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ビーチバレー部の陰謀

「……あ~、だからして我がキャノンが開発した再突入技術『フォノニック・ウイング』を使えば、突入の際の摩擦熱をウイングの方に効率よく逃がしてやる事ができ、機体の焼損を完全に防止する事ができます。因みにフォノニック・ウイングの……」


 その時、授業の終了を告げる太鼓の音が響き渡りました。

 地球帰還船授業の蒲先生は、禿げ上がった頭部を手ぬぐいで拭いながら首を傾げて自らの腕時計を確認しました。


「この授業は、これで終了ですが各自残った所をタブレットで読んでおいてください。では、おわります」


「し、しぬ~@@」


 私は真っ赤な顔で座卓にすがり付きました。

 みすず屋は、純和風な造りなので勿論、教室も純和風です。座卓に座布団、それに正座なので学生の殆んどが足が痺れあがります。


 授業が終わった後、生徒全員が机につっぷして悶えている姿は異常ですが、これも見慣れた光景です。


 早いもので、みすず屋での合宿が始まってから既に一ヶ月近くが経ちました。

 この一ヶ月の出来事を掻い摘んで説明しますと、結構な変化があったように思います。


 みすず屋初日の温泉うはうは騒動や、まくら投げ大会はお約束の出来事ですが、上級生のネルトン告白大会にはウンザリさせられました。(だって私は誰にも告られなかったからあんなの認められません@@)その際、結構な数のカップルが出来上がったみたいです。


 告白大会も一段落すると、私達は倉庫管理施設の体験授業やらバレット組み立て施設の体験授業で馬車馬のようにこき使われ、寺子屋授業の拷問に耐えつつ、すくすくと成長しているみたいです。


 あ、そういえば、私達のグループに宝塚姫乃さんが加入しました。というか、押しかけてきました@@だから今は五人グループです。


 ビーチバレー部の部活は、全校生徒に人気があり、常に立ち見の見物客で溢れています。(ギャラリーの殆んどが男子生徒ですが)私も皆を引きずって積極的に参加してます。(バインバインの為ですが……)お陰で上級生の先輩方ともすごく仲良くなりました。


 このみすず屋での合宿で最もすばらしい事は、キャノン・シティの繁華街でウィンドウ・ショッピングや「金の匙」でスイーツ三昧などが出来る事です。


「お~い、皆。復活したか~」


 かなちゃんが皆に声を掛けました。


「まあ、何とかな」

 とたまちゃん。


「この位、何でもありませんわ」

 とひめっち。(宝塚さんは『ひめっち』と呼ばれています)


「これだけは、いつまでも慣れないです」

 と京子ちゃん。


「うぃ~す」

 と私です。


「それじゃあ、行くとしますか」


 たまちゃんがそう言ってユラッと立ち上がりました。


「え~、どこ行くの?」


 私は足の痺れがまだ残っていて、ふくれっ面でいいました。


「チビッコは、忘れっぽいですわね。おーほっほ」


 ひめっちが口に手を当てて貴族笑いをしながら言いました。この人の喋り方はちょっと「むっ」としますが、根はいいひとなんです。


「『ビーチバレー部』の『打ち上げ』パーティよ」


 京子ちゃんが教えてくれます。


 そうでした。ビーチバレー部の先輩達が明日から『バレット』で軌道に打ち上げられるので、『打ち上げ』パーティを開く事にしていたのでした。


「たまき、『電カラ道場』の予約はOKなんだろう?」


「バッチリだよ。」


 たまちゃんはいつものクールな表情でサンブアップします。

 そうです、女子高生の打ち上げといえばカラオケスタジオでしょう。これはもう文化と言えますね。


「ひめとかなちゃんは、先に行って飾りつけやっといて? 私は持ち込みの食べ物を買い揃えるから、あきと京子ちゃんは先輩達を『電カラ道場』まで誘導してくるんだ」


 たまちゃんはテキパキと皆に指示を出します。ん~、かっこいい。


「あき工作員、任務了解いたしました」


 私はビシッと敬礼をして、京子ちゃんと一緒に寺子屋の教室から出撃しました。


 ビーチバレー部の先輩方は、たまちゃんの謀略によってみすず屋の軽食コーナーに集められているはずです。

 私達はナイロンソックススケート同好会が、ぴかぴかの廊下で練習をしているのを横目に見ながら、軽食コーナーに急ぎます。


 いました、居ました。

 ビーチバレー部の先輩達は、六人です。


 三年生の先輩が二人、吉田あかり先輩と武田涼子先輩です。もう、十八歳なのですごーく大人に見えます。


 二年生の先輩が橘ひたち先輩、横峰つつじ先輩、窪田妙子先輩、浅田美奈先輩です。


 皆さんそれなりにバインバインの人ばかりで、密かに私のハンドヘルドのバインバインデータベースに登録されています。


「ああ、京子ちゃん、あきちゃん、こっちよ」


 キャプテンの涼子先輩が私達を見つけて、声を掛けてきました。


「どうも、先輩方。お待たせいたしまして、すいません」


 京子ちゃんが、おっとり御しとやかに挨拶をします。


「ねえ、あきちゃん。新作発表で『金の匙』のケーキ只で食べ放題ってほんとなの?」


 ボーイッシュな髪の超美人のひたち先輩がニコニコしながら言いました。

 確かに、女を釣るにはスイーツ只で食べ放題は、絶大な威力があります。しかも、『電カラ道場』は『金の匙』の隣の店です。

 やるな、たまちゃんめ。


「はい! その通りですにゃ」


 私は慌ててカミカミで答えました。


「珠樹や姫乃やかなたちは?」


 ポニーテールの美奈先輩が聞きました。


「たまちゃんたちは、整理券を確保する為に先にいってます」


 京子ちゃんがいけしゃあしゃあと取って付けたような説明をします。


「楽しみね~、それじゃいきましょうか」


 横峰つつじ先輩が、そう言って皆をうながして立ち上がりました。


「では、ご案内するです。シャキーン」


 私は「ビーチバレー部ご一行様」と書かれた旗ざおを取り出すと、皆の先頭になって歩き始めたのでした。

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