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Poison Chocolat  作者: ミルク・ショコラ
エピソード1
1/8

ポイズンショコラ

初☆投稿です!ミルクさんは忙しいのでショコラが前書き書いてます♪では、どうぞー

森の中にある小さな洋館――――――――


その名は「Poison Chocolat」


今日もそこでは甘く危険な香りが漂う―――――――



「おい、耀! にーちゃんが呼んでるぞ!」

「ん、ありがとー」

 ある日の昼休み。お弁当の包みを広げていた緋月耀ひづきひかるは、級友に呼ばれて重い腰を上げた。後ろの扉を見ると、双子の兄のあきらが立っている。

「何?」

 耀はぶっきらぼうに聞いた。すると彰は筒状のものを突き出した。

「水筒、忘れてった」

 耀はそれをひったくるように受け取った。

「ありがと」

「ん」

 とは言うものの彰は動こうとしない。耀はイライラしながら言った。

「もう用ないよね?」

「ないな。帰るわ」

「ん、じゃね」

 耀は早口でそう言うと背中を向けて戻って行った。それを見届けて彰も歩き出す。

「ねぇねぇアンナ! 今日ごはんどこで食べるー?」

 彰の横を5組の紫堂しどうアンナと桃瀬ももせマリアが通り過ぎて行った。

「どこでもいい……」

「じゃあトイレ?」

「それはイヤ」

 楽しそうに話す二人を眺めながら彰は心の中で呟いた。

『今日も平和だな……』


 外はついさっき雨が止んだばかりで地面はぬかるんでいる。彰はその場所へ続く道を一人で歩いていた。後ろからは、男子の集団の騒ぎ声が微かに聞こえる。どうやらその中には耀も含まれているようだ。

「あ、じゃあ俺こっちだから! バイバイ!」

 後ろが急に静かになって、聞きなれた足音が響く。

 その場所がどんどん近づいてきて、彰はポケットから派手な装飾な鍵を取り出した。


「やっと着いた!」

 マリアは嬉しそうに言ってドアノブに手を掛ける。アンナは何も言わない。

 カランカラン♪

「遅いぞ、お前ら!!」

 ――――――我らがリーダーはテーブルを拭きながら待っていた。


「しょーがないじゃん! 数学の平松につかまって大変だったの!」

 マリアはかばんを床に置きながら叫んだ。その声に反応して、チョコレートをつまんでいた耀も顔を上げる。

「俺も平松嫌い」

「そうよねー、アイツうるさい!」

 いよいよ本格的に愚痴大会が始まる気配を察知したのか、今まで何も言葉を発しなかったアンナが言った。

「愚痴はいいから、そろそろ着替えましょう。……店長さんがうるさいわ」

 今にもキレそうな彰の顔を見て、三人は黙って席を立った。


「――そろったな。始めるぞ」

 四人は円になってテーブルを囲んだ。

「今日は……」

 黒い手帳を片手に話し始めた少年は彰。またの名を、『ガナッシュ』という。

 ここ『Poison Chocolat』の店長であり、個性的な店員たちをまとめるリーダーだ。それ故なのか、学校では比較的穏やかだが仕事には誰よりも厳しく、妥協を許さない。今日もきちっと着こなした燕尾服のすそを翻しながら、仕事に励んでいる。


「で、坂下夫人の睡眠薬だが……」

 ガナッシュは説明していた手をふと止めた。

「おいミルフィーユ。まさか寝ているのではあるまいな」

 『ミルフィーユ』、と呼ばれた少年――――すなわち耀はあわてて顔を上げた。視界がぼんやりするようで、目を何度かしばたかせる。

「ね、寝てなんていないよ!」

 否定する手の動きに合わせて、明るいブラウンの髪が揺れる。あまりに激しく振ったので、頭に乗せていたミニハットがずり落ちた。柔らかく社交的な性格の彼は、髪と同色の瞳でガナッシュをみつめる。

 黒曜のような髪を持ち、冴えた黒瞳くろめのガナッシュ。あめ色の髪と甘く輝く瞳をもつミルフィーユ。

 この二人が双子だと瞬時で見抜いたのはまだこの世に二人しかいない。そのくらい共通点のない双子だったが、それはそれで新鮮でいいらしい。


「それに、ティラちゃんもぼーっとしてたよ!」

「ひっどーい! そんなふうじゃないわ! 濡れ衣よ!」

 ミルフィーユの言葉に、明るいオレンジ色の髪をきつくツインテールに結んだ女の子が立ち上がる。

「ミルちゃんのおバカっ!」

 フリルを付け足したゴスロリの袖で、力任せにミルフィーユの頭をはたく。

「痛ッ! ティラちゃんごめん」

 ミルフィーユは叩かれた場所をおさえながら謝った。

 彼女――マリアのことを『ティラちゃん』と呼ぶのはミルフィーユだけで、彼女の別名は『ティラミス』と言う。

 甘えん坊でいたずら好きな性格はミルフィーユと非常に合うらしく、二人はお互いのことを『ミルちゃん』『ティラちゃん』と呼び合うほど仲が良い。

「ティラミス。その辺にしてあげなさい、ミルフィーユが可哀そうよ」

 ポカポカとミルフィーユの頭を叩いているティラミスを、『タルト』の名を持つアンナが止めた。

「タルト! でも!」

「大好きなミルちゃんに嫌われちゃうわよ?」

 タルトの的を射た発言に、ティラミスは黙って着席した。タルトは何事もなかったかのようにガナッシュの話を促す。

 少し紫が入っているのかすごく落ち着いたストレートの黒髪に、背筋を伸ばして座っているところは、とてもティラミスと同い年には見えない。その落ち着きとリード力から『影の店長』と呼ばれている。


「まあともかく、今日優先すべきは浅香夫人のご依頼だ! ご主人暗殺のためのエクレアを作る。いつものように、タルトは俺と一緒に薬の調合! ミルフィーユとティラミスはエクレア作り!」


 そう、この四人は人を殺すこともできるお菓子『Poison Chocolat』を作っているのだ。




どうでしたか?感想、評価等よかったらよろしくお願いします!

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