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 城水が引っ越してきた街一帯は、急こう配の坂の上に豪華な家々が立ち並んでいる。買物に出かけた帰り、上の方でリンゴでも落とそうものなら、これはもう大変なことで、一番下まで約1Kmは転がり落ちる・・といった塩梅あんばいである。リンゴ一個くらいのことで騒げば、奥様会の会員として世間体が狭くなるから、誰もひろいに降りない。結果として、リンゴは下を歩く人が手にすることになる。そんなことででもないが、坂の下の角には街交番があり、リンゴはその交番へ届けられることになる。結構、この手の遺失物の届け出が多く、交番に最近赴任した、藻屑もくず巡査は手を焼いていた。もう一人の老巡査、昆布こぶはベテランゆえか、まったく意にかいしていなかった。

「昆布さん、今日もありましたね…」

「いつものことだよ、藻屑君。気にしなさんな」

「そうは言いますがね。こんなもの…二日もすりゃ、腐りますよ! 誰が取りに来ます?」

「まあ、来ないだろうな」

「でしょ?」

「捨てりゃ、いいじゃないか。私は何十年とそうしてきた」

 昆布巡査は大きめの声で断言した。

「ああ! それから、先ほど奥様会から電話がありましたよ」

「奥様会か…。なんだって?」

 昆布は苦手なものに見たように、顔をゆがめた。

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