十四話
お久しぶりです ながらく放置すいません
「前の課題より難しいじゃないのこれっ!?」
ガイの石化が解けてから約一時間。
気を取り直して課題に手を出しては見たものの、リーナとガイはそろってお手上げとばかりに机にへばり付いていた。
とりあえず先に魔力硬度の高い調合の課題を終わらせてしまおうということになったので、アルト以外の三人は早速課題に取り組んでいたのだが、どうやら結果は思わしくないらしい。
「形成しようとしたらボロボロになっちゃうー」
「お前なんてまだマシだろ。オレの方は魔力反応すらねぇよ」
それぞれが自分の課題を手にウンウン唸っている。
そんな二人の側でレイルストがコトンと砂の入った小瓶を置いた。
「僕の方は魔力反応はあるんですけどリーナ以上に脆くって握っただけでこの通りです」
どうやら小瓶に入っている砂は調合で出来たもののなれの果てらしい。
三人とも形成で見事に躓いている。
「・・・魔力硬度が高い程脆いってのは聞いてるが、形成できないほどってのは始めて知ったぞ?アルトの奴どうやったらこんなものを形成できたんだ?」
ガイが自分とレイルストの物とを見比べながら首を傾げる。
「一応完全に冷える前に型にはめて整えたんですけど、取り出すとやっぱり壊れちゃうんですよね」
「力を加えるのは論外。型にはめても結局は崩れる。八方ふさがりじゃねぇか」
「調合自体間違ってるとか?」
三人寄ればなんとやら、自分がやった失敗なども積極的に情報交換している。
よくよく見てみれば、レイルスト達以外にも何名かがグループになって課題に取り組んでいる者達も増えてきている。
よほどルダートの言葉が効いたらしい。
「僕のほうはちゃんと魔力反応があるので調合は間違いとは言い切れないと思うんですけど・・・」
「オレはかなり微妙な反応しかねぇんだけど・・・ってことはまた物理硬度のときみたいに調合時の温度に問題ありってことか?」
「あ、それはもう試したわよ。3~4回温度変えて試してみたけど差はほぼ無し」
「魔力反応に関してなら加熱時間の長さでちょっと変動あるみたいでしたよ?」
「マジで?」
「はい。完全に溶けてすぐに冷ますのと、多少加熱を続けてから冷ますのとで魔力反応の差がでてました」
「加熱時間かぁ・・・そっちは盲点だったぜ。けど、それだと形成がさらに難しくなるんだろ?」
「そうですね。ほとんど砂になっちゃいましたし」
「ってことは今度はちょうどいい加熱時間の模索ってことね・・・めんどくさいわね」
リーナの本音にレイルストが苦笑する。
「アルトさんがいてくれたらよかったんですけどね」
隣のアルトの席を見ながらレイルストはポツリとこぼす。
そこにいるべき人物は授業が始まってすぐにルダートに呼び出されて現在ココにはいない。
呼び出したルダートがかなり難しい表情をしていたので、呼び出されたアルトは今にも泣き出しそうになりながらも後をついていった。
「あれ、やっぱり例の調合の件よね」
「外に理由が思いつきませんし」
「でもよ、何でわざわざアルトだけ連れてくんだよ。結果でたならココで言えばいいんじゃね?」
レイルストもリーナもそうは思ってもルダートの表情に口を出せなかったのだ。
ただ最初に大騒ぎしたイシュトだけは変わらず追及しようとしたのだが、ルダートが黙殺してしまったので今も声高にアルトに対する愚痴が教室に響き渡っている。
二人が消えてから毒を吐き続けているので最初は皆呆れるやら同調するやらで騒がしかったのだが、さすがに一時間もぶっ通しで厭きもせずに愚痴をこぼし続けられては対応も疲れたのか、今は彼の取り巻き以外には耳障りな騒音以外の何者でもないので、聞き飽きた者達はすでにその騒音を意識の外に締め出していた。
三人は愚痴が始まった当初からすでに締め出していたが。
「二人は、アルトさんが一年制限以外の素材で調合したと思いますか?」
レイルストの問いにガイとリーナはふと顔を見合わせる。
そして、示し合わせたように肩をすくめて笑った。
「ありえないだろ」
「ありえないわね」
「ですよねぇ」
アルトに関する噂は数あれど、どれも本人と少しでもかかわればどれも根も葉もないものだというのが良く分かる。
「あいつにそんなことする度胸どころか、思いつきもしないんじゃないか?」
「天然記念物級の素直さだものねぇ」
言い方は悪いが二人とも欠片とて疑っていない。
「あのこなら三種調合くらいやってのけそうでしょ」
いろいろ非常識っぷりを見せ付けてくれたのだからそれくらいでは今更驚かないかもしれない。
「三種どころか四種って可能性もあるんじゃねぇか?」
「・・・流石にそれはないんじゃない?三種ならまだしも四種なんて技術があるのなら今まで噂にならないはず無いじゃない。確かに目に付くチャンスは多くはないっていっても、調合依頼を利用すれば少なくとも名前は売れるし」
創具師は三種調合が出来て一人前。四種以上からは一流と見なされる。
上級生でも三種調合が出来る者は、学園の大半を占める創具科の中でも三割に満たないし、四種調合になれば更に減り、ほんの一握りになる。
四種調合を成功させたとなれば瞬く間に創具科全体に噂が広がるくらいだ。
「あいつにそこまでの自己顕示欲があるとは到底おもえないぞ」
それどころか逆に穴掘って隠れてるような気がする。
というガイの言葉にリーナもレイルストも納得してしまった。
「帰ってきたら本人に確認しましょう。まったく別の件という可能性もありますから」
「って噂をすれば本人もどってきてっぞ」
カラカラと音がして生徒達が視線を向けた先には噂の主であるアルトがルダートと供に戻ってきていた。
アルトは一斉に向けられた視線にカチンコチンに硬直するが、パコンとルダートに頭を叩かれ正気に戻ると背を押されおずおずと自分の席に戻ってきた。
「おかえりなさい。アルトさん」
「た、ただいま」
何時もならすぐに逸らされる視線が始終追いかけてくるのでアルトはかなり居心地悪そうにあたりをキョロキョロ見回しながらイスに腰を下ろした。
「ずいぶんかかってたようですけど、何があったんですか?」
声を潜めてはいたが、ズッパリとレイルストがガイとリーナの・・・いや、クラス中の心の声を代弁した。
だれもがイシュト等の手前聞くに聞けないことを平然と口にする。
ガイはレイルストの強心臓っプリを再認識ながらも、アルトの答えを待った。
アルトはというとイシュトとルダートをチラリと見てレイルストに視線を合わせると困ったように笑う。
「物理耐性の調合の上位者に対する報酬はイシュトさんにってことになったって言う説明と・・・」
「それって先生達がアルトの調合が不正だって認識したってこと!?」
アルトが皆まで言う前にリーナの声がさえぎった。
わざわざレイルストが声を潜めていたことが意味をなくす。
聞き耳を立てていた外の生徒達がリーナの言葉にザワリとゆれ、イシュトが勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「・・・リーナ・・・?」
さすがに穏便に聞き出そうとする考えをザックリ無効化してくれた従姉妹に向けてレイルストはニッコリと笑う。ただし、その目はまったく笑っていなかったけれど・・・
「モ、モウシワケゴザイマセン」
めったに向けられはしないが、従姉妹ゆえにきっちりレイルストの性格を把握しているリーナは内心冷や汗まみれになりながら謝罪を口にするが、その笑みにまったく変化は無い。
だがニッコリ笑ったままのレイルストがリーナに何か言う前に、レイルストの恐怖を誘う笑顔に気づいていないアルトがそれを知らずに遮った。
「あの調合で一年制限以外の素材は使ってないってことはちゃんと理解してくれたよ」
天然は偉大だ。
結構失礼な事を思いながらもリーナは内心アルトを拝み倒す。
そんなリーナの内心に気づいていながらレイルストはふっと笑みを別のものにかえる。
どうやらアルトに免じて許してくれるらしい。
それに気づきリーナはホッと胸をなでおろすと、一時間ほど前に同じような目にあっていたガイがポンポンとリーナの肩を叩く。
二人が無言で分かり合っているのを尻目にレイルストはさらに発生した疑問を問う。
「それでは、なぜ報酬は彼になったのですか?納得できませんよ」
当然の疑問である。
「説明したら今度は別の問題がでてきたっていうか、ボクもここまで大事になるなんて思ってもみなかったっていうか・・・」
しどろもどろになりながらもアルトは必死に伝えようと言葉を選びながら話す。
「問題って何よ。なんで不正じゃないってわかったのにアイツが上位者の報酬もらうってことになるわけ?」
バンバンと行き場のない憤りを机に叩きつけながら唸るリーナ。
その勢いに押されながらアルトは先ほど教員達に言われたことを思い出しながら説明する。
「えっとね・・あの調合で一年制限以外の素材が使われていないって言うのはさっきも言ったとおり説明できたんだけど、そうしたら今度は本当にボクが作成したのかって話になっちゃって、ギルドの人を呼んで立会い?してもらってボクが作ったって証明できるまで報酬は保留っていわれました」
「・・・なぜにそこでギルドが介入してくんだ。べつに生徒の調合ならこの学園の教員でも十分資格はあるはずだろ」
「それができないからギルドを呼んで立会いをさせるんだよ」
今まで黙ってやり取りを見ていたルダートがようやく口を挟んだ。
向けられる様々な視線を黙殺すると教壇の横においてあった椅子にどっかりと腰を落とし、深々とため息をつくとともに言った。
「とりあえず、騒ぎになる前に一通り説明する。全員席に着け」
久々で設定色々度忘れ(おぃ
こじつけ頑張る
8/13速攻間違いご指摘あり、すいませーん