黒髪の少女
今回はちょっと短め。
今までとは少し雰囲気が違いますね
ティラミスの入れたローズティーを前に、客は戸惑っていた。終始落ち着きなくあたりを見回している。
「まず、お名前をお聞かせ願えますか」
ガナッシュが黒い手帳を開きながら言った。
「あ……南洋高校1年の、八木百合子です」
真っ黒な髪をお下げに結び、真っ白な頬には全く化粧っ気がない。16歳の彼女は実年齢よりかなり幼く見えた。
戸惑いながらティーカップを持ち上げる彼女の白い指先には、きらきらと光る指輪がはまっている。
南洋高校はガナッシュたちの通う学校だが、4人はあえて反応をしなかった。素性を明かさないためだ。いくらチャラチャラしているティラミスやミルフィーユも、それくらいのプロ意識はある。
「今日は何のご用事で?」
ガナッシュが黒い手帳を開きながら尋ねると、百合子は慌ててティーカップをソーサーに戻した。
「あのっ……その前に、代金っていうか報酬って……」
「報酬はあなたの一番大切なものを頂きます」
後ろに立っていたティラミスがにこやかに答える。百合子は何だか落ち着かない様子で、ぎこちなく肯いた。
ポイズンショコラは、思いをチョコレートにするお店だ。お客様の大切なものから抽出した『思い』をチョコレートに込めて、望みをかなえる。
しかし『思い』を失ったものは、塵となって消え、もう元には戻らない。
ガナッシュは百合子の動揺が落ち着くのを待って尋ねた。
「それで、今日は何のご依頼で?」
すると次の瞬間、彼女はその幼げな見た目に似合わぬ言葉を何のためらいもなく発した。
「殺してほしい人がいるんです」
どうでしたでしょうか?
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