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「ママ、出てっていないよ、パパ」
「ふ~ん…どこへ行ったんだ? 買物か?」
「よく分からないけど、奥様会・・とか言ってたよ」
ああ、そういや、出がけにそんなこと言ってたな…と、城水は朝の寸劇を思い出した。
「食事の用意は出来てるって…」
「そうか…」
玄関まで漂うカレーの匂いがした。城水は手早く済ませたか・・と、カレーを作る里子のちゃっかり顔を思い浮かべた。
里子が帰宅したのは夜も深まった10時過ぎだった。
「遅かったな…」
喉から手が出るほど訳を訊きたかった城水だったが、どうでもいいような顔で新聞に目を通しながら口を開いた。雄静は子供部屋へすでに入り、いなかった。
「そうなのよ! 出がけに言ったでしょ」
「ああ…」
城水は徐に新聞を閉じ、里子を見た。そこには普段、目にしたこともないマネキンのような金ピカの里子が立っていた。マネキン…やはり、そうとしか表現しにくい、きらびやかな里子の姿である。婚前も含め、今までそんな里子を城水は見たことがなかった。
「ど、どうしたんだ、お前! …」
気でも狂ったかっ! と、出かけたが、城水はそこまで言わなかった。いや、怖くてとても言えなかった。