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無銘の鍛冶師  作者: 星砂
12/16

十一話

なんとかかんとかアップしてみたのですが、支離滅裂感が・・・・

いや、これでもかなり改善したんですっ。まぢで!


取りあえず調合説明編。


アルトは耐熱板の上の9枚の3cm四方のプレートがきれいに並べられていた。


「成形してくれたんですね」

「ついでだ」


ガイを見上げて言うと、そっぽを向きながら答える。


「助かります。これなら比較も楽です」


そういってアルトはまた鞄の中に手を突っ込むと布に包まれた何かを取り出した。

中心部分を布の紐でぐるぐる巻きにされたそれを解くと、掌ほどの長さの小さなナイフがきれいに十本ほど並べられている。


「・・・いろいろ持ってるんですね・・・」

「あると結構便利なんだよ?」


並んだナイフの中から左端から数えて三番目のナイフを手に取ると鞘から取り出し小さなプレート達をそれぞれ三等分に切り分けはじめる。


「・・・アルト・・・ちょっと待ってもらえるかしら?」

「なぁに?」

「そのナイフはなんだ!」


リーナとレイルストの心境を代弁するようなガイの叫びに手に持ったナイフを見る。


「なんだって・・・ただのナイフだよね?」


ガイの叫びも虚しくアルトは微塵も疑いなくそう言い切った。

そして調合で作られた金属板をチーズでも切り分けるように手に持ったナイフで切り裂いてゆく。


「ただのナイフが金属の板をチーズみたいに切れるわけねぇだろがっ!」

「・・・切れなかったら細工するときに困るでしょ?」


わからないと首をかしげながら言われ、かみ合わない会話にガイが頭をおさえた。


「オレは普通だ。ナイフは金属なんぞ切れん。切れるわけがねぇ・・・」


思ったよりもガイは常識人だったようだ。

自分を保とうと必死に自分に言い聞かせている。

そんなガイの姿が逆にショック療法になったのかリーナとレイルストはとりあえず冷静さを取り戻した。

かまわず作業を続けているアルトの手元にあるナイフを見つめる。


「あれ、どこで手に入れたんだろうね。形はシンプルだし、装飾もなんもないけど・・・」

「うん。けっこう有名な工房でつくられたんじゃないかな・・・結構な業物なんだとおもうよ」


二人のささやきも、ガイの現実逃避もよそにアルトは9枚すべてのプレートを切り分けるとナイフをしまって一番右にあったプレートをそれぞれに渡した。






「えっと、それじゃぁ説明始めるけど・・・いい?」


現実に戻ってきたガイも含めて頷くとアルトは渡したプレートの説明を始める。


「それは黒石鉱が1に紅石鉱が9の割合で調合してるの。調合の組み合わせで言ってしまえばこれも立派に黒石鉱と紅石鉱の基本調合になるよ」


パキッ


「脆いな・・・」


ガイの手のひらで真っ二つになっているプレート。


「ほんとですね・・・」

「それじゃあ、この中から一番物理耐性の硬度が高いやつを選んでみて?」


三人は顔を見合わせるとそれぞれにプレートに触れる。

しばらく三人であれこれ手に取っていたが、最終的に三人とも同じ割合のプレートに手を止めた。


「これ、ですよね・・?」

「やっぱり?」

「・・・段違いだな・・・」


三人の手に合ったプレートは黒石鉱7と紅石鉱3の割合で調合されたものだった。


「調合ってね、ただ混ぜるだけじゃだめなんだ。こうやってちょっと割合変えるだけで結果がぜんぜん違ってくるでしょう?確かに特定の素材を掛け合わすだけでそこそこの硬度がだせるけど、それじゃ勿体無いでしょう?」


三人は自分達が今までそんな簡単な事にも気がつかなかったことに唖然とする。

じっと手のひらのプレートを見つめていると今度はアルトがそれぞれの前に空のビンを差し出した。


「この調合の比率はこれで大丈夫でしょう?なら、次いこっか」


言いながら置いたそれぞれのビンの中に黒石鉱の粉末を7割、紅石鉱3割で入れてゆく。


「調合ってね、やればやるほどいろいろな発見があるんだよ」


四人分の調合を済ませるとアルトは蓋をして振り、完全に混ぜ合わせた。


「調合がなぜ簡単に他人に教えられないのかって、考えたことある?」

「・・・なぜって、自分の成果を横取りされたくないから、だろう?」

「僕が今教えた初歩的な調合まで教えるくらい、なんでもないと思わない?」


そういわれてしまえば、何も言えなくなる。


「答えは簡単。教えても同じものが出来るとは限らないから、だよ」


アルトは瓶を持つと立ち上がった。


「論より証拠って言うし。みんなそれを生成してきてくれる?」

「・・・コレを?」

「そう。言われてもピンとこないと思うから。実際見てみたほうが納得しやすいとおもう」


そういってアルトはさっさと作業場に入っていく。

仕方なしに三人も言われたとおりに作業場に向かった。









アルトが作業場から出てくるとすでに三人はアルトの机の前に座っていた。それぞれ自分の生成したプレートと相手のプレートを見比べている。


「おまたせー」

「おっせぇ」

「ごめんなさい」


席に着くと三人がそれぞれ机の上にプレートを乗せた。


「ボクのプレートは後で比べるから置いておいて、三人とも自分と他の人の違い分かった?」

「これといって、違いがあるようには思えないのですが・・・」

「そうよね、同じ調合なんだし・・・」


リーナとレイルストが言うとアルトはちょっと考えてからナイフを再び取り出した。今度はさっき使っていたナイフの隣のナイフを「はい」とガイに手渡す。


「・・・これをどうしろと・・・?」


ナイフの切れ味を知っているため恐る恐る受け取りながら問うと、アルトはにっこり笑ってプレートをさした。


「みんなのプレートを4等分にしてください」

「わかった・・・」

「あ、手を切らないように気をつけてくださいね」


ニコニコ笑いながらサラッと言われ、ガイの顔から血の気が引いた。

普段なら何てことない注意だが、ナイフの切れ味を見せられた後にこの台詞は恐怖を誘う。

見るとリーナとレイルストも多少顔色がわるい。

けれどこのまま固まっている訳にもいかず細心の注意を払いながらガイはプレートに刃を入れる。

まずは自分のプレートを切り分け、レイルストのプレートに刃を入れる。


「・・・なんか、やわらけぇ?」

「なんでよ!同じ調合なのよ?そんなわけないじゃない!」

「そんなこと言われなくたって分かってる。だがぜんぜん違うんだ」

「・・・同じ物が出来るとは限らないってこういう事ですか?」


レイルストが思い出したように呟いた。

三人がアルトを見るとにっこり笑ってプレートを差し出した。

「多分一番この中で耐性硬度が高いのはリーナさんだと思うよ」

「えっ?あたし?」

「お前じゃないのかよ」

「何も考えないでやったらリーナさんのが上だよ。もちろんそれ以上も作れるけどね。まずは確かめてみてください」


ガイは半信半疑のままプレートを受け取って切り分けた。


「・・・マジで俺のほうがまだかてぇな」


いまだに信じられない顔でマジマジとプレートを弄る。


「これが、調合を教えられない理由だってボクは思ってる」

「でも、なぜなんでしょう・・・調合の割合は同じなのに?」

「・・・()の温度のせいだってボクは思ってる」


創具の調合に使用する炉は一般のそれとはまったく違う。

薪を使うのではなく、炎練石(えんれんせき)と呼ばれる魔法具によって火を起こす。

部屋を暖めるくらいの温度から鉱石を熔かす高温まで使い手の意思で自由自在に温度を変えることが出来る代物だ。


「鍛冶にしろ宝飾にしろ、一番最初に覚えるのは炉の温度を一定に保つことだよね」


炎練石は常に触れていないと温度の調節は出来きない、その為炉は本体となる石の一部を組み込まれた指輪や腕輪といった装身具を身に着けることによって遠隔操作をすることができるようになっている。

創具に携わるものが一番最初に覚えることが、この遠隔操作による温度調整なのだ。

他の作業と併行しても無意識レベルで一定の温度を保てるように最初に徹底的に叩き込まれる。

最低でも丸一日、同じ温度に保てるようになって初めて創具の入り口に立つことが許されるほどだ。


「その時に温度を一定に保つことだけを覚えてしまうと、調整した温度で保つことが出来なくなる。温度を上げても意識が外れたとたん使い慣れた温度に無意識(・・・)に調整してしまうの。同じ調合でもコレだけ差が出てしまうのはその温度差のせい」


アルトは懐からもう一枚プレートを取り出した。


「実はコレも、同じ調合だったりするんだけど・・・」


言いながらガイに差し出す。

受け取ってガイはまだ持ったままのナイフをプレートに当てた。


「・・・なんか、もう驚くのにも疲れたんだが・・・」

「・・・同感ね・・・」


ガイはまったく刃が通らないプレートをやる気無くナイフでつつく。

レイルストは声も無くマジマジとプレートを見つめている。


「調合によって適切な温度って違うんだ。それは、さっきのプレートでも分かると思う。もちろん、それだけでもないんだけどね・・・」


まだプレートをつついているガイからナイフを返してもらい、別のナイフでプレートを切り分けた。


「それぞれの鉱石の調合の割合とそれに対応した温度の調整。これがボクの調合のコツって言えるのか分からないけど基本的なやり方・・・かな?」


ガイがプレートを受け取って触ったり、叩いたりする。


「本当にこれ、温度が違うだけでできんのか?」

「・・・そのプレートに関してはもうちょっと手間かかってるけど・・・それを教えちゃったら先生におこられちゃいそうだから、がんばって自分で方法見つけて?それを見つけるのも調合の楽しみだと思うよ」


アルトがそう締めくくるとリーナが大きくため息をついた。


「あーもうっ。悔しいわ」

「リーナ?」

「調合ともいえない。単純。そういわれたときにはすっごく悔しかったのに、今ぜんぜん反論できないんだもの」


その言葉にガイとレイルストは口をつぐんだ。

アルトが教えてくれたことは単純なことではあるが、その単純なことを自分達は思いもつかなかったのだから。

だが、そんな些細なことだとしても出来上がりにここまで差がでるのだ。

確かに、自分達の調合は調合と言えない。

悔しさをかみ締めているとガタンと音を立ててリーナが立ち上がり、ビシッとアルトに指を突きつけた。


「一週間後見てなさいよっ!ぜーったいあなたが提出した奴より魔法耐性の硬度が高い奴を調合してみせるんだからっ!」


そう宣言し、呆然とするアルトをそっちのけでさっさときびすを返す。

そんなリーナを見てレイルストは笑みを浮かべながら同じように立ち上がり、びっくりして固まっているアルトに一礼した。


「リーナの言ったことは気にしないでください。彼女、すっごく負けず嫌いだからあなたに対抗意識燃やしてるだけですから。あと、ボクもがんばりますので一週間後楽しみにしててくださいね」


ポカンとするアルトににっこりと微笑みリーナの後を追うように去っていった。


「・・・えっと・・・嫌われたんじゃないんだよ・・・ね?」

「あれをどう解釈したらそうなるよ。完全なライバル宣言じゃねぇか」

「ラ、ライバルぅ!?」


思っても見なかった言葉にアルトがガイを見た。


「ライバルっていうには実力差がありすぎる気がするが、まぁ目標は高くっていうしな・・・俺も便乗させてもらおうか」

「えぇ!?」

「一週間後が楽しみだな」


ニヤリと笑うガイにアルトはオーバーヒートした頭をおさえて机に突っ伏した。


無理やり終わらせた感満載(吐血


本当はもうちょっと調合説明したかったんですけどねー


二種調合は本当に基本です。

言ってみればひらがな習ってるようなもの?

三種や四種になってくるともっと組み合わせや割合が複雑になるし、調合する順番まで考えないといけなくなります。

考えると途方もない組み合わせの数だ・・・・


さて、次はまたリシャ達のターン。(ぇ

早く全員からませたいなぁ

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