第五話
「なんか眠そうじゃん」
勇は学校に着くと机に突っ伏して寝ていた。
それを見た同級生の高橋愛実が話し掛けてきたのだ。愛実は勇と同じクラスで、席は隣だ。
「久しぶりに早く起きたんだけどさ、時間経ったら睡魔が襲ってきたナリよ」
勇は顔だけを上げ力無く返答する。
「あ~わかるそれ、語尾はわかんないけど」
自分の机に鞄を掛けながら愛実は腰掛ける。
「…えっ?」
勇は驚きのあまり体を起こす。
「「えっ?」て?」
「もしかしてコ○スケ知らねーの?」
「コロッケ?コロッケなら知ってるよ」
「コ○スケだよ!」
「何それ?わかんない」
「マジでぇ!」
「うんマジで」
そんなに興味がないような口調で応える。
「ほらあれだよドラ○もんは知ってんだろ?」
「ドラ○もんは知ってるよ~水色のロボットでしょ?」
「ドラ○もんに似たヤツじゃん」
愛実は首を傾げながら口を開く。
「ん~わかんないナリよ~キ○レツ~」
「知ってんじゃん!嘘かよっ!?」
「あはははっ!」
小悪魔のように笑う愛実。
「勇ってば必死すぎー」
(ムキーなにこの娘生意気っ!)
愛実と親交を深めるようになったのは高校に入ってからだ。
あれは勇が二年の時だ――
放課後残っている生徒もまばらで、外では部活にいそしむ部員の喧騒が耳に入る。