぐっただけで更生したんだ、俺はあきらめてほしくなかった!!」
どうやら怪物はジョーにおこっているようだった、
「ケイじゃない、ケイジャナイ、ケイじゃないじゃないかあああ!!!」
<ごそごそ、ごそごそ>
立ち込める消火器の煙、ケイは、怪物が嗅覚で反応しているのがわかった、
「スンスン、スンスン」
そして自分の近くに迫りつつあることも、
「しまった」
<ゴンッ>
その瞬間に何かがひかった、
「あれは魔方陣」
ジョーが立ち尽くし、その正体を口走る、
太い音がした、それと同じくして、ケイが煙のなかから吐き出された、
たしかにいまケイはあの怪物に突進かパンチかをされたはず、だがケイには傷がついていない、なんの傷もついていなかった、体中をたしかめても何もない、ケイは気付いた、
<ブレスで守られている>
消火器など意味がないとしったケイはせまりくる煙の外にでて叫んだ、
「お前の気持ちがわかったぞ!!!お前こそ本気でこい!!本気をだせ」
ケイはものすごい剣幕ではやし立てる
「分かったぞ、イサ、お前は!!お前は怖かったんだ!!この俺が!!」
煙を右手でかきわけながら怪物がよろよろとでてくる
「ぐうううう何を、、、ナニヲいっている」
ケイは不敵にわらうと次の瞬間、また煙の中にはいった、
「にげるなあああ」
イサは煙のなかをがむしゃらに飛び回る
ケイはその中でひときわ大きな音をたてた、
それはw¥先ほど外にでたとき、上着の裾に石をむすびつけておいたのだ、それを地面にたたき付け音をたてる、
やがてケイはとびかかってきたイサをみつける、はじめにみつけたのはケイだった、
だが動いたのはイサの腕ではない、怪物の腕だった、
「いまだ!!」
そういって、ケイはイサの顔、怪物の腹になぐりかかる、だが怪物がよけて、パンチはかする、ケイは再び、硬直してしまった、
<この光景、さっきと同じ、それに、俺にイサが殴れるのか?>
その時、起き上がったジョーが叫んだ
「アリソンは、記憶をうしなってさえ君を愛したんだぞ!!!」
その瞬間、恐怖が消え去り、現実に戻る、パンチはまるでそれ自身が一人でに動くように心地よく線を描く、
ケイがイサをなぐったのだった、
「うおおおおお!!!!」
いまだに暴れるイサ、だがその怪物の体はがむしゃらにうごきとても戦える感じではない、
「約束をわすれたわけではないだろうなあ!!」
イサが言葉を放ったのだった、
「なにをするううう」
ケイは恐れながらも言い返す
「悔しかったらなぐりかえせ!!むかついたらなぐりかえせ!!そう教えたはずだ!!」
そういわれて、イサは逆上して無意識に自分の手でケイを殴る、
ケイはないていた、痛みのはずがない、そんなに強いパンチではない、
現に、怪物のパンチは、アリソンのブレスによってバリアされている、
「それでいい」
意識を失っていたジョーは、何かの気配で体をおこした、
<どのくらい寝ていた>
そして驚愕した、そこに横たわる怪物の姿、そして、力をうしない、
立ち尽くすケイランバート
「まさか、30%だぞ、30%の確率で彼は人間の手で人間にもどされつつある」
やがて思いからだをもちあげると、呪文を放つ準備をはじめた
呪文をかけるジョーの背後にコニーが駆け付ける、苦しそうにもがくイサ、そして傍らに座り込むケイ、耐え切れずに叫んだ、
「僕はしっている、僕は覚えている、イサさん!!あの時、ケイさんの母が襲われたとき、ケイさんは……怪物を見た、
それはとてもケイさんでも耐えられる事のないトラウマになった、その中で、ケイさんは自身の母の言葉と葛藤していたんです!!!」
イサはある記憶を思い出していた、ケイに殴られた瞬間の記憶、
初めてケイに殴られたとき、それは、近くの魔女区の住人のもの、同族のものを盗んだときだった、
転校してきても、それまでイサは確かに悪さばかりしていたが、同族を攻撃する事はなかった、
だが、その時はじめて“魔女区”の同族にやつあたりしたのだ、それをどこでききつけたのか、
ケイはニース公園にイサをよびつけて、ものもいわずに殴った、
イサ「なんだよ」
ふりかえったその時にはケイの顔面は間近にあり、右手はふりかぶっていた、
<ドゴッ>
(あの優しいケイランバートが人をなぐった!?)
「人は殴らない方針じゃなかったか」
「今回は特別なんだ」
殴られた場所を探りながら、言い返すイサ、
「俺たちは誰からも相手にされない、魔女の関係者というだけで、それだけで、だから、もういいんだ、同族で苦しめあおうと、そんなこと、お前たちには関係ない」
「関係ある!!お前がものを盗んだ、あのお兄さんは!必死で魔女区の外の人間とわかりあおうとしていた!!」
ケイはじっとみつめてこういった、
「俺がいくらがんばったって、世間は俺を普通の人間とはみとめない」
「じゃあ俺がおまえの相手をしてやる、まず俺が、お前を認める」
その体は妙にずっしりとして見えた、ケイはそのあと確かにこういったのだ、
「お前が魔女区の出身だろうと、俺は差別なんてしない、だから、お前も悪さなんてしてあきらめるな!!」
「お前、なんでそこまで」
ケイは下をむいて、呼吸を落ち着ける、
「ほっとけないんだよ!弱い人間は!お前が過ちをおかしたらそばにいて殴ってやる、だからお前も
俺がきにくわなかったら食ってかかってこい!!」
初めてだった、悪さばかりする自分を“弱い”とののしった人間は、
(ケイランバートただひとり)
そして別の場面がよみがえる、
(そうだ、俺の不満、俺の不満は)
ケイランバートが、落ち込んだとき、母親の事で、柔道をやめるといったとき、何もいえずに沈黙していた、長い事、そんな状態があった、
あのときのケイが気に食わなかった、だがただ殴る事もできなかった、
あのときの距離感がそれからずっとつづいている気がした、
(おれは、あれから距離をとっていた、そんな感覚がきにくわなかった
すなおになぐり合える関係になりたかった。)
現実に戻るイサ、ゆっくりと横たわり、目をひらく、自分の異様な姿に驚いた、その先にケイの姿、かがみこみ、ひざをつき、ないているようだ、
「マナは俺よりも、おまえを愛していたんだ……その証拠にブレスは、そのブレスはマナの……」
イサの左手はケイに近づいていく、
(マナランバートは、そのブレスを俺よりも先に……)
サニーのまゆは苦痛にゆがむ
「このブレス、マナのでは……ない」
そういって、イサはそのばにへたり込んだ、イサは徐々に怪物から
人間に変容しつつあった。
魔女局支部、リーゼは会議にでていた、支部の重役が集まる重要な会議だ、だが、突然黒い子供、エージェント研修生がドアをひらき、リーゼのもとに駆け寄ってきた
「何事だ!」
「リーゼの部下ではないか」
耳打ちをする黒い子供
「会議中だぞリーゼ」
「いや失敬」
どよめきたつ室内、だがリーゼは座らなかった。
「なぜ席をたつ」
「うちのアリソン、魔女がはめられたようで、どうやら、エージェンと試験の相手に、魔法トランスの経歴のある魔女の捕獲を命じられたようだ」
会場はいっせいにどよめきだした、
一方アリソンと魔女は向かい合い睨み合っていた、
「アリソン、手紙の件は覚えてる?」
ぶつぶつ何かいいながら、魔女は話しかけてくる、
「裏切りものはサニーよ」
アリソンは少し動揺したよう答えた
「……何を」
「アリソン、スペルがきこえたわ、彼女、何かするつもりかも」
だがアリソンはリリナを広げていう、
「彼女をたたく?それとも……」
その瞬間、魔女は胸元から何かを取り出す、
「とっておきの魔道書があるの」
リリナはその魔道書を見つめていた……、
「魔獣水のスペル」
ふいにリリナがつぶやく、魔女は急に走って逃げだすと近くのビルにはいりこんだ、
「逃げられた!!……面倒ね」
舌打ちをするアリソン、
<とととっ>
ビルの中は電気がついていなかった、表の入口はしまっていたが、魔女はどうやってかうちに入っていったようだ、
外階段をみる、どうやら人影がない、魔女の行方を捜して階段をかけあがる。
「気づいた事があるの、あなたはずっと右、を攻撃して、彼女左手をかばってる、傷があるのかも」
アリソンがいう、
「魔獣水のスペルの間に攻撃しよう」
「魔獣水って何」
サニーが尋ねる、
「水を魔物のように扱うスペル、高位の魔導士にしか扱えないの」
「高位って、これはエージェンと試験じゃ……」
やがて、5階にたどりつくと、外階段と向き合う階段の畳があいている、アイコンタクトで二人は中に入る、
中に入ると、何かの会社が入っているようだった、よくみると飲食店か何か、閉店の看板もある、うろうろとその中を徘徊すると、
屋内の階段の踊り場にさしかかると、なにやら話し声が聞こえてきた、
<ボソボソ……>
「アリソンは悪い魔女」
見ると人影がうごいてみる、だがおかしい、輪郭がもやもやと動く、
「水だ、水で人を……」
よくみると、水がひとりでに浮いている、それが人の形を形づくっている。
踊り場の先、窓部がみえる部屋の中奥、サニーがきづいた、そこら中にうごめくもやもやの人影、
「水で人の形をかたどってる」
ふとアリソンは背中に気配をかんじた、そして小突かれた。
<とんとん>
「何?」
<とんとん>
「何よ、サニー肩をつつかないで」
(ん?サニーは左斜め後ろにいた、するとこれは)
アリソンがつつかれたほうをふりむくと、その瞬間に気付く、アリソンの死角、右後ろからたたかれたのだ。
そして人影がみえたかと思ったその瞬間、
その人影がアリソンにとびかからんとしていた、
<ぐおおおおお!!>
「炎!!」
あせったようにアリソンが叫ぶと、アリソンの手から火がはしる、
「ぎゃあああ」
水人間はとびかかる寸前で勢いを失う、
「水人間……」
つぎの瞬間水人間は火が水人間にまわりついていた、
その“水人間”はのたうちまわり蒸発する、断末魔に長くうすら寒い人間のような喚き声をあげた、
アリソンはその拍子に何かを気づいたように、
「リリナ、室内をみて」
「いない」
さきほどいた人影がどこかに消えていた、
(おかしい)
<もごもごもご>
何やら近くで音がしてきた、
アリソンが気配に気づくと、その踊場、薄暗い四隅から人間たちがでてくる、水で形作られた姿、
「うふふふふ、あはははは」
一人ひとり、人格や性別があうかのようにふるまう、子供、女性、男性、体格までそっくり人間だ。
いつのまにか薄暗い階段の踊り場で、水人間たちにかこまれた、
「リリナ!!」
そういうとアリソンは魔道書リリナを上にぶんなげた、
上空からおちてくる様子がない、
「ぶわははは、何を、何を」
そういってアリソンにせまりくる男性の人影、
アリソンが右手で音をだそうとすると、右手の音がにぶくなった、
「ごぼっ」
アリソンの右手にはいつのまにか子供の水人間がまきついている。
あれよあれよというまにアリソンは水人間の中にとりこまれていった、
(油断した)
呼吸ができない、
「アリソン!!アリソン!!」
サニーがアリソンをたすけようとするも、水人間はつかみどころがなく苦戦する
「くそ、くそ、なんとか息を!!」
サニーがスーツケースを広げた、びっしりと入っているのは魔道具、その瞬間、上空から声がかかる、
「どいて、サニー、火の量を調整しているのよ」
その瞬間、上空から、一直線の火がせまってくる、綺麗な一直線、それが水の表面だけを走っていく、火はヒモにアルコールなどをつけ、それを火がつたうような動きだ。
熱い、熱い、水人間どもは、蒸発しながら退散する、リリナニーン、魔道書が上空かわ火を放ったのだ。
水人間たちは蒸発し、中から無傷のアリソンがでてきた、水浸しではあるが、問題はない、
「リリナ、ありがとう」
すると下の階からこつこつと足音、明らかにヒールだ、それも、魔女のはくような高いヒール。
アリソンとリリナ、サニーは、そちらをみている
「よくやったわ」
そういいながら、魔女は左手にもっている魔道書を開き音をたてた、
<バサバサ>
<テロ、テラリ、テッレラ>
その瞬間、魔女は全身水をかき集め始めた、魔女の意思ではない、勝手にあつまり、やがてそれは、魔女の全身をまとう鎧となった、
魔女がスペルを唱えるのは、レシピをとりよせるためだ、
だから魔女事に、自己流のスペルと暗号をとなえ、スペルの全体を“思い出す”
だが同じくして、アリソンは自分の近くの蒸発していく“水人間”に魔法をかける、
<パチン>
「クレラ・クィーフ」
小さな声で呪文をとなえた
アリソンが右手に召喚したのは、水のナイフだった、
「何を」
微笑する魔女、だがその瞬間にアリソンは助走をつけてとびかかる、
「リリナ!!」
リリナも加勢する、リリナが全身に火をまとうので、水をまとう魔女も反撃できない、リリナが魔女のむかって左側に魔道書全面に火をはなちながら、とびかかった、
すると水がもぞもぞと動き、水に顔がうきあがる、どうやら子供の水人間だ、
「ヤメテネ」
ひるむリリナ。
アリソンはこの瞬間をまっていた、アリソンと水のナイフは水人間をすりぬける、
「水に水って」
にやりと水人間がわらう、だがアリソンの右手は、水人間と魔女を無視して、
左手の魔道書に向かった、ナイフはその刃先が高水圧で回転しているようだった、その水圧は、紙を破くのには十分だった。
<ビリリリリリ>
「しまった!!」
魔道書がやぶれおちると、魔女はそれをもの悲しそうに拾い集める、
「アア、アア……なぜこんな不覚を」
「あなた、左手をかばっているのがわかった、左手からしかスペルをださない」
しばらく魔女はうなだれていたが、ぽつりと放った。
「エリナを覚えている?ある少女の妹」
魔道書がぴくりと反応する
「まさか……」
「私がエリナよ」
つづける魔女
「12年前、お姉ちゃんは魔女界から逃げ出した、その形跡をおったら、あんたの存在があった」
アリソンはたじろいだ、
「まちがいない、リリナ、あの子よ」
「アリソン、わかっていたの……どうして」
魔女は狂気の眼をしてせまりくる、アリソンの首をつかもうとしていた、
「あんたが、あんたがお姉ちゃんを殺したのね、私の名前はエリナ・ニーン、あなたに復讐しにきたの」
その瞬間アリソンは反射的に動いた、魔女にビンタするアリソン、
「あんたが裏切って、お姉ちゃんをだましたんだ」
「あまえるな!!」
うなだれるエリナ、奇声をあげる
「ウフフフフフ」
すると突然リリナが不自然な動きをはじめた
「アリソン!!離れて」
叫ぶリリナ、アうリソンは気付かない
「うるさいうるさいるさい!!!」
エリナはもうひとつ、魔道書をとりだしていた。
「この10年間、どんな思いで魔道騎士の学校にはいって、どんな想いでお姉ちゃんをおいかけて、でもでも」
突然リリナの体がしなりはじめるリリナ、アリソンはとてつもない魔力がリリナの手元から
放たれるのを感じた、リリナの体は透明な物質をまとい、その物質は宙をまわりながら、何かしらを形づくろうとしていた、やがて物質はリリナの左半身を覆った、
「この魔道書は、こんな、まさか……」
ガラスが破られる音、気づくとリリナの左半身がライオンのように毛むくじゃらな顔と手で、恐竜の
ような足をもつ怪物にかわっていた、
「アリソン!!あんたの影がちらつくのよ!!大魔導士さまよりさきに、お姉ちゃんをうばったあんたの影が!!」
<ガシッ!!!!>
怪物の左手がアリソンをつかむ
アリソンは一歩も動かない、やっとの想いでリリナが気付いた
「アリソンの様子がおかしい」
「ぎゃあっ!!!」
悲鳴をあげて気を失うアリソン、だが少したつと顔をあげた。
「アリソン、あんたも暴走しなければ面白くないわね、サニーに裏切られた心あたりはない?ジョーはあなたのいじめっ子と仲がよかったらしいわね」
「ジョーは違う私をかばってくれたわ」
サニーは意外そうな顔でアリソンをみてい
「アリソンそんな話はどうでもいい、私の話しをきけ」
うごごごごご怪物のうなる声、怪物の腹には、エリナ・ニーンを名乗る魔女の顔。
「きいちゃだめ!!」
叫ぶリリナ
アリソンはいつのまにか髪の毛をにぎられ、体には水がまきついている、
「うるさいうるさい」
アリソンは宙をかきむしっている
「アリソーン、いいことを教えてあげよう」
「丁度いまから10年も前、魔女界に接触してきた人間がいた、そいつの名前は、リーゼ・ピリカ、そして、サニー・ジョン
お前はうられたんだよ、10年も前に」
アリソンはなおもかきむしり、エリナの手をつかんだ、
「変わりに提案されたのが、支部の安全、だが交渉は決裂した、それに起ったお前の手によってな、お前はあの時すでに癇癪をおこし“トランス化”した。」
サニーがとっさに魔道具の銃をとりだし、エリナにうった、
無念にもその玉ははずれ、音だけが響く
<コンコンコン>
「感情的になってはだめだ、アリソン」
「ううう、、、ううう」
うなるアリソン、それをしりめに、黙りこむリリナ
「こっちへこい!!アリソン」
「どうしてあんなものが」
それにきづいたサニーが尋ねる
「どういう事だ?」
「あれは洗脳の魔術魔女にとって、大魔導士以外の思想を無理やり入れられることがどんな意味をもつか、わかるでしょう」
サニーは血の気がひいた
「そう、あれは“魔法トランス”魔女の暴走を引き出す事ができる、エリナもきっと、半分トランス状態になったのよ」
(トランス、魔力の源である、魔法使いの共有された意識、その掟をやぶり、魔法が使える状態、そのかわり、魔女は記憶や意識を暴走させて、自我を失う)
リリナは気付いた、アリソンに手紙をおくった理由、あれは、少しずつアリソンを、アリソンの不安を高めるために……
「十年前の事件を思い出させてやろう」
「やめろ!!」
突然に叫ぶサニー、
「アリソン、お前はとある場所にこいつらに呼び出されたな、あの時重役たちにおびえたこいつらにお前は売られた、お前は普段からいじめをうけていたな、当時の重役の娘、シム、シーン、そいつらを中心とする奴ら、そうだ、思い出せ」
アリソンは頭をかかえて
「痛い痛い」
といっている、
「お前はあのとき、日ごろのストレスと仲間に裏切られた憎しみを」
ギャラリーが集まる中でアリソンは変容していく、耳はのび、まるでウサギのよう
腕はトラのようになり、ツメはのび、獣のように毛がはえ、むくむくと筋肉がいきりたっている、
足は鳥脚、腕からは少しはねが生えている、
裏切り、裏切り、
「気分はどうだ?」
とエリナ、ふいにアリソンが尋ねる、
「ケイランバート……は?」
「ケイね、あいつは、死んだ」
にやりとわらうエリナ、その瞬間、アリソンは完全に変容した。
「そうだ!!アリソンお前は裏切られて、トランスしたんだ!!」
「ワタシ、まじょ、きら、人間、にくい」
ついてきなさい、アリソン、
そして二人は屋上へかけあがり、
とびたつとついていった、
「見えるか、アリソン、ビルとビルの合間、あの人間を、はじめの犠牲者に」
すると、アリソンは自分の爪で、半分怪物のエリナの左半身をひっかいた。
「なんのつもり、アリソン」
エリナはビルにすべりおちた、
<むく>
ところどころ擦り切れいている、おとなしくついてくるアリソン
きづいた、アリソンは自分の腕に自分で爪をたてている、
「こいつ、半分意識を……」
エリナは自分でも気づかないうちに獣の雄叫びをあげてとびかかる
ころがっていく、獣と獣、力の加減をしらない。
二人は尋常ならざるスピードでビルの端にいき、そのまま地面におちた
「グアアアアア」
叫ぶ獣、もはやどっちかわからない。
こうなる運命だったのね、いいわ、人間の世界を
どちらかが壊れるまで、戦いあいましょう、
そういうと二人はそのビルのガラスを壊しながら、かけあがる
「ぐるるるる」
追いかけるのはアリソン
「キャー」
室内では悲鳴があがっている
「くそっ」
サニーはリリナをかかえて、二人の影をおっていた
リリナはアリソンとエリナがとっくみあうときに、その拍子に逃げ出していた。
「エリナ、戦えるか」
「あのね」
返事が遅い
「どうした、お前まで様子がおかしくなったら……どうした?」
真剣に尋ねるサニー、足をとめた、
あの子は、エリナは私の妹なの、
二人はガラスの破れたビルの屋上にふたつの怪物の影をみる。
「ここか」
魔道書をもつ右手に重みをかんじた、
「私、戦えるかわからない」
「リリナ!!!」
ため息をつくサニー、
「責任の事をとうつもりはない、けれど、君は君の過去と向き合うべきじゃないか、アリソンもきっと、戦っているはずだ、妹が罪をおかしたとして、君はどうするんだ」
リリナは黙り込んだ、
「俺に作戦がある」
屋上ではアリソンとリリナのバトルがはじまっていた、くだけるコンクリート、
とばされるアリソン、
エリナが左半身でコンクリートをくだき、アリソンの方向にとばす、
下の人間も黒い子供たちが避難をよびかけてはいるが、安全とはいえない。
屋上にたどり着いたサニーの目に入ったのは、コンクリートの塊、下をみて驚愕する
「子供!!」
サニーはとっさにコンクリートにタックルして、その場に倒れこんだ……。
「大丈夫?」
サニーはお腹をかばった、血が流れている
(これは隠さなければ……)
「アリソン!!破壊をやめて!!おもいだして!!」
サニーの手からはなれ、ふわふわとアリソンの目の前にいくリリナ、
アリソンはふいに攻撃をやめる、ふりあげたこぶしをそのままの状態でとめている
「に、、げて」
その背後からエリナがせまってきていた
「エリナ・ニーン!!やめなさい」
アリソンはふりあげたこぶしを地面にたたきつけた、
ビルのコンクリートがとびちった。
二人は距離をおき、階段の入口の影にかくれ、作戦を練る
「アリソンを閉じ込める、結界、でも少ししかもたないわ、」
「俺が接近してその中でアリソンを納得させる」
俺は、接近のほうが得意だから、
サニーは、そういってリリナを納得させていた、
ジョーになぐられたほほをさわるいってー、
魔道具のナックル
「あの魔女はどうも左手をかばっているようだ」
サニー、あなたも大事に
サニー、ブレスを誤って攻撃、おこるリリナ、拾い集める、
大量の水をあびせてくる
「目的!?アリソンと世界を壊すのよ!!造なおすの!」
出血が
水で傷口がひらいたようだ、くそ、意識が
水がサニーをつらぬいた、よける力ももうない、
「取引をしよう」お前がアリソンをひきわたせばそれ以上の罪にはとわない
「またアリソンを裏切るのね、アリソンが望むかしら」
アリソンを吹き飛ばす、
サニーは全身でそれをうけとめた
朦朧とする意識の中で、
やがてけものはさっていく
まるで腕だけが意思をもったようにサニーはリリナをぶんなげる
ぶんなげる魔道書、がかすった、
「何を」
つぎの瞬間、リリナは右手に痛みを感じる、魔道書から歯がでて、自分の体にかみついている、
「いたっ」
魔道書はいった、
「魔道書をもやすもうやめなさい、エリナ」
リリナの中からふつふつと邪魔者に対する怒りがわいてくる、魔道書をぶんなげようとしたその瞬間、
「エリナ、私を忘れたの?」
エリナは少し動きをとめたが、ふつふつとわきあがる怒りはおさまらず、せきをきったように語りだした、
「私はねえ、私はこの時のために、人生を棒にふったの、姉がアリソンに騙されて、姉が私の前から消えた後、私は支えを失った、そして暴動、そのあとの私たち
魔女、魔法使いがどんな目にあったか、あの女に、あの女にしらせなければ」
ぎらりと光るエリナの眼光、エリナはおもいきり地面に魔道書をたたきつけようとした、その時、リリナの映像がふっと魔道書の上にうきあがってきた、
「エリナ……私は」
ブレスにきづくエリナ
「お姉ちゃん、なぜ」
「ききなさい、エリナ、話があるのよ」
サニーはアリソンをおっていた、傷口がふさがらない、人ごみでアリソンを呼ぶ、
「アリソン!!人を傷つけるな!!」
あたり一帯騒然としていた、がやがやとした中で、サニーはへたり込む人間をみた、怪物のような姿になったアリソン、
サニーはあわててそこに向かう、ひとだかりがアリソンをみて騒ぎ立て、やがてその場から人々が散っていく、
アリソンには別のものがみえていた、襲い掛かる人影とせめたてるような陰口、悪口、罵倒、
「魔女でもない人間でもないもの」「ここからいなくなれ」「アリソンオールドリッチ、お前は怪物だ!!」
幻影の人がアリソンに触れる
「触らないで!!」
口々に悪口をいう、あの時の事さえもアリソンに見える人影は口にした、
「アリソン!!幻影が……」
<幻影が見えている>
気付くとアリソンはあたりにむかって、鋭利な爪をぶんぶんとふって威嚇している、近くに人がいたらあぶなかった、
その時
「あっ!!」
消え入りそうな叫びと後悔と共に、幻影の中で、アリソンは人を傷つけてしまった
その瞬間に断片的に思い出す、過去のトランスの記憶、怪物になる自分、誰かがいじめられている様子、
<―あの日、勝手にサニーとリーゼが自分を魔女界に引き渡す計画をたてていたあの日、私は確かにトランスした>
そして傷つけてしまった幻影の人間、男性はいった、私服姿の質素な男性、ベルトをしめてきちんとしている、
「お前は人を傷つけた、裏切られて当然だ」
人影がアリソンの前にたち、アリソンは人影につめをたて、息をあらげて威嚇する、
「グルルルル」
「アリソン!!!」
サニーの叫びとともにアリソンの幻影はきえた、
あたりに人影はなく、その奥につめをよけたサニーの姿がある、
「こんな所まで、おってキタノカ」
ビルとビルの合間、大通りのわき、公園の近くで怪物と人間がにらみ合う、
アリソンの顔がたしかにある、だが怪物の顔もある、怪物の顔の前頭部にアリソンの顔ついていた、微妙に動くのが不気味だった、
つぎの瞬間、サニーは負った傷と腹の中心に鈍い痛みを感じた、
<ドンッ>
中をまい、座った格好のまま2メートルほどもアリソンの近くからはなれ、ザザザ、と地面と服がこすれる音の中、サニーは、尻もちをつく
アリソンは体当たりの格好をしている、どうやらアリソンに突き飛ばされたらしい、
ふらふらとたちあがるも、とても戦える状況じゃない、というのも、エリナに負わされたお腹の傷からの出血がひどくなっちえる、
「前が、ぼやけて」
サニー、アリソンなんだな、、、
ぽつぽつと集まってくるギャラリー、あちらほちらで上がる悲鳴、出血がぽたぽたと続いていた。、
「アリソン、僕らは、裏切ってなどいない、このブレスが証拠だ」
「…………??」
<ごめんな、アリソン、ジョーの事も、俺の勘違いだった>
とびかかるアリソン、サニーはよけるすべをうしなっていた、
またも無意識に中をまい、地面にころがる、擦り傷だらけだ、アリソンの姿が回転する、
ジョーはタックルをして、そのまま地面に倒れこんだ、
朦朧とする意識のなか、アリソンはサニーのもとをさっていった、
エリナは戦闘意欲を失っていた。
「アリソンオールドリッチは自分をのろった、エリナ、アリソンはずっと苦しみつづけていたのよ」
「いい気味だわ」
かわいそうなものを見る目で妹にいった、
「アリソンにこの世界との和解の選択肢を問いかけたのは私、あなたもしっているでしょう、魔女達は、思想、価値観をひとつ共有している、それに違和感をもった私が、私がアリソンをつれて魔女界をにげだした」
エリナはリリナを見ようともしない、
「あの日、私が肉体を失ったあの日アリソンオールドリッチは人間にとらえられた、当時発足したばかりの“魔女局”アリソンは、人の世界で、個人として生きていくことを命令された、けれど人間に捕えられたアリソンは暴走の危険性をはらんでいた、アリソンの腕のブレス、あれは私が呪文を書いて、アリソンの暴走を防ぐ事を提案した」
リリナは徐々に耳を傾け始めた、
<自分が間違っていたのか?徐々にエリナのトランスした左半身が力をうしなってぶらんと垂れ下がっていく>
「けれどアリソンは……アリソンは、それだけでは満足しなかった、この世界にきた、きてしまった自分を呪った、エリナ、あなたにはわからないでしょう、あなたが私を失った苦しみよりも、私があなたを置いてきてしまったよ事の心配よりも深くアリソンはこの10年間、ずっと自分を呪って生きてきたの」
「ばかな、そんな、そんな」
泣き始めるリリナ、その様子をみてエリナは言葉を失った、
「だったら証拠を!!私の怒り、恨みが間違っているという証拠を見せて!!」
「あの子の背中をみてみなさい、あの子は、自分で自分を殺す呪文をかけたのよ!」
(そんな、そんなわけはない、私がどれだけ、どれだけ、あの女、あの女のせいで……)
アリソンはは目が覚めた、そこは廃工場の中、
「私は」
起き上がると目の先に何者かがいる、
立ち上がる人影、
「逃げて、サニー」
アリソンは自分の姿をみてつぶやいた、ぼんやりとした意識の中で、違和感に気付いている、
<暴走の可能性―>
「アリソン!!君に真実を話さなければ」
サニーは傷だらけで血を流しながらも、アリソンのもとへと右足を引きづって近づいてい……、
つぎの瞬間、アリソンは再び意識をうしなう、その刹那、サニーの叫びが聞こえた気がした、
めがさめると、間近にサニーの顔があった、
「アリソンオールドリッチ!!」
アリソンは言葉を失った
「はっ」
サニーは右の腹を抱えている、
「信じてくれ、あの時の事を、思い出してくれ……君をまもろうとした、だが、はめられたんだ、」
「サニー、、、その傷」
アリソンは自分の右腕を確認する、怪物のようになり、アーマーのように肩がこわばり、指のそれぞれが、刃物のようにとがり、先端が細くなっていっている、
「アリソン、違うんだ、これは、あの魔女に」
そういうサニーのはらを、アリソンの右手がつきぬけ、穴が開いている、そこから血がぼたぼたと流れている、
「うわああああ!!」
泣き出すアリソン、肩手で顔を覆い、叫んでいる、
「私は、傷つけてしまった、人間を、もう戻れない」
すると、アリソンが苦しみだして、両手を自分の背中にまわして、ひっかきまわしている、
<○×△□>
アリソンが何やら呪文をとなえる、するとアリソンの服の背中がやぶけ、燃えるように光りはじめた、
光はアリソンの背中をくるくるとまわり、やがて魔方陣を描き始める、
<対価の魔方陣>
サニーはその正体をしっていた、
「アリソン……駄目だ」
光の中でアリソンは次第に自分を失っていた、
背中がやけるように熱い、やがてアリソンの輪郭は透明になり、奥の景色が透け始めていた、
<アリソンはね、自分に呪いをかけた、人を攻撃してしまったとき、その呪文は発動する、自分を、消してしまう呪文>
リリナがアリソンの消えたほうに駆け付けていった、リリナは信じられなかった、アリソンが自分よりも傷ついていただなんて、
廃工場の奥、魔方陣がみえた、
「対価の術式、“何かが起きた代償に、何かを受け渡す”」
リリナはしばらく言葉をうしなったが、やがて両足は力を失い、その場に倒れこんだ、
「そんな、ばかな、本当に自分に呪文を」
ふと背中から、声がかかる、
「封印の術式1の型」
<ドスッ>
倒れこむリリナ、
黒井子供たちだった、魔女局の研究生、
その後ろに何者かの影がみえる、すたすたと歩きよってきた人影、サングラスを外したおんな、リーゼだった。
「なぜ、室長自ら……」
薄れていく景色の中で、リリナはその女をみた、やがて歩み寄ってきたリーゼの足元、リリナは気を失った。
リーゼは立ち尽くしつぶやく
「アリソン」
見るとサニーがそばに倒れている、出血がひどい、
「サニー」
「アリソン!!アリソン!!」
サニーは気が動転しているようだった、とっさにサニーにビンタをかまし、リーゼはサニーの怪我の処置を子供たちにまかせた、子供たちは魔道具をとりだし
サニーの治療をしていく
「あなたにはこの先は無理だったようね……」
そういうと、リーゼはものもいわずアリソンのもとに近づいていった、
アリソンが真正面、歩いてすぐの距離に来ると、
アリソンの右手が怪物のものになり、その爪がしゅっと動いた、
リーゼは動かなかった、つーっと血が流れる、傷は顔にあった、だがリーゼがよけて、傷は浅くすんだ、
「逃げないで、アリソン」
背後から声がきこえた
「リーゼ……俺に、俺にやらせてくれ」
そういって立ち上がったサニーは再びがくっと地面に倒れこんだ。
アリソンの両腕は、まるで意思を持つように勝手に動き出し、リーゼを攻撃にかかる、
リーゼは、背中のリュックからナイフを取り出すと、静かにその攻撃をさばいた、
<シュシュシュッ>
風を切る音、
「ケイランバート、死んだ」
アリソンがそうつぶやくと、リーゼは歯ぎしりをして、一瞬のうちに助走をつけ、座り込むアリソンの正面、その息もかかりそうな距離につめよった、
「ケイ」
再びアリソンが呟くと、リーゼはアリソンを右手でおもいきりぶった、
「目を覚ましなさい!!アリソン、意識を落ち着かせるのよ!!」
透明な姿が、やがてアリソンの形を再び描きだす、その瞬間記憶が噴出した
「ギャアッ」
やがて魔方陣がガラスのように割れて、アリソンは力を失った、
リーゼが一息つくと、リーゼは左ての裾をまくり、ブレスレッドが露出した、
その瞬間、リーゼのその左手に痛みが走る、顔からがリーゼに近づき噛みつくアリソン、リーゼは舌打ちをした、
<ナイフはつかえない>
ナイフの柄の部分でアリソンの背中をなぐる、
「ウッ」
アリソンは呼吸を乱した、
「サニー!!ブレスは!!」
「アリソンはおいてきたって」
リーゼは怒った顔を正面に向けたまま叫んだ、
「そうじゃない!!あんたのブレスよ!!!」
サニーはその瞬間決意した、
「アリソン……」
サニーは両脇の黒井子供を制止してアリソンのもとへ動きだした、
「駄目です、傷がひらきます!!」
アリソンはサニーを標的にして、アリソンの腕がふたたび動き出す、サニーは必至でそれをよけるも、体は細かい傷でがつき続けていく、
「アリソン、ごめんな、俺たちは、裏切ったのかもしれない」
伝わるかわからない状況でサニーはそれでも、言葉をつづける、
「アリソン、僕らは丘で君のトランスが進行しないように呪文と、魔法に制限をかけるブレスをつくった、だがアリソン、君は満足しなかった、背中にナイフで呪文を刻んだんだ、その時決意したんだ、これ以上お前が傷つかないように、向こうに返す事を、」
息をついて続ける、アリソンに次第に近づく、
リーゼが叫んだ。
「早く呪文を!!」
「そして、あの日起ったこと、受け渡しの日、突然ジョーがきた、いじめっ子のやつらがきた、それで俺はジョーを殴ったんだ、そしたらあいつら、リーゼを、リーゼの髪を燃やして、アリソン、きみは暴走した、君は、裏ぎり腹を立てたわけじゃない、」
アリソンが薄く目をひらき、サニーに目配せをした、
「そう……だ……」
アリソンの反応をみて、サニーは呪文を始めた、
「トナイ、トナエ、トルイ」
やがてアリソンの背中の魔方陣はきえさり、アリソンがその場に倒れこんだ。
薄れゆく景色の中、アリソンは救急車の中にいた、必死でといかけるサニーとリリナ、リーゼ、
アリソンはその日、ブレスを渡すために、サニー、リリナと手作りのブレスを交換するために、自作の“魔女のジンクスブレス”を作って準備していた、
だが丁寧に作りすぎて間に合わず、約束の場所までもっていくのをためらい、自室においてきてしまった。
やがて丘の記憶、
ブレスを渡されたアリソンは戸惑った、
「でも、私」
「アリソン、このブレスの由来ををしっている?」
<ブレスの由来、魔女が初めに課す魔法は、自分に対しての近い、それを再現するのが、このブレス>
「アリソン、これであなたは、二度と暴走なんてしないし、私たちがとめてあげる」
つぎの場面に記憶が移る
「アリソン、あなたは、向こうにいくのよ、私たちといては、自分を傷つけてしまう」
あの日、ある国立公園で唐突につげられた、
アリソンは散々暴れたが、落ち着いて言葉をはなつ、
「わかった」
「なんなの、あんたたち、ジョー!!」
ジョーを殴るサニー、
燃える髪の正体、リーゼだ、リーゼたちがいじめっ子たちにつかまり、リーゼの髪が燃やされる、
リーゼの記憶が走馬灯のようにめぐる、アリソンが自分を傷つけた日、
背中に炎で呪文を刻んだ、
「ブレスだけでは、心細くて」
出しっぱなしのシャワー、毛布にくるまれ
アリソンはそういってないた、リーゼがだきしめ、サニーがあ然としてそこに立ち尽くしていた
<なかないで、リーゼ、私、あなたたちを攻撃されたら、何がなんだかわからなくなるの、もしものためよ>
―<私、あなたたちを攻撃されたら、何がなんだかわからなくなるの>
リーゼがめをあけた時に見えたのは怪物に変化するアリソンの姿だった、
エピローグ
アリソンは肉体にあまり損傷がなかったが、精神的なケアという事で、特別な病院にいた、だが退院も早かった。
アリソンが退院する少し前、リーゼが告げた、
試験は一応、合格だ、
だが2-マンセルは安心できない、よって、常に“黒の子供”の支援をうけながら仕事をしろ
サニーは今日も墓石にたつ
(アリソンの記憶がもどらなければいい、それは、あの日、あの時と同じ思想からだっただろうか)
「あんたの息子なんかじゃないと思う事もある……」
独り言をつぶやいている、
墓石には名前、オズワルド、ジョンとあった。
「きっと正面からアリソンとむきあえない、それが何なのかわからないんだ、俺はアリソンへの贖罪がしたいのか、アリソンに自分の居場所をみつけたのか、
俺はこれからも、逃げるさ、あんたの過去から、でも、逃げながら、きっと自分のやり方をみつけてみせる、彼女が、初めて守りたいとおもった“人間”だからな」
喫茶ピープーでは、外の席で二人で食事をするイサとケイの姿があった、
「俺が本気を出せない理由?」
「そう、なんかあんだろ」
ケイはしばらくコーヒーをみて考え込んでいたが、
「お前にそこまでいわれたら仕方がないな」
ケイは思い出していた、母の言葉、
そして、そのことをイサに告げる、
「母の言葉がいまでもひっかかってる」
「そうだったのか」
イサも納得したようだった、ケイが人を傷つけられない理由、本気がだせなかった理由。
<人にはいい面も悪い面もある、だからこそ傷つけあうよりも先に知るべき>
ケイは椅子を少し後ろにやって携帯画面をみる、
「今日は招待しているゲストがもう一人いるんだ」
ケイ達のもとへ、店の連なるビル街をあるいてくる少女達がいた
「彼氏ってどんな人だろう」
話をふったのはラタン、
「……」
恥ずかしそうな顔をしている少女はマナ・ランバートだった、
マナはいう、
「きっと驚くわ」
そうして歩いていくと、二人の男子が見えてくる、ラタンは手前の一方をみていう、
「お兄さんじゃない」
そういってラタン視線はケイの隣の美男子にいった、
「うそでしょ」
マナが嬉しそうに呟く、
「本当よ」
「ラタン、紹介するね、彼氏、イサ・キースリー」
マナ・ランバートは思い出す、あの日の出来事、ふっとよみがえる、
(きっと、あの日のすれ違いも、いつか解決するのね)
そういって、二人をみて、マナは笑った、その手には、紙袋、仲には、ケイのためのブレスが入っていた、
2015、9月12日更新。
大幅な余分な部分のカットをしています