ガナッシュの気持ち
サブタイトルとか考えるの難しいんですけどー……
みなさん、どうやって考えてるのでしょうか?
「あきら。何やってるの?」
隣から聞きなれた声が聞こえた。業務時間外と判断したのか、本名で呼びかけてくる。
「ひかる……」
いつのまにか隣にミルフィーユが座り込んでいた。にこにこと微笑みながら、軽く手を振っている。
「別に……何でもない……」
照れもあって、ふっと顔をミルフィーユから背けた。
「そう? こんな薄暗いところで膝抱えて何やってたの? 餅つき?」
「んなわけないだろ」
いつもの冗談に、ふっとガナッシュの表情が緩んだ。その笑顔を見て、何食わぬ顔で、ミルフィーユはもう一度口を開いた。
「嘘。彰、お父さんのこと考えてたでしょ?」
ガナッシュの笑顔が凍り付いた。次に、少し斜めにうつむいた。
「考えてないよ」
必死に隠そうとしているのが、ミルフィーユにはよくわかった。昔から何かを我慢したり隠そうとするとき、ガナッシュはこうやって変なうつむき方をする。
「俺の前でやせがまんしなくてもいいじゃん」
そう言ってミルフィーユはガナッシュの背中に手を置いた。小刻みに震えている。
「……考えた。すごい久しぶりに」
しばらく時がたって、ガナッシュが小さく呟いた。耀は静かに相槌を打つ。
「ミス・アールグレイに親父のこと言われて。出て行った時のこととか、思い出してた」
「ああ……」
ミルフィーユも思い返していた。あれから時がたって、少し大きくなった二人がお互いに覚えている部分をつなぎ合わせてつくった共同のビジョン。
「……どうだった」
どう言ったらいいのかわからずに、ミルフィーユはちょっと外れたことを尋ねてしまった。でもガナッシュは、珍しくそれに気づかない。
「……何か、めっちゃ悲しかった……」
少し言葉の末尾がぶれる。小さいころから、ガナッシュはこういう泣き方をする。ミルフィーユは強がりな双子の兄を眺めて、少しため息をついた。
「彰って、昔っから素直じゃないねえ」
ガナッシュの震えがぴたりと止まった。彼が顔を上げるより早く、ミルフィーユは口を開いた。
「泣きたいなら、泣いてもいいのに」
そう言って、背中に触れていた手にそっと力を入れた。ガナッシュの体がミルフィーユの肩口へ倒れる。鼻をすすりあげる音が聞こえる。ガナッシュがしゃくりあげる音も聞こえる。
「ひかる……俺やっぱり父さん嫌いだよ…………」
泣きながら呟くガナッシュに、ミルフィーユはうん、うん、と優しく相槌を打つ。聞いてやることしかできない。
「泣き止むまでいてあげるから……」
ガナッシュの背を優しくさすりながら、ミルフィーユは考えていた。
どうしてこんなに、彰は父を憎むのか?と。
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