妄想パレット
久しぶりの詩です。
まっさらな
白い大きな絵筆に
たくさんの水と絵の具を含ませて
ふりまわす、
絵の具はそこら中に飛び散って
色のついたしぶきを残した
ぼくは
ここにぼくがいる「証」を塗っていく
曇っていて、鈍い美しさを秘めた群青
つめたく深い青に沈んだ世界は本当にきれいで
ただ、月だけが白く光っていた
青白い光のその先に
誰かが立っていた
頬に一筋だけ群青をつけて
ぼくをじっと見ていた
ぼくはもう一度絵筆を振り回して
濁った色水でバケツを満たしていく
巨大な、白く滑らかなパレットにのっているのは
ぼくが みたことのない いろ
少し、絵の具を混ぜすぎたか
嫌な色、思いを込めにくい色だ
ぼくは美しい群青の上に
たくさんのものが混ざり合ったその色を大量に塗りたくった
できあがったのは
優しい、からっぽの、あたたかな世界だった
これは 誰の 色だろう
ぼくの 影の 伸びた先に いる人の 色だ
ぼくは絵筆をがむしゃらに動かし続ける
下手くそな言葉と、まだ未熟な思いを
あふれるままにばらまいて
ぼくのなかの世界というパレットを汚し続ける
だから
あなたが
月の下のあなたの世界を失わない限り
この、まっさらなパレットは、
永遠にあなたのものだ
お読みいただきありがとうございました。