story of 3
「電車が駄目なら…人体じゃだめなのかって…試してみたかったの」
目を冷ました少女は事情をこう話し、続けた。
「そしたらこの通り人体どころか虫1匹も通れないじゃない。…見たの…」
「何を」
「電車よ…話しても誰も信じてくれない。どうなってるのかしらね…粉々に砕け散っちゃったのよ…跡形もなく。部活さぼって見てた私は周りの人達に言ったけど…誰も信じてくれないだから!あんたにも関係ないのよ」
少女は1人尻をつきながらうつむき空しく嘆く。その可愛らしい声はなんとも素早く俺の頬を抜けていった…
冷たい風がその頬を突き刺す。
「安心しろ」
少女は不意に俺が喋ったからか少し驚いた顔をしてこちらを上目遣いで見る。
「悪い夢さ」
〇
何で俺はこんなにもパニックなのに冷静なる演技を出すことが出来るのだろう。
「見たの…?」
「ああ」
「…………」
少女は黙りこみ口も聞かなくなった。どうにも掴めねえんだが…。
全く知らない女にこんなことするとは思わなかった。
こんな話するとは思わなかった。
ただ俺も何が起きてるか分からず頭がおかしくなってるのかもしれない。
何しろ俺は女とは全くと言えるほど関係が皆無だからな。
こんな美少女と話すとは…ついに来たか!
モテ期!
「まあ…あれだ。これも何かの縁。俺は緋原椿。お前は?」
「…何出会い求めてんの気持ち悪っ!そもそも女の子走って追いかけるなんてサイテー帰れ。死んだ方がまし変態」
「……。名前は」
「……伶。人辺に命令の令でれいって読むの」
何この無愛想。めっさムカつくんすけど…ちょっと額にあるデカイたん瘤もっかい殴っていいすか?
ってか…この制服…
「あんた…もしかしてうちの学校?」
「私立与志夏高校体育専攻」
「体育専攻!?うちはそんなのねえよ!」
俺が大声でどつくと伶はため息を着きながら割って入った。
「あるの!公には公表されてないし、学内の生徒もあんまり知っていない」
体育専攻。そんなの聞いたことがない。俺はこの平凡な私立高校に受験した時をはっきりと覚えてるんだ。そんな専攻なんてうちにはあるはずがない。
ってことは…嘘をつかれてる…?
「…生徒証だ。生徒証を見せろ」
俺の目が疑いの目に変わったことを悟り、伶はその長い髪の毛を払ってカードをつきだした。
『吉田 伶 私立与志夏高校体育専攻…』
「どう?信じてもらえた?体育専攻は普通学科とは違って人間の潜在能力ってゆーの?それが人並み外れた人間しか入れないの。何でも与志夏が研究の為に作った学科ならしいけど…学費は半分。食堂のご飯も半値。肉体改造されるわけじゃなし、悪いことは無いから自宅に配布された応募用紙を書いたら見事、受かっちゃったって訳よ」
「………」
「個人の自宅に応募用紙を配布すれば公にもばれないですむ。だから皆知らないのよ」
「分かった…信じよう」
確かにそれなら照明が出来る…さっきの足の速さ…あれは尋常じゃなかった…それに
この伶がバカなのも証明がつく