強化人間 中編
ウキウキとした足取りのサーバルを追いかけていると、三機のアーマードナイトを整備する女性の元に到着する。
「おーいレプティル、お前の好みそうなオモチャ見つけて来たぞ」
「んー?」
ピンク色寄りの癖のある長い髪を持つレプティルは、アンニュイな声を垂らしながらアーシャ達の方を向く。
そして、そんな声になるのも頷ける位、目の下に出来た分厚いクマを見せつけながら、かけているメガネの位置を直す。
「……あー、お前らか、戻っていたのか」
「ああ、てか、また徹夜か?」
「まぁな、寝てるより作業してた方が楽しい」
「楽しいのは良いが、ちゃんと寝ろよ?死にそうな顔してるぞ」
「余計なお世話だ」
アーシャの忠告も聞かず、レプティルは自分の血色の悪い顔なんてどうでも良いかのように作業用の端末へ目をやる。
片手で端末を持ち、もう片方の手で操作を行いながら、レプティルは用意していたマグカップの中身をすすって作業を継続する。
本来あり得ない事だが、彼女の下半身は赤茶けたウロコの蛇のようになっているラミアと呼ばれる種族の一人。
マグカップは下半身の先端部分で持っており、操作と飲食を同時に行っている。
種族柄代謝能力は不安定で、不眠状態となると普通の人間よりも体調に問題が出やすいので心配しか無い。
おかげで持って来たフィリアの武器を見せて良いのか解らないが、この手の兵器の解析は彼女の役目でも有る。
悩むアーシャより先にサーバルが切り出す。
「なぁ、兄貴は?兄貴はどこだ?」
彼女が来た本来の目的である兄との再会が叶わずにアタフタするサーバルを横目に、レプティルは端末の端に表示されているデジタル時計を見ながらため息をつく。
「徹夜のアタシより寝ぼけるな、今はまだ午前五時だ、アイツ等まだ寝てる」
「あ」
「そう言えばそうだったな」
この部隊での遠征時は戦闘態勢にでもならない限り、寝起きは交代で行っている。
色々有り過ぎて時間を忘れていたが、そもそもお目当ての人物はまだ就寝時間でここに居ないのだ。
頭の耳をペタリとさせるサーバルに苦笑しながら、アーシャは早速本題へと移る。
「それより、コイツだ、今回の遺跡で見つけて来た」
「んー?」
その為にウェポンコンテナを下に置き、スイッチを押して中身を展開。
フィリアの時と同様に装備類のかかったラックが出現し、中の装備類が現れる。
それを見た瞬間に興味を示したレプティルは、ライフルへと手を伸ばす。
「ライフルか?……ッ!?これは」
「気に入ったか?」
手に取った物が何なのかに気付いたレプティルは端末を閉じ、興味は自分の作業からフィリアの装備品へと移る。
瞬時にアーシャの質問にさえ気づかないレベルの没頭を見せ、ライフルを観察する。
「高精度のミスリル製バレル、魔導ポリマーで作られたフレーム……ほぼ全てのパーツが現在では精製不可能な完成度だ……これだけの物をどこで手に入れた?」
「いや、さっき遺跡だって言っただろ?ついでに、良く解らんガキも見つけた」
「ほう……」
完全に興味を惹かれたレプティルはライフルを尻尾に巻き付けて端末を開き直し、この艦の魔導サーバーにアクセス。
ハンガーに預けられたと共に送信されたアーシャ達のメイジギアが捉えた記録映像のファイルを探し当て、閲覧と解析を行いだす。
「……相変わらず自分の興味が有る物には熱が入りやすいな」
「確かにな、まぁでも、一応遺跡で見つかった遺物の調査を行わせるために雇ってるから、この熱はありがたいだろ」
「それもそうか(まぁ、そんな奴雇わなくても、全部わかってそうな奴いるけど)」
「アーシャちゃぁぁん!!」
「ッ」
レプティルは遺物の解析の為に雇われているが、今アーシャの背に抱き着いて胸を鷲掴みにして来た変態エルフは何とも怪しい物だった。
情けなく泣きわめているが、エルフやドワーフと言った長命種は崩壊戦と呼ばれる戦争より前を知っているケースが多い。
本人曰く百年程度しか生きておらず、人間換算で十七歳なので当時の事は覚えていない、と言っているが、エルフは外観での年齢判別が難しいので定かではない。
年齢がウソであった場合、その当時使われていた技術や知識を持っている事になる。
それを隠す意味合いであれば攻める事は無いが、隠し過ぎている所にはもどかしさとイラ立ちは有る。
「皆に怒られちゃったよ~、辛いからおっぱい揉ませて~」
「既に揉んでんだろ!!(何かデカくなったの半分コイツのせいな気がしてきた)」
「デブ!」
巡らせていた思考がどうでも良くなるセクハラの言動に頭に来たアーシャは、後ろから胸部を掴んで来るケフュレスの顔に肘を叩き込んだ。
結果、前歯がへし折れ、鼻から血を流しながら離れていく。
「痛いよ~」
「たく」
「アーシャ、お前が言っていたのはこの子供か?」
「あ?」
ケフュレスとのあれこれをしていると、どうやらレプティルは目的の映像にたどり着き、見たい部分も見終えたらしく、フィリアのホログラムをアーシャへと見せつける。
「……そうだ」
「映像の言動から見たアタシの所見だが、コイツは第七世代型の強化人間だ、またとんでもない物見つけて来たな」
「……強化」
「人間?」
今や聞き慣れない言葉に、アーシャとサーバルは首を傾げた。




