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『打ち上げ』の打ち上げ

「……ニップレス、ニップレス、ヤッホー

 谷間に光ぃかる 真珠の汗だ

 砂まみれの ジャングルだって

 乙女のファイトは 止められぬ~

 ビーチバレ~ ビーチバレ~ 」


 私達は、高らかにビーチバレー部の応援歌を口ずさみながら、たまちゃん達の待つ『電カラ道場』の前までやって来ました。


 先輩達は恥ずかしそうに、私から十歩ぐらい離れて歩いてましたが、どうしてなんでしょう?


「はーい、先輩方、お待ちしていましたよ」


 たまちゃんが先輩達をお迎えしてくれました。

 かなちゃんが「祝打ち上げおめでとう御座います」というプラカードを背中から取り出して先輩に披露します。


「じゃじゃーん、今まで地上でご苦労様でした」


 それを見た先輩方はびっくりしています。


「我が私立巨砲学園の初ミッションを体験する先輩達の壮行会を内緒で計画していたのですわ」


 ひめちゃんが花束を取り出して、武田涼子先輩に手渡しました。


「お、お前ら~」


 涼子先輩はうるっときています。

 私達一年生からは、拍手が上がります。


「今日は『金の匙』で食べ放題じゃありませんけど、『電カラ道場』の貸切室を予約しましたので、そちらでパーティを楽しんで行ってください。もちろん、ケーキも用意してありますから」


「おお~、あかり~、苦節二年。こんな健気な後輩が入部するところまで、私達がんばったのよねぇ~」


 三年のお二人はお互いに涙を流して抱き合っていらっしゃいます。

 二年生の先輩達も「キャー」と言いながら私達に抱きつきました。

 私はひたち先輩にハグハグされちゃいます。


 ダイナマイトなバインバインが気持ちいいぃ。


 私達は『電カラ道場』の予約室にいそいそと向かいます。


「ジャジャーン」


 私とかなちゃんが扉を開け放っておふざけで手をひらひらとさせながら中を差し招きます。すると、カラーテープで飾り付けられた室内に、沢山のご馳走が並んだテーブルがドカーンとあるではないですか。


 先輩達は予想どうり「おおぉ~」と驚きましたが、部屋の準備を手伝えなかった私もびっくりしました。事前にお小遣いを出し合ったんですが、こんなに豪華な料理が並ぶとは想像以上です。


 私はひめちゃんを目で探して、アイコンタクトで「よくやったぞ、お前」とサインを送りました。


 私達はどどどっと部屋になだれ込むと、先輩達を中心にコーナー式のソファに着席しました。


「目出度く、キャノンが稼動し、これからの学園生活は地上と宇宙との行ったり来たりとなるでしょうが、我々ビーチバレー部が全員揃っているいま、僭越ではありますが『打ち上げ』パーティを開催させて頂くことにしました」


 たまちゃんはカラオケ・マイクを取り上げて話し始めました。すごいな~よくこんなにスラスラと言葉が出てくるよね~。


「今日は、楽しく食べて飲んで、親睦を深めましょう」


 その場の全員から拍手が沸き起こりました。

 ヒューヒュー。

 マイクが武田涼子先輩に渡されると、涼子先輩は滲んだ涙を拭き取りながら言いました。


「お前ら、なんていい奴等なんだ。あたしゃ、いい後輩を持ったよ、グスッ」


 先輩が挨拶している間にも、京子ちゃんとタマちゃんが卆なく全員のグラスにジュースを注ぎ終え、涼子先輩にもグラスが手渡されます。


「ビーチバレー部と素敵な後輩に乾杯!」


「カンパーイ!」


 涼子先輩の掛け声に全員が合わせます。

 私達は卓上に並んだご馳走にそれぞれ手を伸ばして舌鼓を打ちました。

 先輩達も私達もわいわい言いながら話が弾みます。


「ここで、クラブ活動では知りえない自己紹介をしてもらいます」


 かなちゃんが突然言い出しました。


「キーワードは、恋人、キスの体験、はずかしい癖、スリーサイズ。この四つから三つを選んで正直に答えてもらいます」


 すると、全員から「えー!」と言う声があがります。

 かなちゃん、これはかなりエグイですぞ@@


「先輩達が答えやすいように、一年生から告白することにします!」


 かなちゃんがそう言うと、一年の皆が「えええー」と言います。


「それじゃあ、私から。一年一組・山口かなです。彼氏は今の所いません、キスの体験は小五の時親戚のお兄ちゃんと、スリーサイズは上から、B78・W45、H80です」


 かなちゃんはある程度本当のことを話してるみたいです。私のバインバイン鑑定眼がそれを肯定してるからです。


「水沢京子です。あ、一年一組です。か、、彼氏は、二年三組の滝沢勇太さんです。キスの体験は、お、一昨日しました。スリーサイズは上から、B89・W59、H90です。キャー恥ずかしい……」


 京子ちゃんは真っ赤になって答えました。


「げげげー、た、滝沢か!」


「やりますわね、京子ちゃん」


「なんと、そこまで真面目にいいますかぁ」


 皆から驚きとどよめきの声が上がります。


 ああ、B89のホルスタイン様は新入生狩りでゲッツされてしまったのですね?(涙)


 こ、これは後から発表する人にとっては強烈なプレッシャーが掛かります。


「お次は私ですわね。スリーサイズは上から、B88・W56、H89です。彼氏はご結婚をお約束した四つ葉財閥の四葉邦彦さま、き、キスの経験はまだ御座いません」


 ひめっちもほっぺを赤くして話しました。

 ひめっち、婚約してたですか!


「一年一組・一ツ橋珠樹、スリーサイズは上から、B86・W57、H88です。」

 そこでたまちゃんはもじもじし始めました。

「わ、私の恥ずかしい癖は、あのう、そのう、お、男の人に近づくと、ドキドキして何も話せなくなることです。だ、だから彼氏はいません」


 う~む、そうきたか。これが演技だったらアカデミー賞級なんですが、天然ですからね。 たまちゃんは、想像しただけで赤くなっちゃうんです。今もユデダコみたいです。


「シャキーン!一年一組・高城亜樹、スリーサイズはB75・W47・H78。恥ずかしい特技はどんな体勢でもスイーツが食べられることです。チューは毎日しております」


 全員から「ウッソー!」と言う声が上がります。


「こりゃすげーわ、あきやるじゃん」


「嘘をつくんじゃない」


「見栄を張るのは大概にしたらよくってよ」


「わあ、あきちゃんも秘密のボーイフレンドいたのね?」


 一年の仲間から矢継ぎ早に抗議と激励の声が届きます。


「チッチッチッ、君達。私は嘘もついてなければ見栄も張っていない。ボーイフレンドなどいないが、キスなら毎日たまちゃんが寝込んだ後で……」


 一人を除き、その場の全員がドン引きしました。残った一人は青筋を立てており、結局私の頭にはでっかいタンコブができました。


「アハハハッ、最後の一人は論外ですが、一年の自己紹介は終わりました。先輩達の番ですよ」


 たまちゃんは作り笑いを浮かべながらそう言いました。お~いてて……


「二年一組・橘ひたち、スリーサイズは上から、B85・W50、H84です。恋人はいません。恥ずかしい癖は、ショーツを履かずに寝る事です」


 な、なんですと~これは、さっそく確かめに行かねば……メモメモ


「二年二組・横峰つつじです。スリーサイズは上から、B81・W52、H84です。恋人は同じクラスの高田次郎くん、ファーストキスはま、まだです」


「えー、つつじぃ、高田君と付き合ってたの?」


 窪田妙子先輩が、びっくりして叫びました。


「あんな、サルみたいな男に?」


「うるさいわね、高田君はすっごく優しいんだから!」


 つつじ先輩は、へそを曲げてそっぽを向いてしまいました。妙子先輩は「やっちまった~」顔をしています。


「え~コホン、二年三組・窪田妙子です。私の彼氏は、吉岡修一郎君と言います」


 二年生全員が「ドヒャー」と驚きました。


「彼は国立高等専門宇宙飛行士学校の二年です」


「ねえ、あかり。吉岡くんて友達情報によると、国立で二年生の主席になった人でしょ?」


 涼子先輩があかり先輩に、ヒソヒソと耳打ちしました。


「キ、キスの経験は、今年の四月にデートした時が最後です」


 さ、「最後」なんですね~@@ということは、毎回してるんですね~@@


「スリーサイズは上から、B87・W53、H88です」


 妙子先輩は、隠れおませさんであることが暴露されてしまいました。


「みんなぁ、浅田美奈だよ~。二年三組、彼氏はいっぱーいいます。キスは、え~と昨日はしたっけなぁ? あんまり良く覚えてませ~ん。スリーサイズは上から、B90・W60、H95です。」


 先輩達はある程度知っていたらしく、シラーとしていますが、私たちは仰天してひっくり返ってしまいました。こ、この人は魔性の女です@@しかも、とうとうバインバインも90の大台を突破しました。


「三年二組。吉田あかりです。スリーサイズは上から、B88・W55、H89です。か、彼氏は厚木基地のジャック・トンプソンくんです。キスは一週間前、飛行訓練で厚木に行った時にし、しました」


 あかり先輩もまっかになって言いました。たまちゃんタイプですね、そういえば何処となく似ています。


「よ、いいぞ先輩!」


「国境を越えた恋、なんて素敵」


 皆から冷やかしの声が飛びます。


「最後に三年三組・武田涼子、スリーサイズは上から、B95・W58、H90。彼氏はいない、キスもしたことはない。……だがあえて惹かれてる相手を告白するなら、君だ、高城亜樹」


 涼子先輩は赤い顔で、ビシッと私の事を指差して言いました。


「え?ええっぇ」


 皆はマジでおったまげます。私は何故か下を向いてポッと赤くなりソファに人差し指で「の」の字を書きたくなりました。バインバイン95には逆らえないわ……


 血相を変えたひめちゃんとたまちゃんが、私を渡すまじと涼子先輩の魔手から守ろうとしてくれます。


 興奮した涼子先輩は、あかり先輩が背後から抱きつき抑えてくれました。


 私たちは同じ旅館で寝起きを共にして、クラブ活動もいっしょにやっていたのに、たった四つの簡単なプライベートの事さえも知らずにいたのです。


 その後、皆は様々な只の「知り合い」を超えたトークに花が咲きました。


 最初は「歌でも歌って仲良くなろう」と言う企画でしたが、皆そんなことよりもお互いの「ちょっとした秘密」や男女間の知られざる駆け引きなどの話題で大いに盛り上がって、時間のたつのもわすれはしゃぎまくったのでした。


 皆の事を、更に大事に大事に考えるようになった『打ち上げ』パーティです。

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