story of 6
「きやぁぁぁぁぁあああ!」
少女の声は学校中に響き俺に突進してきた怜はそのまま気を失い、気絶をしてしまった。
さすがに女の子1人で夜の学校は悪いかなと寮に連れ戻そうとしたがものの…
良かれと思った行動が悲鳴へと豹変するとはな。全く…
人生どうかしてるぜ。
「………」
項垂れている怜をおんぶで持って帰ろうとしたけど…っこいつ
めちゃくちゃ重たい…。
寮に行くより体育倉庫の方がこっからは近いし…今夜はそこで寝てもらおう。
俺は大体2倍と膨らんだ重い足を1歩1歩確実に踏み下ろしていた。
何だったら俺だって寮の友達んとこのベッドでぬくぬくと体を暖めていたかったんだが…まあ
「…しょうがないか」
月光が光源となった俺達の歩む廊下は不気味な雰囲気とまた神秘的な雰囲気を醸し出す。
毎日駆けて通る道も一度はゆっくり誰かを背負いながら歩くのも良いことかもしれない。それも真っ暗な真夜中に。
息切れによって残る口の違和感がこの時だけやたら心地よく感じた。俺達が東京に閉じ込められると言う異常な事から始まった見知らぬ少女との学校宿泊が甘いことなのだと暫くしてから痛感するとはこの時全く思ってもいなかった。
今頃、新聞やニュースなどメディアが大混乱するだろう。それから国会が動き出して…ああその前に自衛隊が動くだろう。
しかし我々を守る側の人間はあの壁を見たのだろうか?電車を粉砕してしまうほど強靭な耐久を持つあの壁を見れない人間が我々を救えるのか?
そんなこと誰もわからない。わかるはずがないのだ。
体育倉庫に着いたとき、伶はこれまた開けっ広げに可愛い寝顔を振り撒き、俺の目の下には黒い帯が姿を現していた…
疲れた…軽い息切れも最初は心地よかったもののそれが続くとなかなか辛いものだ。
あのもふもふした大きくて分厚い高跳びに使うあのマットに女の子を寝かせ、俺はマット運動に使う少し硬いマットに身を預けることにした。
体育倉庫の埃っぽくカビ臭い匂いがこれがまた懐かしく気持ちいい。
小学校以来だろうか。体育倉庫にゆっくり寝転がるのも…
あの時はたしかー…開脚前転が出来ないから拗ねて体育倉庫に引き込もっていたっけ。今となってはロンダートはおろか、最早アクション運動となっている。
それが元に新体操部の勧誘がしつこい。
疲れた体がだんだんと軽くなって瞼は反面重くなってゆく…
ああ…俺は体育倉庫で女の子と2人きりだと言うのに何も起こさず眠ってしまうのか。向こうは無防備だと言うのに…
俺は体を起こそうとしたけどいつの間にか深い深い眠りに、カビの臭いと共に落ちていった―――。