第十三話「聖女の決意」
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教会の分遣隊への潜入を決めたカインとリーリア。
しかし、潜入にはリーリアの「光」が大きな障害になります。
二人は、新しい戦い方を模索し始めます。
分遣隊への潜入まで、三日。
クロウの案内で、カインたちは目的地の近くまでやってきていた。
山の麓に隠れた洞窟。そこを一時的な拠点にして、作戦を練ることになった。
「さて」
クロウが地面に簡単な地図を描いた。
「分遣隊の配置はこうだ。本館、兵舎、そして地下の文書庫。警備は二十人程度。夜間は半分以下になる」
「夜に動く、か」
「ああ。問題は……」
クロウがリーリアを見た。
「聖女様の『光』だ」
【光の問題】
リーリアは自分の手を見た。
奇跡を使う時、彼女の手は淡く光る。
暗闘での潜入には、致命的に目立つ。
「私が足手まといになる……」
「そうは言ってない」
カインがリーリアの肩に手を置いた。
「お前の力は必要だ。問題は、どう使うかだ」
「でも、光を消すことはできないわ」
「なら、消さなくていい」
カインが考え込んだ。
「光が目立つなら、それを逆手に取る方法を考えよう」
【閃き】
その夜、二人は洞窟の中で話し合っていた。
「なあ、リーリア」
「何?」
「お前の光は、強さを調整できるか」
リーリアは少し考えた。
「ある程度は……。強くすることも、弱くすることもできるわ」
「なら、一瞬だけ強烈に光らせることは?」
「多分、できると思う」
カインが頷いた。
「それだ」
「え?」
「光を消すんじゃなくて、光で目を逸らす。……閃光だ」
カインが説明した。
「潜入中に見つかりそうになったら、一瞬だけ強い光を放つ。敵の目が眩んでいる間に、俺が無力化する」
「……なるほど」
リーリアの目が輝いた。
「光を隠すんじゃなくて、武器にする」
「そうだ。お前の力は、俺の技術と組み合わせれば、もっと活きる」
【共闘訓練】
翌日から、二人は訓練を始めた。
「リーリア、今だ」
カインの合図で、リーリアが光を放つ。
網膜が焼けるような白光が洞窟を満たす。
影が岩肌に濃く焼き付くような、凄まじい一瞬。
その隙に、カインは仮想の敵に見立てた木の人形の背後に回り込んだ。
「どうだ」
「……すごい。一秒もかからなかった」
リーリアが目を丸くした。
「お前の光のおかげだ」
カインが汗を拭いた。
「タイミングが合えば、複数の敵でも対処できる」
二人は何度も繰り返し訓練した。
カインの合図。
リーリアの閃光。
カインの無力化。
最初はぎこちなかった連携が、次第に滑らかになっていく。
「カイン、次はもう少し早く合図して」
「分かった。……リーリア、光の範囲をもう少し絞れるか」
「やってみる」
二人の息が、少しずつ合っていく。
【もう、隠れない】
訓練の合間、二人は岩に並んで座っていた。
「ねえ、カイン」
「何だ」
「私、変わったと思う?」
カインはリーリアを見た。
「……ああ。変わった」
「どんな風に?」
「最初に会った時、お前は震えてた。笑顔の下で、怯えてた」
「……うん」
「でも今は、違う」
カインが空を見上げた。
「お前は自分で考えて、自分で動こうとしてる。……それは、強くなったってことだ」
リーリアは少し照れたように笑った。
そして、真剣な顔になって言った。
「私はもう、あなたの後ろに隠れているだけの『聖女』じゃない」
「……ああ」
「一緒に戦う。……あなたと、肩を並べて」
カインは一瞬、言葉に詰まった。
処刑人の息子が、聖女を戦いに巻き込む。
それは本来、あってはならないことだ。
でも、彼女の目を見ていると、罪悪感よりも別の感情が勝った。
信頼。
そして、心強さ。
カインは小さく笑った。
「頼もしいな」
「当然よ」
リーリアが胸を張った。
「私は、カインのパートナーなんだから」
その言葉が、カインの胸に温かく響いた。
【出発】
三日目の夜。
カインとリーリアは、分遣隊へ向けて出発した。
「準備はいいか」
クロウが訊いた。
「ああ」
カインが頷く。
「俺は外で待機している。何かあったら、狼煙を上げろ」
「分かった」
カインはリーリアを見た。
「行こう」
「うん」
二人は、闇の中へ消えていった。
第13話、リーリアの成長と、二人の共闘訓練でした。
「光を消す」のではなく「光で目を逸らす」。
リーリアは、自分の力を新しい形で活かす方法を見つけました。
そして、「あなたの後ろに隠れているだけの聖女じゃない」という宣言。
彼女は確実に、強くなっています。
次回、教会の分遣隊への潜入。
しかし、そこには予想外の光景が待っていました。
「二人の連携エモい!」「リーリア強くなった!」と思っていただけたら、
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