story of 5
それにしても寒い…
寒すぎる…か弱い私には少し身に答えるわ。おばあさんじゃあないけど。それに真っ暗な学校のあの曲がり角から何かが出てくることを想像すると…もう余計に震えが体の芯を揺らす。
それにしてもあの男!何よ!椿っていったっけ?ちょっと顔が広いからって寮の顔見知りって言う寝床が見つかるや否や私をほっぽりだしてこう言ったのよ?
「後は寝床は自分で見付けるんだ」
冗談じゃないわ。幻の体育専攻の私に寮のある友達なんて居ないし…抑、女子なんて私を含めて2、3人しかいない。
そんな私に寝床なんてないのよ…
かつ…かつ…かつ…
私の足音は暗闇の廊下へと吸い込まれてゆく…
それにしても…怖い…。
確かに体育倉庫に向かってるはずだけど…
勝手が違う。今までの昼の明るい廊下とは一転、まるでリアルすぎるお化け屋敷を歩かされてる様…。
私は怖いものは全て無理だ。お化け屋敷も誰かと入る事すら精一杯。1人で歩くなんてもっての他。
なのに…この状況…酷い。酷すぎる…。
教室の窓1つ1つ覗いては誰も居ないことを確認すると同時に怖さも増える。「…はあ…寒い…」
さっき全速力で走ったせいか体が自棄に重たい。錨を引きずって歩いてるように感じる。それにしてもあの椿って男…何かおかしい。私は足の筋力が超人的に強いと称されて体育専攻に呼ばれたはず。
なのにあの男、息1つ切らさず追い付いてきた…。
からん…!
「…っ!?」
不意の後ろからの物音…!
何かの気配を感じる…!
何か…いる!
勇気を持って振り返るとそこには…!
案の定何もいなかった。はっと胸を撫で下ろしてまた前に進もうとすると…!
「………ひ…」
声にならない悲鳴が私の声帯を潜り抜ける。
そこには――――口が裂けるまでニヤニヤとした練っとりとした長い髪の毛を持つ少女が壁からこちらを見ていた…。
「…き…ぎぃゃ……っ!!」
自分でも何を言っているか分からずとにかく走る。
足ががくがくと震える前に走る。
どこに行くのか分からず走る。
怖い…怖い怖い怖い怖い怖い!!
後ろを確認してあの女が着いてきていないことを確認して階段を登る!
何…何何何何!?!?さっきの女の子!?見たことないし…そもそまこんな時間だよ!?
いやいやいや…ありえ―――
どす…っ
頭が何かに当たる衝撃……!
もしかして…………
「きやぁぁぁぁああああ!!」