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無銘の鍛冶師  作者: 星砂
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五話

最初は四話だった部分なんですが、なんか分けたほうがいいかなぁと・・・


「また、放課後にねっ」


昼食時間終了の予鈴が鳴り響く中をココから一番遠い場所に教室があるアルトはあわてて弁当箱を抱えなおして走っていった。


今にも転びそうな頼りない足取りで走っていくアルトを眺めながらリシャはゆっくりと自分の横を歩く幼馴染に言う。


「あれ、ほっとくと自己嫌悪に首までどっぷりはまっちまわねぇ?」


本人はいたって普通に振舞っているようだが昔から落ち込みだすと大変なのだ。


「私達が今何を言っても逆効果だろう・・・」


「だからって何もしないってのもまずいだろう」


ふむ、とラディウスは考え込むと、唐突なことを言い出す。


「今魔法科の一年にはアルトのお眼鏡に適う者がいない」


「あ?」


リシャはあまりに取り留めの無いことに間抜けに声を上げた。だが、ラディウスはそれにかまわずに続ける。


「アルトはココの基準では測れない腕を持っていることを私達は知っているが、周りは知らない」


「あぁ」


意図のつかめないラディウスの言葉にリシャは首をかしげながらもうなづく。


「ならば実力を見せ付けてやればいいと思うのだが、あいにく魔法科にアルトの創作意欲を掻き立てつつ、周りを納得させられるだけの実力のある者がいないんだ」


「あー・・・なるほどねっ」


ようやく見えた意図にリシャは自分の燃えるような緋色の髪をガシガシとかき混ぜた。


アルトの長所であり欠点。


使い手の分からない武具を作れないのだ。


作ろうとすれば、型ではめたような何の特徴も無い物が出来上がる。


けれど、それだって逆に言ってしまえば癖が無く、使う者の実力がそのまま反映される武具でもあるということなのだ。


それが分からない者達はアルトの武具が出来損ないだと罵るのである。


「アルトの真価がわからねぇようなやつらにあいつの実力見せ付けてやるのももったいねぇけど」


「同感だが、やらねばアルトはずっと下位のままだ」


アルトの武具を得た者達は総じて口を噤んだ。


その腕が特定の所へ流れてしまうことを恐れてだ。


最初はアルトを引き抜こうと躍起になった者達もいたが、アルトの師匠とリシャが片っ端からはぐらかしてきたのだ。


だから皆口を噤んだ。


誰かのものになってしまうくらいなら誰のものにもならないように・・・


「これからは今までみたいに隠し通せるってわけでもねぇからな。潮時、だよなぁ」


リシャは一つため息をつくと気分を落ち着けるように手に持った最後のパンのかけらを口に放り込む。


ゆっくり咀嚼して飲み込むとラディウスを見る。


「一人だけ心当たりあんだけど、どうする?」


リシャの言葉に目を見張るがラディウスは同時にあまりリシャが乗り気では無いことに気がついた。


「傭兵クラスか?乱暴なタイプならさすがに反対するが・・・・」


「・・・・騎士クラスなんだよ、そいつ」


苦虫を噛み潰したような顔でリシャはため息をつく。


騎士クラスと傭兵クラスの折り合いの悪さは誰もが知っている。


さすがにラディウスもすぐには返答できかねた。それほどまでに二つのクラスの衝突はひどいのだ。


しかもリシャは傭兵クラスの上位者で、騎士クラスの生徒からかなり因縁を吹っかけられることも他の傭兵クラスの生徒よりも格段に多い。


「さすがにそれは、まずくはないか?」


唯でさえアルトはリシャに目をかけられているといって傭兵クラスの何名からか脅しをかけられていたことがあったのだ。


徹底的にリシャが彼らの根性を叩き直したので今ではそんなことも無いのだが、もしこの件が成功し他場合、アルトはすべてのクラスを敵に回しかねないのである。


「だがやらなきゃアルトは下位のままだって言ったのは他でもないお前だろ?こうでもしなきゃ来年俺たちは合いもしない武具で戦わなきゃなんねぇ。俺は他にあのアルトの創作意欲を刺激できそうなやつしらねぇぞ」


アルトの実力を広めるきっかけでアルトを傷つけるのは本位ではない。


が、一度知れ渡ればアルトはすぐにでも上位へと繰り上げられるだけの実力は備わっている。


ならばその間は守ればいいのだ。今までと同じように。


ラディウスは一度深くため息をつくと、リシャに頷いた。


「その騎士クラスの上位者を利用させてもらおう」


「りょーかぃ」


「ちなみに、その騎士クラスの上位者の実力はどの程度なんだ?」


「まだ自分のスタイルを探してる最中ってところだからギリギリこっちがリードしてっけど、アルトの武具手に入れたらあぶねぇな・・・」


「ほぅ、リシャにしてはずいぶんと高評価じゃないか」


「おぅ、最初ッから目ぇつけてたんだ。ちょっとからかい過ぎて会う度にすっげぇ目で睨んでくれっけど」


「まて」


リシャから出た言葉にラディウスは待ったをかけた。


「からかった・・・?」


「典型的な騎士様の見本みたいな奴だったもんだから・・・ついなぁ・・・」


基本リシャはあまり傭兵・騎士での偏見というものを持ってはいない。


それぞれにはそれぞれの矜持というものがあってもいいと思っているからだ。


だが、一度だけ。そう一度だけ騎士クラスと揉め事を起こしたことがある。


ラディウスは以前、リシャが中心で騒ぎになった騎士クラスと傭兵クラスの衝突を思い出した。


確か、剣を扱うものとして最も屈辱的なことをこの幼馴染は相手にしたのではなかったか?


「・・・レイフィレナ=アークライト・・・」


「あ、やっぱり知ってるか」


違うことを祈りながらも、うめくように搾り出した名前をリシャはあっさりと肯定してしまった。


「でも、最初にこっちの地雷踏んだのはあっちだぜ?アルトの武具を使ってもいねぇのにナマクラ扱いしやがったもんだからプチっとなぁ・・・?」


アルトを侮辱されたのなら確かに自分も同じようなことをしたかもしれないが、今回の相手にその騒動の当事者をなんのてらいも無く持ってくるのはどうなんだろうか。





少しだけラディウスはリシャの首を絞めたくなった。

次はアルト視点です。

ころっころ視点が変わるのはご愛嬌。(違

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