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辰夫は今、書き上がったばかりの原稿を
担当編集者の神前に渡すと辰夫の書斎のソファに
腰掛けた神前は辰夫が今、書き上げた原稿を
黙り込み、詠み始めた。
『やっぱり、面白くないのだろうか?……』
辰夫がそんな不安にかられながら、神前のことを
見詰めていると一気に辰夫が書き上げた原稿を
詠み終わった神前は辰夫の原稿を自分の膝の上に置き、
小さく息を吐くと
「とっても面白いです! これを出版しましょう!」
熱い眼差しで辰夫にそう口にした。
『え?…… これは……』
辰夫は一瞬、神前が言ったことに驚いたがあまりにも
熱心な神前に負け
『まあ、大丈夫だろう? 誰も気付かないだろう……』
アイドル歌手の滝川茉里の部屋での行いを基にした
小説を出版することにした。
あまりにもリアルな辰夫の小説は新人ながら、
大ヒットを飛ばした。
こうして、辰夫は瞬く間に作家の仲間入りになった。
辰夫が脚光を浴び、有名になった反面、辰夫の出した
小説により、小説に登場する女性が滝川茉里にそっくりだと
世間で噂になり、同時に滝川茉里のアイドルならざる
悪い行いなどが続々と明るみになった。
悪い行いなどが明るみになったことでアイドル歌手である
滝川茉里は瞬く、世間から叩かれ、仕事が激減した。
『本当に良かったのだろうか?……』
自分が書いた小説により、滝川茉里があんなことになり、
辰夫は心が痛んだ。
送られてきた読み進んでいた辰夫に心当たりがあった。
『なぜ、こんなことまで知っているんだ?……』
辰夫がそんなことを思っていると
「先生! 居ますか?……」
辰夫がいる書斎に中年の男【神前】が現れた。
自分の机で原稿を読んでいる辰夫を見つけた神前は
「あれ? 何を読んでいるのですか?……」
辰夫に声をかけてきた。
「神前くんか…… いつもの(原稿)だよ……
これ、どうにかならないかね?……」
辰夫が部屋にやって来た神前に言葉を返すと
神前はいつものように辰夫の書斎のソファに腰掛け、
出来上がったばかりの辰夫の新作の小説を目の前に
テーブルに置きながら
「先生も大変ですね…… 出来た本を持ってきました!」
まるで他人事のように言った。
神前は辰夫の担当になって、早4年。
辰夫の出す小説、出す小説によって、出版社の
編集局長になっていた。
「ありがとう! いつもすまないね……」
辰夫はそう言うと話の続きが気になり、神前を
そのままに原稿の続きを読み続けた。
一年ほどすると辰夫はアイドル歌手だった滝川茉里のことなど、
すっかり忘れ去っていた。