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JRリニア巨砲駅!

 「ブファ~……タマちゃ~ん。つかれたよ~」


 私は制服のまま寮のベットに倒れこみました。巨砲学園入学からはや一ヶ月。私は幸運にも一ツ橋珠樹ちゃんと同室になりなかよくなれたのでした。ちなみにこの学園は全寮制なのです。


「亜樹は要領が悪いのよ。今日だって無重量実習の時、スーツ付属の工具箱、ベースタラップに忘れてきたし」


 タマちゃんは、すごくキチンと整頓された彼女の勉強机の椅子に腰掛けてため息をつきました。私のゴチャゴチャした机とは対照的です。


「だって~、無重量実習ってプールの中なんだよ~。わたし、泳げないから怖くなって焦っちゃうんだもん」


 わたしは手足をばたばたさせてプール実習に抗議しました。タマちゃんは「しょうがないな」といいながらわたしの頭をなでてくれました。


「飯田プラザ・金の匙のチョコレートパフェで忘れてあげる」


 わたしは心の中でよだれを垂らしながらタマちゃんにかわゆく同意を求めるように言いました。


「なんだ~また~、亜樹はそんなに甘いものばかり食べて太らないの?」


「スイーツは空気のようなもんだよ。呼吸するように食べられるのだ」


 多分傍から見たらわたしの瞳はクリスマスツリーのように輝いて見えていたことでしょう。


「あっと、だめだ。今日は施設見学実習が入ってるよ。3時に校門に集合でしょ?」


「あ~そうだった~」


 なんかガッカリです。

 私達の学園は、過疎になったお下がりの中学校舎を手直ししたオンボロ校舎ですが、それ以外の設備は凄いんですよ。この寮だって、火星探検用に開発された『ハビタット』とかいうモジュールを繋ぎ合わせて作られているんです。(その会社はもう倒産してありませんが……)それに、私達の弾丸『バレット』が発射される発射場は、リニア新幹線・飯田駅の地下深くにあるんです。なんでも東京ドームの二十倍はあるんだって。


 今日は、一組全員でそこの見学に行くんです。


「亜樹~、早く着替えなさいよね」


 タマちゃんはもう制服を脱いじゃって、パンツとブラ一丁で言いました。

 タマちゃん、スタイルいいな~、B85・W57・H88ですね^^。身長が145センチだから、バストはGカップ超えてるかも@@。

 私はそんなタマちゃんの胸の谷間に顔を埋める想像をしちゃいました。(涎)


 私もあわててクローゼットから作業服を引っ張り出しにかかりました。


「でもさ~、うちの学校の作業服、なんかHっくない?」


 そうなんです、巨砲学園の作業服ってGスーツなんです。伸縮性の素材でよく伸びるんですが、体のラインが丸見えで恥ずかしい。


「なにいってんの?真空用の宇宙服のインナーなんか競泳用の水着より面積ちっちゃいじゃないの。それに比べたら随分ましよ」


 タマちゃんは作業服のジッパーを胸元まで引き上げながら言いました。


「亜樹~、早くしないと置いてっちゃうわよ」


「あーん、まってまって。」


 私は大急ぎで作業服を着込みました。

 タマちゃんは、私の憧れの人です。頭脳明晰、運動神経抜群で、とっても優しいんです。

私はタマちゃんを追いかけながら、校門に向かう間もタマちゃん妄想を楽しんでいました。


「いよ~す」


 背後から男の子の声がしました。倉山満君です。一組に五人しかいない男の子の貴重な一人でイケメンなんですが、私と同じくらいチビッコなのが残念です。


「おーい、そこの三人! お前らで最後だぞ。駆け足でこーい」


 校門のところで華子先生が、私達に声を掛けました。ハナキュン(私達は華子先生をそう呼んでいます)も作業服を着込んで、凄くHな格好です。横目で倉山君を確認すると、顔を真っ赤にして鼻血を流してました。


「この実習が終わったら、今週末は自由なんだから、ささっとバスに乗り込め」


「ハーイ」


「ふぁ~い」


 倉山君の返事だけすっごい鼻声@@。

 私達は、バスに乗り込むと手近の席に座りシートベルトを締めました。勿論、私とタマちゃんは隣同士です。


「さて、今回の見学実習だが、目的地に到着するまでに、今一度お前らに説明しておく」


 バスは発車しましたが、ハナキュンはバスガイドさんみたいに前の方に立って話し始めました。


「今回見学するのは、キャノンと呼ばれるバレットの発射施設だ。九月になれば、お前らもそれにお世話になるんだから、隅々までよく見ていざと言う時迷子にならないように注意しろよ?」


 ハナキュンはそこでチラッと私に視線を飛ばしました。あちゃ~、私のドジッ子は、既にハナキュンにはバレバレです~ぅ。


「キャノンは、JRリニア=飯田駅の地下百メートルに建設された広大な施設だ。全体はおおまかに三つの施設から成り立っている。


 第一施設は、ターミナル機能でキャノンの半分以上の容積を締める。バレットは次に説明する組み立てメンテナンス機能の部分で組み立てられる。そして三つ目が実際の発射施設『パウダー・チェンバー(薬室)』だ。


 ターミナル部は、飯田駅の直下百メートルの地点に建設され、バレットの組み立て部品や、搭乗員や整備員の入場・待機施設となっている。ターミナル部は四つの区画で構成され、それぞれ搬入入場ゲート、物資集積検査区画、パイロット及び職員待機宿泊区画、そしてキャノン全体を管理運営する区画だ。そこで働く人員は、常時五千人は下らない。


 搬入入場ゲートは、JR巨砲駅と呼ばれている。つまり、JR飯田駅の真下にもう一つJR巨砲駅があるわけだ。そこは貨物駅と旅客駅に分かれており、一般国民は殆んど利用する事が出来ない幻の駅だ。


 JRリニア貨物も、このキャノン専用に運行されており、出荷駅は、橋本・名古屋・新大阪にある。実際JRリニアの運賃収入は、キャノン関係が一般運賃を上回るほどだ。更にJRリニア線の線路下には、巨大な液化窒素・液化酸素・液化天然ガスのパイプラインが走っており、液化窒素のパイプラインに混入する形でドライアイス・ペレットも輸送している。JRリニアも我々のキャノンも超伝導技術を使っているので、お互い都合がいいのだ」


 クラスの皆は、「へー」「ふうん」「ほー」とか言っていますが、想像力の乏しい私にはさっぱりイメージが浮かびません。


「次は物資集積検査区画だ。この区画がターミナル部の七十%を占領している。大体東京ドーム十五個分だな。そこには五千万トンの二酸化炭素貯蔵タンク、ロケットモーター組立工場、チタン合板加工工場、軌道上の学園本校への物資貯留場などがある。


 次はパイロット及び職員待機宿泊区画だ。ここは、四番目の管理区画と一体になった小さな都市の様な区画だ。病院や保育園、一般職員の家族が通う学校、コンビニエンス、外食レストラン、スーパーマーケット、ショッピングモール、短期滞在者用ビジネスホテル、飲食店などの繁華街、長期滞在者用住宅、各官庁の出先機関、キャノンに製品を納入しているメーカーの支社、そしてキャノンの運営本部ビルなどがある。まあ、第二飯田市といったところだな。お前らも、ちょくちょく利用することになるが、現在は殆んどが準備中であまり面白くないので期待しないように。


 ちなみに、施設稼動時には、巨砲学園の校門前から『キャノン・ライナー』というシャトル列車が直通で運転される予定だ。何か質問は?」


 ハナキュンはそこで一旦説明を止めて、私達を見回しました。


「ハイ、先生。地上の飯田市への連絡口はないんですか?」


 後ろのほうから水沢京子ちゃんの声がしました。京子ちゃんは、わたし達と結構なかよしです。ぽちゃぽちゃとしてプニプニッとした可愛いメガネっ子さんです。


「あるぞ~。地下ターミナルのキャノン運営本部ビルから十二機の高速エレベーターが、JR飯田駅構内に繋がっている。更にそのターミナルの背後には非常用階段が六本地上に繋がっているが、私はそれを使用する気にはなれんがな」


 どひゃー、地上まで百五十メートル位あるでしょ。そりゃ……


「さて、次は組み立てメンテナンス施設だ。地下ターミナルから更に四百メートル下に東京ドーム8個分の区画がある。そこは『バレット』の組み立て基地で、最大十二機の『バレット』を組み立てられるハンガーになっている。また、ターミナル部に貯蔵されたドライアイスや燃料などの充填施設にもなっている。ここは学生のお前らにはほとんど縁の無い世界だ。組み立ては半自動化されていて二十四時間で十二機の『バレット』の組み立てが可能だ。質問はないか?」


 ハナキュンはペットボトルから青緑色の液体をゴクゴクと摂取しながらいいました。誰も質問する人はいません。


「ふむ、まあいいか。それでは三つ目の発射施設『パウダー・チェンバー(薬室)』の説明をするか。我々は通常PCと呼んでいる。


 PCは平たく言えばリニア線の発射駅だ。だが、施設全体は真空に保たれている。これは、爆発や火災などの防災機能も含んでいるが、『バレット』の発射時の空気抵抗を軽減する為の重要な処置である。また、『バレット』が通過する『バレル』と呼ばれるリニア加速トンネル内も同様に真空を保っている。『バレル』で真空を保っていないのは、先端の二ブロック二千メーターの区間だけだ。


 だれか、『バレル』の一部がなぜ真空ではないか説明できるものはいるか?」


 ハナキュンは指を左右に振りながら言いました。

 タマちゃんがサッと手を上げます。タマちゃんの所有者として(?)鼻が高いわ^^。


「まぁた珠樹かぁ~。しっかたねーな、模範の回答よろしくたのむ」


 ハナキュンは半分あきれた様子でタマちゃんを指名しました。


「はい、『バレット』はここ飯田市から北岳山頂までの約六十キロメートルの『バレル』内部で秒速三・五キロまで加速されるわけですが、いきなりその速度で平地の六十%の大気中に突っ込んだ場合、コンクリートに銃弾を打ち込んだのと同様の衝撃が『バレット』を破壊してしまう可能性があるので、先端部に二箇所の加圧ブロックを設けてその危険を回避するよう設計されています。


 更に、『バレル』の先端部(北岳山頂から更に千メートルの高さに建設された塔屋部分)はサイレンサー構造に設計され、『バレット』が射出されるときの音速の衝撃波を相殺する設計がされています。


 第一ブロックの加圧区画は、大気圧の五パーセントで、音速の衝撃波を発生しない圧力に調整され、塔屋の第二ブロックは『バレット』が進入した際、押しのけられた空気が外気圧と丁度同じになる圧力に調整されています」


 なんてこったい、そんなこと知らなかったよ~~タマちゃん@@。


「よく出来た、珠樹。お前ら、判ったか?」


 ハナキュンの声にクラスのみんなは首振り人形のようにシンクロして頷きました。


「という訳で、PCの船架台や作業区画は、真空の為、宇宙服を着用しての作業となるわけだ。勿論、構内を監視するモニタールームには空気があるから安心するように」


 ハナキュンはまだまだ喋り足りないようでしたが、バスが飯田駅に着いてしまいました。


 私達はガヤガヤと飯田駅ビルの特別区画へ移動していきます。一般の飯田市民のみなさんが、物珍しげに眺めていますが、キャノンの運営が始まったらめずらしくもなんともなくなるんじゃないかな~と思います。


 私達は国防軍とそっくりな制服の警備員さんの脇を抜けズラッとエレベーターだけが並んだホールから、十人ぐらいずつエレベーターに乗って地下に降りていきました。


 エレベーターはガラス張りで外の景色というか地下の景色が丸見えで、話に聞いていた地下施設の巨大さに圧倒されてしまいます。円形のドーム状の敷地なんですが、端から端まで二十キロ位あって向こうの端なんか霞んでよく見えません。真ん中あたりに巨大な斜路があって地下深くに消えていっています。私達は、唖然としてその光景に見入っていました。


「ねえねえ、あそこ。川が流れているわ!」


 水沢京子ちゃんが、驚きながら指差した先には、壁から滝のような水が施設の中に落下して川となって流れているではないですか@@。

 ドームの天井には青空や雲が投影されていて、ドームの床に立っていれば、ここが地下だとは誰も気付かないでしょう。


「あひゃー、タマちゃん、頭がクラクラしてきたよ~」


 私は渦巻きお目目でタマちゃんにしがみつきました。ついでに、あんなとこやこんなとも触ってしまいます。(役得^^)


「よーし、全員集合」


 エレベーターを降りると、ハナキュンが奇妙な乗り物の前でみんなを呼び寄せました。車輪が付いたボートのような乗り物です。


「このゴンドラに乗り込めー」


 乗り物についての説明はありません。

 クラス全員がどやどやと乗り込むと船っぽい車は、黙って走り始めました。この辺は、オフィス街のようで大きなビルが何本も立ち並んでいます。う~ん、地上の飯田市よりかなり都会です。一般人が立ち入り禁止なんて嘘みたい。


 ゴンドラの中は、三人がけのベンチシートが通路の両側に並び(私達おチビさんが三人なので普通の人だと二人かな?)、前から後ろまで八列ありました。

 私は窓側というか外側にいち早く座り、タマちゃんも私の隣に座ったんですが、タマちゃんの向こうに倉山君が座ったのです。最初私は気付かなかったのですが、タマちゃんが肘で私のわき腹をグリグリするので異常に気付いたのです。


 タマちゃんは、男の子が苦手です。いつもハキハキしてるくせに、男の子に近づくと顔を真っ赤にしてどもったりするんです。今も真っ赤な顔で私を見て困った顔をしています。


 ゴンドラのシートは、遊園地の乗り物と同じで、発進する前に金属のバーが前から倒れてきて体を固定する仕組みになっているので、席を替わってあげようにもどうにもできません。タマちゃんピンチです@@。


「おーい、全員右の方を見てみろ」


 ハナキュンが大声で全員の注意を引きました。

 ま、まずい。私が座ってる側の方向です。


「JRリニア貨物『流星号』が入ってくるぞ」


 全員がそちらの方向を向きます。当然興奮していますから鼻息も荒く、「おお、」とか「すっげー」とかみんなが歓声を上げて騒ぎ出しました。と言う事はですよ、倉山君の鼻息や吐息がタマちゃんに襲い掛かる事になるのです@@。

 案の定、タマちゃんは体をプルプルと震わせて、もじもじと身もだえています。凄くHな光景だ。あたしゃもう……じゃなかった、タマちゃん耐えるんだ!


「お前ら、今度は反対側を見てみろ」


 ハナキュンが全員に声を掛けました。助かった~、危機一髪です。タマちゃんもホッとして大きなため息をつきました。


「さっきは詳しく説明しなかったが、あれがお前ら学生の宿泊施設『地底温泉旅館・みすず屋』だ」


「おおお~~、なんですと~!」

 生徒全員から喜びの雄たけびが上がります。

 そこには、公園に隣接する広大な敷地に、木造平屋建ての旅館が建っていました。


「キャノンの施設を建設中にな、十種類程の温泉の源泉を掘り抜いちまって、せっかくの温泉を捨てちまうのももったいないんで、学生の宿泊用に余った土地に建てられたのだ。

 キャノン内で非常事態が起きたときに、高層ビル施設だと脱出に手間が掛かるので木造平屋建てにしたということだ」


 ケチでせこい巨砲学園に感謝感謝。


「十種類の露天風呂、サウナ、地下水脈から水を引き大規模な人工ビーチも併設されている。

 お前ら、山の学園で上級生に会ったことがないだろう?奴らは今、この旅館に宿泊してキャノン施設の実地研修中だ。ま、正直この温泉施設は、上級生のみならず教官にもすこぶる評判がいい。ちなみに、ここの名物は温泉タマゴだ」


 夢のような環境です。女子にとって温泉地に住むことは『理想』。お湯に入り放題、サウナ入り放題、人工ビーチで日向ぼっこなんてすんばらし~~。

細かい部分を修正しました。

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