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「先生は、いつも腹ペコなんですね」
誰が言ったか城水には分からなかったが、そんな声が生徒達の中からして、教室内は笑い一色となった。
「ははは…そうだ! 俺は減るんだよ、腹が!」
城水は悪びれず、居直った。城水の腹は、妙なことに一定の周期をもって減り続けた。ただそれは、普通人間の生理的なものとは違い、どこか異質だった。当の城水自身も現象を自覚していたが、それがなぜなのかは、本人の城水にも分からなかった。それには、生前に遡る深い理由があった。何を隠そう、城水の両親は諸事情により地球へ我が子を置いて飛び去った異星人だったのである。
昼食のあと、城水はふと、校庭で考えていた。生徒に言われたひと言が甦ったのだ。
━ そういや、いつも昼前の11時、夕方の6時、朝の7時と決まった時間に腹が減る…なぜなんだ? ━
本人に分からないのだから、当然、他人に分かる訳がない。
「別に異常はありません。ははは…余り気にされないことですな。腹が減る・・結構なことじゃないですか!」
いつやらも病院で医者に診てもらい、快活にそう言われたことがあった。城水の脳裡にふと、その映像が過った。そんなことが今までに何度もあったから、城水は、さほど気にしていなかった。とはいえ、その都度、生理的現象が定まった周期で巡ると、どうしても奇妙には思えた。城水は、たぶん先天的な体調なんだ…と思うようにした。そう思うことで、すべての疑問が吹っ飛び、心の蟠りが消えたのである。