第三話
夏が近づいている6月半ば。
「あっつ~」
額の汗を拭いながら勇は囁く。
パンツ一丁で寝ていても汗が毛穴から吹き出ていた。目に入る汗がうっとうしい。
クーラーがないこの部屋の唯一の助けは扇風機。タイマーを二時間に設定していたので稼動していない。
勇は枕元に置かれている時計を手に取り見る。針は6時30分を指していた。
(まだこんな時間か…もうちょい寝よ)
勇は再びベッドに寝転がる。
(………寝れん!)
窓を全開にする。朝の涼しい風が頬を掠めた。
寝ている間勇は自室のドア、窓を閉め切っている。
誰か覗いていたらどうしようとか誰か入ってきたらどうしようとか考えてしまい寝るときはドアを閉めている。ようするにビビりなのだ。
そのため風が部屋を通る事はない。毎朝熱がこもる部屋は地獄のようだ。
仕方なく体を起こす。勇は昨晩の事を思い出していた。
(何だったんだろうなアレ)
何か聞こえていたのは紛れもない事実だ。
やはり気になってラジカセの電源を怖がりながら入れる。
(何も聞こえませんように)
小さな願望を胸にスイッチに手をかける。
――砂嵐に似たノイズが聞こえるだけだった。ザーッと雑音が鳴るだけでそれ以外何も聞き取れない。
(ホッ、よかった何も聞こえん)
胸をなで下ろす。