二話
結局一週間かかった・・・orz
その上短い。
カラン カラン カララン
午前中の授業の終わり、昼休みを告げる鐘が学園内に響き渡ると、生徒達はもの言いたげな目を教壇へと
むける。
クラス中からの無言の訴えに教壇に立っていた教師は苦笑を浮かべながら本を閉じた。
「頼むからそんな目で見てくれるな。狼の群れに放り込まれた羊になった気分だ」
怖い怖いと肩をすくめて見せる教師はちゃっちゃと教材を片付ける。
「ほれ、望みどおりに終わらせてやるから----解散!」
その声に我先にとクラスの半数が教室を飛び出した。この学園は大陸中から人が集まるので、人が多い。そのため購買での競争率が激しいのだ。
「あいつら、狼じゃなくてハイエナだなぁ」
笑いながら見送った教師は入り口に手をかけ振り返る。
「午後は実技で扱くからお前らもしっかり食えよー」
残り半数、自炊による持参組みに声をかけて出て行った。
教師が出て行き、鐘の余韻が完全に消える前にアルトは持参した弁当を取り出すために側にかけていた鞄を手にかけた。
「飯食いにいこうぜっ」
「うわっ!」
後ろから圧し掛かられ、ずぺしっと机と圧し掛かってきた人物の間でつぶれたアルトは呻いた。
「お、おもぃ~」
「こんぐらい支えて見せろよ」
「どいてぇ~」
つぶされたままジタバタとアルトはもがく。けれど体格が違うので動いてるのは手と足だけだった。
しばらくもがくアルトを見て満足したのか上からのしかかっていた人物はようやくアルトを開放してくれた。
アルトが顔を上げて相手を見ると幼い頃からの友人のリシャ=フラデッドが笑っていた。同じ年のアルトと違い、ずいぶん精悍な顔立ちをしているが、いたずらっ子のような笑みがよく似合っていて、実際昔からよくアルトにちょっかいをかけてくる。
「ひどいよ、リシャ」
ジトーっと机になつきながら上目遣いでリシャと呼んだ青年をにらみつける。涙目なのでぜんぜん迫力はない。リシャはそんな机の上でへばっているアルトの髪をぐしゃぐしゃとなでながら笑う。
「スキンシップ。スキンシップ」
「もうっ・・・」
「ほら、いこうぜ?」
うながされ、かき混ぜられた髪を直しながら弁当を持ち席を立つ。
入学してからずっとアルトはリシャにに迎えに来てもらって、もう一人の幼馴染と合流して昼食をとる。幼馴染たちが人付き合いが得意ではないアルトを心配した結果だ。その合流場所に向かいながらアルトはふと思ったことを尋ねた。
「そういえば、今日は迎えに来てくれるの早いけど、剣術科のほうって今日自習だったの?」
お昼にはこの幼馴染が毎日迎えに来てくれるが、いつもはもうちょっと遅い。いくらもう一人の幼馴染よりもクラスが近いといっても、鐘が鳴ってすぐにこれるほど近くはない。
「んー今日は午前中基礎訓練になってさ。終わった順から先に抜けていいっていってたから速攻終わらせて寝てた」
ケタケタと笑いながら応えるリシャ。こんなんでも今年の新規傭兵クラスで五指に入る成績を収めているのだから人は見かけによらない。
「基礎訓練って結構きついって聞いたけど・・・」
入学して3ヶ月。最近ではようやく慣れ始めたのか最近は見かけないが、入学当初など剣術科の基礎訓練を受けた生徒の8割はそのハードな内容に次の日には筋肉痛で悲鳴を上げていたからよく覚えている。
「基礎だぞ、基礎。あれで根をあげるやつってのは実践を知らないお稽古剣術しか習ってないやつらばっかだって」
「そうなの?剣術科って大変なんだねぇ」
「アルトには100年かかっても無理だけどな」
自他共に認める運動音痴なアルトは反論できない。過去に見返してやろうと思っていろいろやってみた時期はあったのだが、周りの大人たちに説得されるぐらいには向いてないらしい。
まぁ、そのときの説得がきっかけで創具の道へと進んだのだから今は悔しいと思うこともないが。
話しながら歩いていると、少し開けた場所に出た。ここを横切れば合流場所はすぐそこだ。
「あれ?」
そこにはいつもの昼休みとは違ったざわめきがあった。なぜか人だかりができている。
昼休みは食堂や購買の争奪戦が激しいのでまだ昼休みが始まったばかりのこの時間にここで人が集まるというのは珍しい。
「なんだろうね?」
気にはなったが幼馴染を待たせるわけにはいかないのでそのまま通り過ぎようとした。
「何度もいっている。私には必要ない」
人だかりの中から聞こえてきた声に二人はピタリと足を止めた。
「「今の・・・」」
アルトとリシャは顔を見合わせ、すぐに人だかりに視線を向けた。
視線の先、人だかりの中心にいたのは合流するはずだった幼馴染だった。
主人公の幼馴染は二人です。
一話での「どっかできれてる~」発言はリシャ君です。
もう一人は、名前がまだ絞り切れてないなんて・・・あはw