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決戦!キャノン・ライナー

 今日から楽しい「夏休み」のはずなんですが、今年のいや、多分毎年この学園では「夏休み」はありません。


 この前の施設見学実習をする以前の私だったら、駄々っ子のように暴れていたでしょうが、今はそれほど不満が湧いてこないのは、私がおとなになったせいでしょうか? むふふふ……


 その代わり、一年生全員でキャノン・シティ(私達が勝手にそう呼んでいる)の温泉宿・みすず屋で合宿です。十種類の露天風呂、サウナ、地下水脈から水を引いた大規模な人工ビーチが、私達を待っています。


 それに、この学園に入学してから一度も会っていない先輩たちともお会いする事ができます。先輩達は私達の入学前から打ち上げ施設や軌道学園本校建設のために、キャノン・シティで実習作業をしていたのです。


 長くて短い時間でしたが、この北岳山麓の仮校舎ともお別れで、来年新入生が入ってくるまでは、校舎も閉鎖されて寂しくなるでしょう。たまちゃんと過ごしたこの寮の部屋ともさよならです。


「おお、たまちゃん。ミ・アモーレ」


「あき、なにベットの上で妄想にふけってるの? 早く準備しなさいったら。」


 たまちゃんのお叱りの声が掛かりました。


「折角開通したキャノン・ライナー、一日五本しか走ってないんだからね。お昼のに乗り遅れたら歩いてキャノン・シティまで行かなきゃいけないわよ」


 たまちゃんの目はヴァンパイアのように赤く光っています。


「あ~ん、たまちゃんは乙女心を理解しないのよね」


 私はシブシブ胸に抱いていたタヌキの縫いぐるみをスーツケースに詰め込みました。

 私達が持っていけるものは、巨砲学園の制服と下着類そして身の回りの小物類、あと僅かな私服だけです。


 私やたまちゃんは不便を感じませんが、クラスのお金持ちグループの宝塚さんなどは、学園に猛然と抗議したそうです。でも、彼女達の要求は当然かなう事はありませんでした。


「さて、いくよん」


 たまちゃんはそう言って、スーツケースをごろごろと押していきます。私も慌ててタマちゃんの後をごろごろと追いました。


 北岳の廃校になった中学校を利用した仮校舎に、売れ残りのハビタットを連結した学生寮などは、こうなることをあらかじめ予想して建てられたのだとつくづく思います。

 私達は、寮の出口で待ち合わせしていた水沢京子ちゃん山口かなちゃんと合流してブラブラと校門の前にあるキャノン・ライナー乗り場に向かいました。まあ、入学してもう三ヶ月ですから、クラスの中にも仲良しグループが幾つか出来つつあるのです。


 水沢京子ちゃんはぽちゃぽちゃとしておっとりとした女の子。学食や寮の食堂(主にメニューの選べない寮の食堂)で、私が餌付けされて親しくなりました。

 山口かなちゃんは、この学校にしては背の高い人で、身長が百五十五センチもあります。その代わり、体はガリガリで胸はBカップです。彼女とは訳あって、里の飯田市のカラオケスタジオで私とアニソン・バトルを繰り広げた末、意気投合しました。


 ま、全部私絡みな訳ですが、最近は何かあるといつも一緒にいる仲良し四人組です。


「…噂によるとさぁ、三組の中根がね、うちの宝塚さんに告ったらしいんだよね」

 かなちゃんです。


「あらまあ…」

 京子ちゃん。


「ほう」

 たまちゃん。


「そんで?そんでそんで?」

 私です。台詞だけでト書きがなくても、誰が話してるか判るじゃありませんか?


 かなちゃんは結構乱暴な言葉遣い、京子ちゃんは上流家庭のご婦人のような雰囲気、たまちゃんはお武家さんの娘のような小股が切れ上がったような喋り方、私は……私は、うーん……ま、いいか。


 四人は、あーでもないこーでもないとお喋りしながらキャノン・ライナー乗り場に着きました。


 乗り場には既にかなりの数の生徒が、集まっており人でごったがえしています。

 確かに新入生だけで五百人いますからね。

 午前中のライナーの便は、あと二本あった訳ですが、学生の大半が女性だとこうなることは、予測して然るべきでした。


 ここにいる全員、「まじですか~」って顔をしています。そこへ、キャノン・ライナーの車両が到着しました。うひゃー@@列車編成はたったの2両です。

 その場にいる全員に戦場のような緊張がみなぎります。


 乗車扉が開くと、全員が一斉に馬鹿でかいスーツケースを抱えて扉に殺到しました。


「一組ー突撃ー」


 かなちゃんが雄たけびをあげます。


「京子ちゃんは私が守る、あきは下から潜り込め」


 たまちゃんの声です。


「こんなの、む…無理です~~」


 京子ちゃんの声です。


「どらどら? だれのケツじゃーこれは!」


 これは私。


「お~ほっほっ、お下がり、下郎」


 宝塚さんの声も聞こえます。


「あ~れ~、ここは天国ですかぁあ」


 倉山君の嬌声も聞こえた気が……。


 辺りは阿鼻叫喚、地下鉄のラッシュアワーよりもひどい状況が展開されています。


 それでも、車両にはなんとか全員が乗れました。一車両当たり二百人あまりがギュウギュウに詰まっています。

 私は一番のチビッコなので、丁度顔面が他の人の胸の部分に当たり、本当に窒息しそうです@@しかも、たまちゃんと京子ちゃんと宝塚さんの三角形に挟まれたものだからどちらを向いてもオッパイに囲まれてしまいました。更に足元にはスーツケースがいっぱいで、しゃがむことも出来ないときたもんだ@@


 いくら柔らかオッパイフリークの私でも、死んでしまったら元も子もありません。強烈なパイ圧の肉の壁の中で、グリグリと強引に頭をねじりようやく顔を上に向けて呼吸を確保しました。


 グリグリやってる間に上がった「アアン」とか「イヤーダ」とか「感じちゃいますわ」とかいう声は、当然『無視』です。


 私はブヒャー、ブヒャーという荒い息継ぎをして、やっと人心地がついたのです。


 そんな私を三つの顔が見下ろしていました。

皆さんの目の端には、お怒りの青筋がたっています。

 キャノン・ライナーは既に発車しているようでした。


「アハハ、皆さんこんにちわ」


 私は沈黙に耐えられなくなり、愛想笑いを浮かべて訳のわからないことを口走ってしまいます。

 私が喋り始めた途端、三人全員の顔がみるみる赤くなり眉間に悩ましい皺が寄るではありませんか。


「あき……喋るな、喋るんじゃない」


 たまちゃんが押し殺した声で言います。私の顎は、丁度たまちゃんのオッパイの谷間に挟まっています。右耳と右の頭には宝塚さんのオッパイが、左の耳と左の頭には京子ちゃんのオッパイがこれまた挟まっているのです。


「そうや、喋るんやないでぇ」


 宝塚さんもたまちゃんと同じように言いました。

 京子ちゃんはというと目を閉じてうっすらと涙を浮かべています。

 私が何か喋ると、その振動が三人のオッパイに伝わるようです。はは~ん、三人ともオッパイは弱点なのですね?(涎)


「わかったよ、たまちゃん。あきはいい子だから喋ったりしないよ」


 私は爽やかな顔でそう返事をしました。すると、皆さんのオッパイがプルプルと震えます。


「あ、あんた。悪い子やね」


 宝塚さんが悩ましげにいいます。


「え? そんなことないよ」


「だから……あき……喋るな」


「うん、あきはいい子だから喋ったりしないよ」


「あきさん、お止めになって」

 と京子ちゃん。


「え? あきは一ミリも動けないよ」


 私は格闘技で言う『マウント・ポジション』いや、押さえ込まれているのは私だから『逆マウント・ポジション』でしょうか?この状況を利用して、時間にして十分近く三人のおっぱいの感触を楽しませていただいたのです。


 このような至福の時も終わる時は来るもので、キャノン・ライナーは無常にもJRリニア巨砲駅に到着してしまったのでした。


 私達は車両からゾンビのごとく吐き出され、くたくたになってキャノン・シティに到着したのです。当然私の頭にはたまちゃん製のでっかいタンコブができましたが、意外な事に宝塚さんにはぎゅっと抱きしめられ仲良くなった様な気がします。


 私達はまた四人そろって、歩き始めました。


 一ヵ月半前にここに施設見学実習に来た時には、人影を見かけませんでしたが、今は結構人を見かけます。巨砲駅の乗降客出口は警備員さんが4~5人で警備をし、乗り降りする人も引っ切り無しです。施設がフル稼働状態になったのでしょう。


 私達は、駅前のバスターミナルから出ている例のゴンドラのような乗り物に乗り込み、列を成してみすず屋に向かいました。車中のお喋りも随分弾みます。皆全員大なり小なり興奮しているようです。


「よーし」

 と私は訳もなく気合を入れました。


 兎にも角にも、今日からみすず屋で合宿です。

 幸先のいい出発で合宿に向けた気合は十分な私でした。


大した枚数じゃありませんがUP

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