story of 4
何も分からない。なぜランニング中に電車があの薄緑に衝突し粉々になったのも、あの薄緑が何なのかも、何故あの現場を見たのが俺、緋原椿と伶だけなのかも……
ただ1つ分かっているという事は伶が運動バカということ。
この細い足のどこにあの脚力があると言うのだ。笑わせるな。しかもそれが美人……髪の毛だって潤い、艶やかである。
まあそんなことはどうでもいいとして…
「俺が推測するに、周りの郊外が潰れたり立ち入る事の出来ない状態になったんじゃなくて……俺達東京にいる人間が東京と言う区間に閉じ込められた…」
「それに今の時代何でか東京に家を持つ人が居なくて会社やら職場に出勤してるから今の時間一番人が多いってわけね」
伶が俺から奪い取るように説明してきた。
「それが過度のドーナツ化ってわけだ」
そう言い返すと伶は知っていなかったのかむーと口を尖らせた。
冷たいそよ風が俺達を仰ぐ。時は2月…それに多摩川の上だからか冷たい風が止むことを見せる素振りをしない。
俺達ね白い息は疑問と謎の暗闇に流されて行った…存外、その混沌とした暗闇に手を差し出すことは俺にとっては怖くて出来なかった。それにこの微動だにしない薄緑もこの時俺は触れていなかったのだ。
「とりあえず…ここを出ないか?寒くて風邪ひいちまうし…」
何より俺は疲れきったこの体を癒したいのだ。
「……やっぱり、神奈川に出るのは…無理だよね…」
俺が無理だと言おうとしたらそれを遮るように伶は続けた。
「…でも!他にもあるじゃん!千葉とか…埼玉とか長野とか!」
少女よ。長野は隣じゃあないぞ。山梨だ。多分。君の言いたいのは
とりあえず携帯電話で検索してみる。
…っと
「だめだ…やっぱり東京は完全に孤立してる…!」
「……」
強く握りしめられた少女の拳は小さいのにやたら大きく見えた。
「……震えてるな?怖いのか」
「…寒いのよ!ばかっ」
俯きながら伶は汗ではない透き通った…まるで触れたら何処かへ消えてしまいそうな液体を
ぱたぱたとスカートに落とした…
「泣いてる場合じゃねえんだ。こっちは寒くて死んじまいそうなんだよ…うぅ」
「泣いてないわよ!…学校に戻ろう…あそこの寮なら少しは空いてるはず」
こうして俺達は奇妙なラブコメのように出会ったんだが…
奇妙にも奇妙すぎてその少女は涙を流してしまった。
「泣いてないから」
その上少女は運動ばか。長野と山梨の区別がつかない。
「うるさい」
とりあえず学校は寒さも凌げるし、いざとなれば寮だって体育館倉庫だってある。
「黙れ変態」