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無銘の鍛冶師  作者: 星砂
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四話

まだお昼休みです。

時間経過がおそいなぁ・・・

「ちょっ、冗談じゃないよっ!」


アルトの脳裏には男女問わずのリシャ&ラディウスの信者といっていい人たちからの数々の仕打ちが浮かんでいた。


同じ創具科の者達だけならまだ口だけだったのでマシだったのだが、魔法科や剣術科の二人の強さに憧れている者達はすぐに実力行使に出てくださったのだ。


特に剣術科の傭兵クラスがっ!!


ただ、一緒にいただけであれだけ騒ぎになっていたのに二人と専属契約すると言ったら1年だけでなく先輩方のヤッカミまで受けることになること請け合いだ。


「なんでだよ。実際今と大差ないじゃないか」


「そうだな。練習用の武具以外ではすべてアルトが作ったもの以外使ってないしな」


二人の言っていることに間違いは無い。


ここに入学する以前から二人の武具はアルトが作ったものだったし、メンテナンスも請け負っている。


誰よりも二人の武具の癖を知り尽くしているのは他でもないアルトなのである。


「で、でもボクの成績しってるでしょっ!そんなボクが上位者の二人と専属契約するって周りが認めるわけないじゃないっ」


そう、アルトの創具科での成績はどちらかといえば下位だ。


教師陣にそろいもそろって独創性皆無と評されるほどに、作る武具すべてがまるで型にはめて作ったような基本形しか作れない。


いっそのこと宝飾クラスにうつってレプリカ作成してたほうがいいんじゃないかとからかわれることだって少なくないほどだ。


「二人がボクが作った武具を認めてくれるのは嬉しいよ。でもそれって、昔から使ってるから新しい武具に違和感を感じてしまうだけなんじゃないの?」


アルトは弁当のおかずをつついていた手を止めて二人を見る。


「アルト・・・」


「ココにはいっぱいの鍛冶師の卵がいるんだよ。ボクなんかよりもずっとずっといろんな物を作れる人達が。」


いつも自分とは違い、さまざまな武具をつくるクラスメイト。


村にいたときは自分と師匠だけだけしか鍛冶ができるものがいなかった。


師匠は必要最小限だけを教えて後は何も言わなかったし、自分が好きなように打たせてくれた。以前はそれでよかったがココではそれが通用しない。


「ボクの作った武具を気に入ってくれた人も確かにいるけど・・・ここじゃリシャとラディーだけだ。あの村の近くには外に鍛冶ができる人いなかったんだよ?あの人達だって仕方なくボクが作ったものを使うしかなかったんじゃないかな。」


かなり自虐的な言葉にリシャとラディウスが顔を見合わせた。


けれどそれはどうしようもなく呆れたような苦笑を浮かべていた。


「自分を知らないってこえぇな」


「まったくだ」


二人のそんな呟きはアルトには聞こえず、けれど二人が笑っていることに気がついたのかアルトはむっと二人をにらんだ。



「なんでそんなに笑うわけ」


「わらってなんかねぇよ」


「わらってるじゃないか。こっちは真剣にいってるのにっ!」


ピシッとフォークをリシャに向ける。


「元はといえばリシャが専属契約するなんて冗談いうからっ」


「じょうだんじゃ・・・むがっ」


リシャが反論しようとするとラディウスがリシャの手からパンをもぎ取り無理やりリシャの口に詰め込んだ。


「もがもがもぅ!(なにしやがるっ)」


詰め込まれたまま反論するが無論言葉になっていない。


そんなリシャを無視してラディウスはそっとアルトの手を押さえフォークを下げさせた。


「行儀が悪いよ、アルト」


「あ、ごめんなさい」


「むっがむむむがもがーむがっ(つっこむところがちげぇだろっ)」


「うるさいよ、リシャ。しゃべるならちゃんと口の中のものを飲み込んでからにしてくれ」


自分が突っ込んだのを棚に上げてラディウスはそういうとアルトの頭をなでる。


「アルト。まじめな話、専属契約をしたいというのは私たちの本心だ」


「え・・・?」


「できれば、考えていてほしい」


不安そうに見上げるアルトに軽く微笑むと安心させるようにぽんぽんと頭をなでた。


「早く食べてしまわないと昼休みが終わってしまうよ」


「う、うん・・」


ようやくアルトは食事を再開した。


「うぉぃ」


ようやく口の中のものを飲み込んだリシャが地を這うような声でラディウスに詰め寄る。


「今のままじゃ平行線にしかならなかったろう?」


「そりゃそうかもしれねぇが・・・」


今のアルトは自分に自身が無い。自分たちが専属契約をしたくても今のままでは絶対に頷いてはくれないのは確実だ。


かといって、アルト以外の創具科の生徒と専属契約はごめんである。


しかも来年には確実に自分たち二人は契約が義務として発生するのだから


「あーぁ。こうなるってわかってりゃぁ、もっと手ぇ抜いてたんだけどなぁ」


残ったパンにかじりつきながら今更なこととをぼやく。


「なってしまったのは今更どうしようも無いだろう」


同じように食事を再開しながらもラディウスはじっと、落ち込みながら食事をしているアルトを見つめた。


「私たちが下にいけないというのなら、アルトに上ってもらえばいい」


「簡単に言ってくれるぜ」


文句は言っても否定はしない。リシャとてアルト以外と契約するつもりは爪の先ほどもない。


アルトの実力は他でもない自分達が一番わかっているのだから。


4/3 誤字訂正 装具→創具


読み返しって大事っすね。。。

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